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PSE・PSC・電波法失敗!?認証で一番気がかりな「失敗」について解説 【失敗すれすれ回避編】

 2022/03/11 EMC(EMI・EMS) PSE 中国ビジネス 事例 認証の原理原則
この記事は約 8 分で読めます。 969 Views

こんにちは。管理人の堀です。

PSE・PSC・電波法など認証費用やそれぞれの法制度などの説明を終えて、おおよそ把握いただいたお客様から本当に多くいただく質問として、

「認証が失敗したらどうなるのですか?」

当然、それなりに大きなお金を出すお客様からすると大変気になる点でしょう。ちなみに、当社では、検査費用を検査機関に前払いする関係上、委託金はすべて前金で頂いております。そして、万一の返金に関する細かい規定は契約書に盛り込んでいます。

以前に失敗パターンに関する記事を書きましたが、

PSEマーク取得失敗!?認証が上手くいかない・しくじる理由と背景を徹底解説

 

基本的に、製品(サンプル)を提供する生産工場が協力してくれる限り、認証は失敗に終わらないというのが、当社の大前提です。

また、認証試験そのものにおいて「失敗で終わる」ということなく、別途費用が掛かる可能性はあるが、対策サンプルを提出して再試験にクリアすれば、認証は合格できるものです。

当社の強みは、認証を始めるための最初期の段取りが出来ることと、万一認証が途中で一部不合格となった時に、対策サンプルの提案や工場との確認が出来ることです。

こうしたご説明を差し上げると、お客様も安心して認証を進めて頂けることになります。今回は、まさしく途中で認証不合格になりそうなところをすれすれで回避して、無事に合格まで辿り着いたお客様の事例をお伝えしたいと思います。

 

OEMで急ごしらえさせた中型機械で不備の連発

今回のお客様・Aさんは、中国工場で生産された電気用品をデフォルトから外観や機能を少々変更して、既に販売先と卸し数量を決めている状態でした。

後は、出来るだけ急いでPSEなどの試験を終えるだけ、という状態。当社としてもよくある案件だと考えていました。

Aさんは出来る限り早く試験をしたい気持ちを抑えきれないご様子でしたが、あいにく中国国慶節休みを挟むために、工場も検査機関も大型連休に突入。また、工場が別の場所にサンプルを移していたために、休みで交通・運輸が大混乱する中、ようやく検査機関にサンプルを届けることが出来ました。

ご要望通りに早々に試験を開始して、さっさと終わらせようとしていたらビックリ!

今まであり得ないくらいにEMIが規格外!
電磁波が漏れまくりで、これを市場に出したら周辺機器に悪影響を及ぼすこと間違いなし。

当社の技術者(代行実務者)曰く、

こんなにひどいEMIを見るのは初めてだ

※EMIについてはこちらをご参照ください。

中国・海外工場生産の電気用品PSE認証で失敗する一番の理由はEMC試験!?

 

しかし、これは製品が粗悪品というよりは、ちょっとした設定や組み立て方の問題であったり、パーツ1個増やしたりすれば解決することも多くあったりもします。しかし、その原因を究明するにはそれなりの時間が掛かります。

苛立つお客様、しかし、当社はあくまで「認証代行会社」

Aさんには状況を説明して、EMIの再試験には費用が掛かることを説明すると、

「何で追加試験費用が掛かるんだ!さっさと終わらせろ。追加費用が発生するなんて無責任だ」

と罵られる始末。

業務契約書などには、試験は現状サンプルで行う、修正がある場合は追加試験費用が発生すると書いているのですが、基本的に低予算でやりたいAさんは、費用追加というのが受け入れない様子でした。

気持ちはわかりますし、Aさんとしても社内での立場もあると思いますが、取引先に対してそのような言葉を投げかけるのはいかがなものかとも思った次第です。

正直、こちらもげんなりして途中で仕事をボイコットしようかと思いましたが、これもオウンドメディアのネタになると思い笑、また認証代行のプロとして、キッチリと終わらせようとあらためて奮い立ちました。

ただ、工場に事実を連絡しても、「私たちは間違っていない。一度、他製品でPSEを取得したこともある。代行会社(当社)が用意した検査機関が間違っているはずだから、自分たちで検査機関を用意する」と聞きません。

しかし、技術者としては、

「こんなEMIで通す検査機関があるわけがない。本当に通しているんだったら、それは検査機関と工場が裏で手を握っているだけだろう。こんな機械が日本に入ってきたら大混乱だ」

とのこと。

中国人あるあるな話ですし、まさに日本のユーザーの安全性が蔑ろにされているといえるでしょう。

こう考えると、一部の中国人によって日本の安全性が脅かされている状態は看過できませんし、日本人事業者も安いからと言って何でもかんでも受け入れる姿勢はやめるべきだと強く思います。

翻って、無理もないですが、やはりAさんの言動には理解に苦しむ面もあるのでした。

 

工場がPSE取得と主張していたのはヨーロッパのCEだった

そうは言っても話を進めないことには仕方がないので、あらためて、Aさん・工場・当社側とのオンラインミーティングを開くことになりました。

まずそこでわかったのが、工場がPSEだと言っていたのはヨーロッパのCE認証のことでした。その時点で、工場のロジックは崩壊です。

その事実が判明した時点で、工場はこちらの言うことを聞くようになりました。

ただ、技術者曰く、

「そもそもこのEMIの漏れ量はCEであっても技術基準をクリアできないだろうが、あまりその辺は細かいことは言わないので、何よりも迅速にPSE試験を終了させましょう」

と、裏で話していました。

工場は、今回の試験結果や技術者のアドバイスを踏まえて、新しい対策サンプルを作ると提案してきました。それは大きな前進でもありましたが、一方で、サンプル作成1~2週間かかるということで、急いで進めたいAさんの思惑とは反する部分がありました。

 

対策部品と対策部品設置、どっちを選ぶ!?

そんなやりとりが進む中、検査機関の方でもEMI失敗の原因究明を続けてくれており、なんと!あるパーツを設置すれば、EMIが正常値になることを突き止めてくれたのです。

パーツ設置を選べば、そのままEMIは終了。製品も組み立て直して、残りの安全試験も進めてくれるということです。こちらとしては、プロの意地としてAさんの要望をすべて叶えたのです。

ただひとつ難点としては、そのパーツの費用が少々発生するので、今後量産を続けた際、パーツ費用が加算されるのです。

一方、対策サンプルで検査すれば、量産費用は追加になりません。但し、EMI(PSE)の追加試験費用は発生します。

ここまで提案すると初めて、Aさんは「追加試験費用は払うので、対策サンプルで試験してください」ということになりました。

Aさんとしては、ここまでやる当社に対して、ようやく不信感は払しょくされたようですが、当社の姿勢は一貫して変わりません。

出来る限りのことはする、但しそれには少し時間がかかることもある。

この仕事に関しては、当社がやっていなければ間違いなく途中で失敗に終わっていたでしょうし、中国工場が選んだ中国検査機関でちゃんと確認せず通していたら、日本市場で電磁波漏れまくり電気用品のせいで大混乱となったいたことでしょう。

もちろんそうした電気用品は、あっという間に経済産業省の取り調べ対象になり、重大な責任を負うことになっていたことは想像に難くありません。

まさに今回のタイトル通り、失敗すれすれ回避の事例でした。

 

試験は何とかクリア、生産に向けて走り出す!

そんなこんなの問題があった今回のPSE試験も無事に終了することが出来ました。試験終了と同時に量産を開始して、当初予定よりは少々遅れてしまいましたが、それでも日本での販売を始めることが出来ました。

今後どれほどまでに販売が拡大するかはわかりませんが、Aさんの会社の発展を祈念し続けている次第です。

今回の教訓としては、電気用品の急なOEMは内部構造の問題が起きやすいので、ある程度そうしたことは見込んでおくこと。

また、事業者は、PSE試験に失敗した際の追加試験費用の按分はどのようにするか、しっかり工場と話しておかないと、工場が品質を担保すると言っているから購入したのに、それができていなく自社で被るということになると、社内稟議も大変になる、ということです。

今回の記事をご覧いただいている方で、似たような局面に遭遇することがあれば、是非参考にして頂ければと思います。

 

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