要注意!中国検査機関での空気清浄機PSE試験は不可!?PSEを可能にする5つのポイントを解説
こんにちは。管理人の堀です。
最近、多くいただいているご依頼のひとつに、「空気清浄機」の丸形PSE(特定電気用品以外)試験があります。
新型コロナウィルスの影響もあり、室内・屋内の空気環境美化への意識は年々高まっています。
その中で、空気清浄機に少し興味・関心がある方であればお分かりになるかもしれませんが、「空気清浄機」の中にも、空気清浄機能だけが備わっているものと、イオンやオゾン発生機能も搭載されているものがあります。
少し前までは空気清浄機とイオン・オゾン発生器は別物として売り出されているのが主流で、両者機能の比較などが話題になっていましたが、最近では両方の機能を1つの機械に搭載した商品も増えてきています。
そうした世の中のトレンドはひとまず置いておき、実はPSE(電気用品安全法)の観点から言うと、両者は同じ特定電気用品以外だとしても、電気用品区分は別のものになります。
空気清浄機はその名の通り「空気清浄機」、イオン・オゾン発生器は「医療用物質生成器」です。そして、両者機能が搭載されたものは「医療用物質生成器」としてまとめられます。
しかし、両者の電気用品区分が違うからと言って何が違うのか、わからない方がほとんどだと思いますが、実はこれが大問題。(イオン・オゾン発生機能付き)空気清浄機が中国検査機関で検査が出来ない!?という状態になってしまうかもしれません。
今回はその点について書いていきたいと思います。
Contents
空気清浄機とイオン・オゾン発生器の違い
そもそも両者の違いを簡単にまとめておきましょう。
空気清浄機
その名の通り、空気を清浄するための機械です。もう少し具体的に言うと、集塵機能を持つフィルターに、空気中のホコリ・塵・花粉・ハウスダスト・ダニなどを吸着させて除去するなどして、きれいな空気を作ります。
オゾン発生器
オゾンには、高い除菌力によりウイルスや菌を分解する効果があり、そのオゾンを発生させる機械です。加えて、オゾンのもう一つの特長としては、高い脱臭力が挙げられ、生ゴミや人やペットの体臭・アンモニア・タバコの煙・カビなど、幅広い生活臭への除去が期待されます。
生活の臭いに悩む方にはオゾン発生器というのは強い味方だと言えます。
イオン発生器
マイナスイオンを発生させ、イオンを空中に飛ばして、空間の除菌・消臭等を行う機械です。
ハッキリ言って、それぞれの違いというものが自分にわかりませんが、それぞれの棲み分けが為されています。
元々以前から、空気清浄機内にオゾン・イオン発生器が搭載されているものもありましたし、それぞれが独立して展開されていて、「どっちを買うべき?」といったネット記事も多く見受けられました。
一方で最近は、すべての機能を一台に集約した空気清浄機を見かける機会が増えてきていると個人的には感じてます。
PSE試験を行う際の電気用品安全法の考え方のおさらい
続いて、冒頭で申し上げた「(イオン・オゾン発生機能付き)空気清浄機が中国検査機関で検査が何故出来ないか!?」のか、PSE試験の根拠となる電気用品安全法についておさらいしておきましょう。
かなりマニアックな話なので、簡単に流しておいていただければと思いますが、少しだけお伝えしておきます。
PSE(電気用品安全法)には大きく
(1)日本独自の技術基準(JIS)
(2)国際規格(IEC規格)に準拠し日本独自の考え方を追加した技術基準(一般的にIEC-J規格という)
の大きく2つの技術基準があります。
(1)は電気用品安全別表一から十一まであり、(2)は国際規格に準拠して別表第十二となっています。
つまるところ、PSEの基準内容は日本独自の規格と国際規格の2つが存在しており、基準内容を満たしてPSE試験を行っていれば、どちらの規格を採用しても構わないのです。
そうした状況で、海外の検査機関では、日本規格より海外規格を採用して試験をする事が一般的です。考えてみれば当然かと思います。
細かい規定はいろいろとあるのですが、とりあえず流れだけでも把握しておいていただければと思います。
「医療用物質生成器」は別表8でしか試験が出来ない
電気用品の種類によって、それぞれ技術基準が細かく設定されていますが、「空気清浄機」については別表八もしくは別表十二の双方に規定されています。つまり、日本の技術基準、国際基準どちらで試験を行っても構いません。
一方で、「医療用物質生成器」は、別表八でしか技術基準が明記されていません。これは国際基準の別表十二では試験が出来ないということを意味しています。
これの何が問題かというと、先述したように一般的な中国の検査機関は通常国際基準でPSE試験をします。それは日本の技術基準を知らない為でもあります。そうすると、一般的な中国の検査機関では、「医療用物質生成器」のPSE試験は出来ないことになるのです。
一般的なPSE試験内容
少し話は逸れますが、一般的なPSEの試験項目を列挙しておきます。
絶縁材料試験、転倒試験、構造チェック(絶縁距離測定)、残留電圧試験、ケーブル引張試験、外郭強度試験、外郭燃焼試験、電子回路短絡試験、入力試験、耐圧試験、絶縁抵抗試験、温度試験、モーターロック試験、漏れ電流試験、スイチ部品試験、EMI電磁試験
こういった内容に加えて、各電気用品に定められた技術基準内容に沿った試験が行われます。
別表8の医療用物質生成器の試験内容
では、別表八で定められた医療用物質生成器の技術基準について、一部抜粋した形でご紹介します。斜め読み程度でご覧ください。
(98)医療用物質生成器
イ 構造
(イ)空気イオン発生器およびオゾン発生器にあっては、次に適合すること。
a 電離部分、オゾン発生部等の高圧部分は、人が容易に触れるおそれのないように適当な保護わくまたは保護網を取り付けてあること。
b オゾン発生器用安定器は、別表第六1および3に規定する技術上の基準に適合すること。
(ロ)水電解器にあっては、電源装置の充電部に水がかからない構造であること。
(ハ)高圧発生回路の電源部に使用する変圧器は、絶縁変圧器であること。ただし、感電の危険が生ずるおそれのないものにあっては、この限りでない。
(ニ)高圧発生回路を有するものにあっては、アース機構を設けてあること。ただし、器体の外部に金属が露出していないもの及び二重絶縁構造のものにあっては、この限りでない。
ロ 絶縁性能
ハ 平常温度上昇
ニ 入力電流の許容差
こうしたJISで定められた試験をする為に、検査機関にはJISに関する知識と設備、試験ノウハウが求められます。しかし、日本のPSEに精通していない検査機関では、国際規格の別表十二でないとお手上げとなってしまいます。
INSIGHT WORKSでは「医療用物質生成器」を別表八で試験可能
ここで少し手前味噌な話になってしまいますが、日本のPSE試験代行を専門的に掘り下げて実施している当社としては、別表八での試験遂行ができる検査機関をネットワークしておりますし、代行実務を行う技術者も当然、別表八を熟知しています。
なので、当社にご依頼頂ければ、中国検査機関での「医療用物質生成器」のPSE試験は可能です。当社にご依頼頂くかどうかは別としても、イオン・オゾン発生器およびそれらの機能を搭載した空気清浄機の試験を行う方は、この知識は是非覚えておいてください。
別表十二で試験したことになっている「医療用物質生成器」に出会ったら要注意
時折、中国工場が自ら選定した中国検査機関でPSE試験をした検査レポートを確認してください、というお問い合わせを頂きますが、基本的にその内容は間違っています。
それについては、こちらの記事もご参照ください。
この中にある「採用している検査基準のアンマッチ」のように、全然いい加減に検査していることも多く見かけます。今回で言えば、「医療用物質生成器」検査しているのに、その規格が別表十二にということであれば、それは不備レポートです。
そうした不確かな検査をした製品を販売することによって、一番の被害を被る可能性があるのは、購入したユーザーです。先述したように、「医療用物質生成器」の技術基準もかなり細かく規定されています。
それらがしっかり検査されていないということになると、やはり不安は残るという印象です。
補足:PSEは安全の検査、性能の証明はJEMAの評価試験などがある
最後に余談ですが、PSEはあくまで製品の安全性を担保するための試験です。性能云々よりもまずは安全が最優先ですので、試験の実施も強制(義務)となっています。
一方で、製品の性能、例えば、空気清浄を行う上での品質や発生させるオゾン・イオンのクォリテイについては別問題です。そういったものには、一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)による品質評価試験というのもあります。
対象となる家電製品は空気清浄機を含めて、
電気冷蔵庫、ルームエアコンディショナ、電気洗濯機、炊飯器、IHクッキングヒータ、電気掃除機、換気扇、電気式浴室換気乾燥暖房機、オーブンレンジ・電子レンジ、オーブントースター、空気清浄機、食器洗い乾燥機、電気暖房器、電気温水器、電気ポット、電気ケトル、扇風機、電気かみそり、ヘアドライヤー、電動歯ブラシ、家庭用電気生ごみ処理機、スマートホーム、ハイパワー家電
などがあります。
あくまでこれらは任意試験となりますが、製品の性能の高さを証明するモノになります。特に、家電品などは量販店などリアル流通させる機会も多いかもしれず、ユーザーに手に取ってもらう為には、こうした任意試験で自社製品をアピールする必要もあるかもしれません。
しかし、まずは強制試験のPSEをクリアさせて販売を行い、その後、順調にビジネスを進められる様子が出てくればJEMA評価試験をはじめ、国内外さまざまの評価試験・認証などにチャレンジしてみるのも良いかもしれません。
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