PSE・PSC・電波法など認証失敗の理由は事業者の○○不足!?認証「失敗」の解説 【まさに失敗編】
Hello. It is a moat of the caretaker.
前回記事では認証失敗を気にされる方に対して、「認証失敗すれすれ回避編」をお届けさせていただきました。
その中でも登場したのがPSE試験項目の一つであるEMC(EMI)という電磁派試験に関してです。
PSE試験が失敗する理由のほとんどがEMCであるということは、このメディアでも何回取り上げてきました。
そうすると、試験の際はEMCだけ気を付ければよいのか、しかしそれはPSEの話なので電波法やPSCでは失敗は無いのか、などという疑問もわいてきます。
もちろん、PSEにおけるEMCはかなり大きなウェイトを占める問題ではありますが、そもそも認証試験にスムーズに合格できるかどうかは、事業者の方の○○に掛かってきます。
先日、まさに認証失敗(途中断念)した方のエピソードを取り上げさせていただきましたが、今回は複数の事例から網羅的に失敗(途中断念)について考察していきたいと思います。
Contents
基本的に認証失敗はない、あるのは途中断念だけ
これについては本当に何度もお伝えしていることですが、
認証失敗したらどうなるのでしょうか?
というご質問に対しては、
工場が協力してくれる限り失敗は無い
とご回答しています。
まず検査機関は、PSE、PSC、電波法などいずれの認証試験においても、落とすことを前提にはしていません。彼らの仕事もなので所定の手続きに沿って認証試験を進めていきます。
何にも問題なければ良いのですが、大体において途中で1~2個は問題があったりします。不合格部分があれば、その内容を事業者(代行会社)に伝えますが、その対策(リカバリー)をしてくるかどうかは、事業者次第です。
経験が無い方は、不合格を言い渡された時点で「失敗」の2文字が頭に浮かぶわけですが、基本的にそういうことではありません。対策さえすればよいのです。
その対策をするための大きなポイントは下記2点。
①検査機関の言う不合格ポイントを正確に把握できる人材(代行会社)の確保
②不合格ポイントを反映させた対策サンプルを作ってくれる工場の協力
①に関してこれはまさに当社の仕事でありますが、②については当社では何ともできません。
中国語や英語が出来て工場と言語の壁がなく意思疎通が可能というのが当社のウリでもありますが、それはあくまで工場に協力の意思がある場合の話です。協力するつもりがなければ、言葉が通じても心は通じません。
それは日本人同士でも同じであると言えば、理解できると思います。
それでは、工場の協力を得るためには何が必要なのでしょうか?
認証に必要なのは事業者の「ビジネスの知識」
単純な話で工場に協力をしてもらうには、沢山注文してあげることです。しかし、いきなり大ロットを注文して、本当に売れるどうかはわからないので、出来る限り小ロットから注文するのがビジネスの王道です。
そういった際には、工場には交渉技術が必要になるかもしれませんし、もしくは、同様の製品でPSEなどの認証されているものを日本で少し仕入れてテスト販売して、間違いなく売れると判断したら、中国で工場を見つけて独自で認証をするという手もあります。
また、生産工場が本当に信頼に足るところかどうかを、信用調査を行ったりすることも必要になってくるかもしれません。
結局、こうしたビジネスの知識が不足していると、見切り発車的に認証を進めることになり、途中で工場の協力が得られなくなり、認証がストップしたままということになってしまう場合もあります。
認証をスムーズに進めるためには、先ず事業者の方がビジネスの知識を勉強すること、(決して認証の知識ではありません)そして、検査手配をしっかり行える代行会社を見つけることだと思います。
それでは、認証失敗事例について解説していきたいと思います。
生産個数が合わずに工場から相手にされない
「日本の市場を見たらPSE取得していない製品が跋扈しているので、ここでちゃんとPSE取得して販売したら独壇場に慣れると思っています」
という内容でご依頼頂いたお客様。こちらも早速工場に認証に関する連絡をしましたが、どうにもうこうにも工場の対応が悪いまま。
協力するかどうか確認すると言って数か月経ってようやく返事あったと思ったら、
「電源コードとプラグは自分たちでは用意しない。それを用意してくれるなら作ってあげてもよい」
という回答。
そもそも、この製品の最低発注個数(MOQ)は1000個単位。依頼主に聞いてみると、まずは50個くらいからを検討しているとのこと。
正直、勝負あったなと思いました。
ちゃんとPSE取得している人が少ないのも、そもそもロットの問題などがあったようです。もちろん、違法品が日本市場を跋扈している状態は解決したいと思い、頑張っていただきたいのですが、力を及ばずということになりました。
発注数が少なければ工場は協力してくれません。
守秘義務によって工場が資料提供に応じてくれない
日本のPSE、PSC、電波法試験などは、正直、無駄に厳しい技術資料の提出が求められています。例えば、電波法試験などは同じようにヨーロッパのCE基準による電波法試験がありますが、要求される技術資料はそれほど多くなかったりします。
しかし、日本の電波法試験では、その内容がわかればコピー品が作れてしまうレベルの技術資料が要求されるので、その資料は出したくないという工場も少なからず存在します。
それは工場の立場からすれば当然の話でもあります。ただ、それで終わってしまうと認証が進められませんので、工場と資料を受け取る検査機関の間でNDA(機密保持契約)締結の手配をさせて頂くこともありますが、中にはそれすらも拒否する工場もあります。
そうなってしまうと、当社としてもどうしようもありません。依頼主に対して、工場と交渉するように話はするのですが、言語の壁もあるのかなかなか交渉は進みません。当社もそうした交渉のサポートはできません。
例えば、本当に認証を進めたいと考えるのであれば、事業者は独自で通訳を雇うなりして対応することは全然できると思うのですが、そういったことまではしようとしません。
そういったところにもビジネスの差は出てくるのではないかと思います。
工場が日本の認証技術基準を理解していないために作り直しできない
簡単に製品が分解出来てしまいPSE不合格
PSEの技術基準の一つとして、「容易に分解できないこと」というものがあります。これは、ユーザーが分解して製品内部に直接触れて感電などを起こさないためにすることが理由です。
「容易」の解釈が難しいですが、簡単に言うと、「製品内部がむき出しになっていない」「
外部ケースをネジで止める構造になっている」などをクリアしていれば良いのではないかと思います。
引っかけ程度で取り外し可能、クルクル回すだけで取り外し可能、というはかなりの確率でアウトです。
実際にお客様からご依頼あった後にサンプルを確認すると、まさにくるくる回すだけで外部ケースが取り外せる構造になっていて、技術者が見て「一発アウト!」。工場に対策するように言ったら、金型から直す必要があると断られてしまいました。
日本と海外(ヨーロッパ)の技術基準の違い
ヨーロッパの乗車用(バイク)ヘルメットを日本に導入したいお客様からのご依頼。実は、バイクヘルメットはPSC認証の対象です。
お客様はヨーロッパでは基準を満たしていて販売しているので問題ないだろうと余裕しゃくしゃくな感じでしたが、試験をしてみたら一発不合格。。
理由としては、ヨーロッパ人(欧米人)の頭の形と、日本人(アジア人)の頭の形は違うので、ヘルメットの形の技術基準が違うのです。技術基準については、事前にお知らせしていたのですが、正直、先方には少し侮りがあったようです。
これも直すとなると金型から修正しないといけないので、先方はかなり後ろ向きになってしまっています。
お客様の知識不足をサポートするのも仕事だけど、万能ではない。
これまで複数の失敗事例をご覧いただきました。そのほとんどが事業者の方の「ビジネスの知識」の不足が起因していることはご理解できたのではないかと思います。
しかし、そう言ってしまうと、「その知識不足を補うのが認証代行会社の仕事なのではないか?」と思われる方も多いと思います。確かにその通りでもあるのですが、それはあくまで認証(試験)業務を行う上での技術的な部分がメインです。
また、技術基準の違いにより試験が進められないのでどういった対策を行えば、試験は進められるといったアドバイスは行えます。しかし、それも正直試験をしてみないとわかりませんので、事前に回避させるようなことは不可能です。
もちろん、認証を進めるにあたって最低限の情報整理はさせて頂くこともありますが、例えば、こちらから事前に「工場とはどういった関係ですか?〇〇個注文していますか?工場は日本の技術基準は理解していますか?金型から直す場合の費用は支払いできますか?」などということは質問しません。
こちらは多くのお客様がいらっしゃいますので、一人一人にビジネスのコンサルのようなことはできませんし、そもそもとして工場とは認証を行うための協力は得られているという前提でお話をさせて頂いています。
そうでなければ、当社くらいの費用では認証代行はお受けすることも難しくなってきます。
これは正直、どの代行会社でも同じでしょう。
ただ、ではすべてを自分で勉強してからというのも難しいとは思いますので、まずは懸念点あれば質問をして、それらをクリアにすることから始めてみてください。認証を進められるご意思がある方にはなるべく時間を割くように致します。
しかし、情報収集目的とこちらで判断した方へのご対応はご遠慮させていただいています。
いずれにしても、知識・情報だけでは自社のパターンに落とし込むことは難しいかもしれませんので、当社でなくても構いませんので、まずは専門家に相談してみることをお勧めします。
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