【中国輸入ビジネス初心者の方に】PSE、PSC、電波法技適認証をする前に、まずは海外との貿易・物流の基礎を学びましょう
こんにちは。管理人の堀です。
以前に、中国ビジネス初心者の方は生産工場とのやり取りをするために代行会社などをしっかり入れて取り組むようにしましょう、という記事を書きました。
海外(中国)現地工場とのやり取りは想像している以上に大変です。変にお金をケチろうとしているのか、そもそも輸入ビジネスを甘く見ているのかわかりませんが、自分で何とかしようとする方が後を絶ちません。
もちろん、丸っきり個人でやられるのであればそれに対して口出しをする事はないのですが、例えば、当社に対して、認証代行を依頼しているのに中国工場とのやり取りもすべて丸投げしてくる方が大変多くなっています。
当社としても、認証をする為に必要な工場への連絡など行いますが、根本的に工場とちゃんと話が出来ておらず工場は認証に協力しない、協力はするけど後回し、といった事例が多くあります。
それに対して、うちのサポートが足りないなどと騒ぐ方も多いのですが、中国工場が協力するというのは言語の問題以前に人間の気持ちの部分などで、それはどうしようもありません。そして、その部分は事前に契約書などでも説明しています。
決して、お客様の愚痴を言いたいわけではなく、当社にいくら文句を言っても認証の話が進むわけではなく、結局のところ時間費用で損をするのは依頼主本人です。そうした部分はしっかりと認識して頂きたいと思っています。
一方で、最近気づいた点として、そうした工場とのやり取りだけではなく、実際に商品を輸入することになった時の物流手配、つまり貿易そのものについて知識が全くないというお客様が非常に多いこと。
これは認証代行の当社ではなく、専門の物流業者に確認するべき話であります。つまり、海外ビジネスにおいて専門は細かく分類されて、その役割は全然違ってきます。まずはその事をしっかり認識する必要があります。
今回から2本立てで、前編は物流に関する概論や、役立つお客様事例などをお伝えしつつ、後編は貿易・物流に関する最低限必要な知識を網羅的にお伝えしていきます。
Contents
貿易実務と認証代行、中国工場との交渉などはすべて別々の業務である
インターネットの発達により、アリババなどを通じて中国工場に直接連絡が取れる時代になりました。
厳密に言うと、アリババなどで対応している人間の多くは、ディストリビューター(代理店)の為、工場の人間ではないことが大半なのですが、今回の記事ではその点には触れないことにします。
インターネットで商品を探して、担当者ともGoogle翻訳をしたカタコト英語でやり取りもできる。そして、クレジットカードで決済すれば商品も届く。そうすると
実は貿易(中国輸入ビジネス)って簡単?
という感覚に襲われることになります。決して間違っていませんが、正解でもありません。
実際のところ、サンプルを少し買うとか、既製品をそのままEC転売するというレベルであれば、それでも問題ないかもしれません。
一番問題なのは国内ネットショップの感覚で海外から仕入れていること
発注したら完成品がそのまま届くという日本でネットショッピングしている感覚でいると、込み入った製品などの仕入れ輸入で必ずつまずくことになります。
例えば、日本の許認可をするのであればまず自身である程度は許認可について調べて、それを工場に理解させて協力をしてもらわないといけません。それが自分で出来ないのであれば代行会社に依頼することになります。
また、許認可などは一度委託すればあとはオートメーションで進む場合もありますが、様々な人間、特に海外の人間の手を介することになるので、思うように進まないことも多々あります。
その他、OEMをする場合でも、細かい仕様はしっかり確認しないといけませんし、上がってくるサンプルは最初のうちはまず間違いなくヘンテコリンです。そして不良率も高いです。それでもすぐに投げ出さずに、地道に工場と対話していく必要があるのです。
自分が元請けになって企画・開発・製造などに携わるということはそういうことなのです。
また、そうした製品を日本に輸入する際に、必ずやらなければならない手続きが発生する場合があり、知らなかったでは済まされないことが多々あります。
例えば、電池を輸入する際にはUN(国連)38.3の認証がないと物流会社は運んでくれなかったり、食品衛生法に抵触するものを輸入する際は事前に試験を受けておかないと税関で止められて全品廃棄などということにもなりかねません。
工場との価格交渉・OEM交渉、認証などをする場合の協力交渉、
それに関連する物流の手配など、それぞれが別業務であり、各々に専門
家が存在しています。
旧態依然として非効率であると思う反面、本来的に業務内容が全然違うので、なかなか一つにはまとめられませんし、そもそも効率化が進められるのは国内で日本語が通じる同士の話。海をまたいだ人間同士が円滑にビジネスをするということは、それほどハードルが高い話なのです。
だからこそ、その情報を整理できた人間から儲かり始めていくわけです。専門性が高すぎる許認可の部分は代行会社に委託するとしても、最低限の貿易・流通に関する知識・ノウハウなどはご自身で学ばれた方が、今後のビジネスに多いに役立つだろうと思います。
丸投げしない、でも自分で全部やろうともしない
丸投げについて
買い付け・認証・物流などの一つ一つの業務において、各代行会社にすべてお任せしたいところでしょう。各代行会社からしても、正直依頼主に細かく確認するのは大変ですので、出来る限り自分たちで進めてしまいたいものなのです。
しかし、すべてを代行会社だけで確認することは不可能であり、また一度海を渡ってしまうと返品なども難しいので、かなり慎重にならざるを得ません。その際、一番の司令塔である依頼主への質問は、必然的に細かく・多くなってきてしまいます。
中にはそれを面倒くさがってすべてを代行会社に丸投げしてくる人も少なからずいます。特に、会社に言われてやっている若い会社員の方が多いです。
他の仕事も忙しいのでしょうが、金を払ったんだからあとは全部やっておけ、という態度。上述するようにやれることはやれるんですが、やれないことも多くあるのが現実です。
他方、丸投げするつもりはないけど、中国輸入をやったことが無いので、中国工場との交渉の仕方も一切わからないので、結果的に丸投げになってしまうという方も少なくありません。
いずれにしても、丸投げしてうまくいくほど海外ビジネスは甘くありません。出来ない部分を手伝ってもらうというくらいに考えておくのが良いでしょう。
代行会社の立場からのポジショントークでは決してなく、海外ビジネスをしっかりやろうとするそのくらい難しいものだということです。
全部自分でやろうとすることについて
その一方で、お金をケチろうとしているのか、自身の経験の為と考えているのか、すべて自分でやろうとする方もいらっしゃいます。
もちろん、それもありですが、大前提として人間の時間は有限であるということはしっかり意識しておきましょう。自分でやることによってどんどん仕事が遅れたり、所定の手続きが間に合っていないために、商品がすべてパーになるということも往々にしてよくあります。
一番良いパターンとしては、しっかりとお金を出しつつ、自分も積極的に関わり、専門家に各所でアドバイスを受けて、自分の知識・経験を増やしていくことです。
専門家にしても、積極的な依頼主を煩わしく思うことはなく、むしろ仕事がはかどるので色々やってもらいたいというのが本音です。
但し、積極的であるのと細かくてうるさい、余計な仕事ばかり押し付けるのは違いますので、その辺の節度はわきまえるようにしましょう。
日本では電気・電波・危険物の通関は簡単、問題は食品衛生法
電気・電波・危険物の場合
よくあるご質問。
事業者様としては、当然気になるところだと思いますが、実はこれ問題なく輸入通関できるのです。
その理由として、
PSE・PSCや電波法は販売・使用を制限する法律であるため、それ以前の段階での輸入は問題ない、と推測しています。
ある意味納得できるような気がする一方、詭弁でもあるように感じます。販売をしてはいけないものが輸入されているのであれば、水際である税関で止める必要はあるでしょう。だから、AmazonなどのECで違法中国人が跋扈してしまっているのです。
まぁ、税関は財務省の管轄で、PSE・PSCは経済産業省、電波法は総務省なので、そういったところに縦割り感があるようにも感じています。
ちなみに、海外の方とこの話をしていて結構ビックリされます。お隣の中国や韓国などは、各国の電気認証がされていない電化製品の輸入通関チェックはかなり厳しくあります。
「日本は緩いね」と嘲笑されてしまうこともしばしばです。国家でしっかり管理されているのでしょう。
食品衛生法の場合
一方で、食品機器に関する輸入通関は大変厳しくあります。食品衛生法の試験に合格した証明書を税関に提出しないと通関されず、さらに輸入品は事業者負担で全品廃棄することになります。
消費者の人体に直接影響があることなので当然の措置かと思いますが、広く認証品を扱っている自分としては、この差は一体何なんだろうとは思います。
何よりも大切なのは制度を正確に把握すること
国の制度に言いたいことがいっぱいあるのも事実ですが、ビジネスを進めるうえでそこにギャーギャー言っても仕方ありません。割り切るしかないのです。大切なのは、現状の体制を正しく把握すること。
いずれにしても、通関体制ひとつにとっても物流に関する知識は貿易を行う上では必須となってきます。例えば、食品衛生法のことを知らなければ、いきなり数百個仕入れてそのまま輸入して、税関で全品廃棄ということもあり得るわけです。
一方で、電気・電波で認証試験が終わるまで輸入できないと思い込んでいると、その分各工程が遅れるわけなので、スピード勝負の現代ビジネスにおいては知識・情報というものの価値がますます高まっていきます。
まずは知ること、それが一番大事です。
通関で止まったしまった方の事例
食品衛生法の通関の難しさはについて書きました。
小さい商品をサンプルで取り寄せる程度であれば特にお咎め無いこともあるのですが、大きな業務用レベルの商品になれば、例え数個レベルでも税関は通してくれません。
食品衛生法の基準として、(自分も含めた特定の)個人で使うレベルの(小さい)ものであれば試験をしていなくても通関してくれますが、不特定多数の人間の口に触れるであろう業務用(大型)のものは、例えサンプルであろうとNGとなります。
先日、国内である程度の規模がある方が、初めて中国輸入ビジネスに挑戦するというご相談がありました。会社規模も大きいので必然的に仕入れるものもスケールが大きくあります。
しかし、ご自身に貿易に関する知識がなく、また中国現地の中国人代行会社も珍しい商品の発送に対する知識がない状態。
(食品衛生法に抵触する大型機械なのに)数個だから大丈夫だろうとそのまま送ったら、一発で税関アウト!数は少ないですが、1個が数十万円規模なので大慌て。下手をすると、それらを廃棄しなければなりません。
このような状態なので、日本の乙仲(通関業者)もリスクを負いたくないのでリカバリー支援を悉く断わられる状態。
そもそもこれは発送手配をした中国人代行会社の責任なのですが、聞くところによると、ビジネスパートナーに紹介された会社だったとのこと。そんな会社を紹介する方も、貿易レベルを疑われてしまう話です。
結局のところ、当方が紹介した中国在住の日本人社長の代行会社が、うまい具合にインボイスを調整して無事に通関完了しました。こうしたところに、携わった人間の腕を感じます。
自分自身で管理できるのが一番良いことですが、それも難しいので、誰に何を頼んだたら一番確実なのか、それを把握しておくのが事業者として一番大切なことでしょう。そのためにも最低限の貿易・物流知識は必要になってくるのです。
インターネットで簡単になったのは相手とのやり取りだけで、その中間の貿易実務は厳しさが残っている
中国輸入ビジネスを始めた10年くらい前、その傍らで貿易実務の本を読んで勉強もしておりました。
(一番最初の章と似ている話でもありますが、)その際印象的だったのが、相手先国への送金(取引)において「コルレス銀行」と呼ばれる、その通貨の中継地点となる銀行がある云々~~という記述があった際、
ってか、普通にクレジットカードで支払い出来るんだけど??
と疑問に思ったことがありました。
もちろんこれは小口の話ですが、現在はインターネットで海外の相手とも簡単に繋がれる時代です。
しかし、あくまで相手と連絡が取れるようになったというだけで、その間にある各種工程は山のようにあり、また海をまたいだ異国の地で行われる作業が多く、言うなればリスクだらけの世界。
思っていたのと違った、全然儲からないなど、少しやってみてすぐにやめてしまう人も後を絶ちません。その分、
しっかりと仕組みを理解して、必要なところは専門家に委託して進めて
いけば、まだまだチャンスだらけの世界であったりもするのです。
中には、結構長いこと輸入ビジネスをやっているのに、自分を過信し、根本的なところで貿易を理解していないために、輸入通関手続きが通らず貨物すべて廃棄することになった方もいました。
そうしたことの無いように規模が小さい時から、少しずつでもの貿易・物流の基礎を学んでいっていただければと思っています。次回は、貿易の専門家の方から聞いた、まずは覚えておくべき貿易・物流をピックアップしてお伝えしたいと思います。
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