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中国工場が手配する丸形PSE基準適合確認レポートの不備事例集

 2022/01/16 PSE 中国ビジネス 事例 認証の原理原則
この記事は約 10 分で読めます。 1,529 Views

こんにちは。管理人の堀です。

以前に中国工場が自ら手配して検査した丸形PSEの基準適合確認レポートの内容に不備が多発しているという記事を書かせて頂きました。

PSE特定電気用品以外(丸形PSE)の基準適合確認レポートの不備・修正の問い合わせが増えている件について

 

PSE検査レポート内容が間違っていることにどういう問題があるのか、何故間違ってしまうのか、そもそも間違っているかどうかの確認方法、そして間違っていた場合の対応方法などについては、上記の前回記事をご覧頂ければと思います。

今回は実際にどのような検査不備があったのかその実例をお伝えしていきたいと思います。

 

モバイルバッテリーの「高温下での組電池容器の安全」試験に関する見解ズレ

これはかなり驚いた話です。

モバイルバッテリーの試験内容などは以前のこの記事をご参考ください。

モバイルバッテリーを取り扱いたい事業者の方に向けた、PSEマーク取得7つの基礎知識!

 

その中にもあるように、モバイルバッテリーの試験項目ついて、「連続定電圧充電時の安全」「運搬中の振動時の安全」「高温化での組電池容器の安全」「温度変化時の安全」「外部短絡時の安全」「落下時の安全」「衝撃時の安全」「異常高温時の安全」「圧縮時の安全」「機器落下時の組電池の安全」など、16項目が経産省資料に示されています

その一つの「高温化での組電池容器の安全」(以下、組電池安全)についてです。

すでにモバイルバッテリーのPSE試験は行ったという工場の検査レポートを確認していると、この組電池安全の項目が未実施ということが判明しました。その時点でアウトなのですが、依頼主はこの検査を追加実施するように工場に働きかけました。

すると工場(が依頼している検査機関)の返事は、

組電池のエンクロージャー(包装・囲いなど)は製品筐体そのものであれば可能

 

一方、依頼主が経産省に確認したところ

電池セルやBMSなどを保護している耐熱のパッキング(フィルム状で覆った状態)でなければならない

 

またそれに対する工場(が依頼している検査機関)の回答

それはできない。他国の試験ではそれは求められていない。

 

という感じでやり取りが進みません。

正直なところ、日本のPSEの技術基準は細かすぎると感じる部分もありますし、検査機関の言い分もあるとは思いますが、日本の法律でそう決まっている以上は、それを守ってもらわないといけません。

恐らくですが、この検査機関は日本の経産省基準のモバイルバッテリーPSEの検査技術を持ち合わせていないのでしょう。こうした検査機関にいくら言っても仕方ないので、依頼主には、ちゃんと試験が出来る検査機関にちゃんとした代行会社を経由するなどして変更するべきだと提案しています。いつものポジショントークですね。

なお、この検査機関の名誉のために一応言っておくと、決して、技術的に劣っているというよりは、単に日本のPSE基準に沿っていないというだけで、他国の試験は普通に出来るのだと思います。

ただ、依頼する側が検査について何も知らないと、そのまま進んでしまうことになるので、やはりちゃんと意思疎通ができる代行会社などを経由する必要があるのではないかと思います。

レポートの各項目にチェックはしてあっても、本当に経産省の技術基準内容で検査がされているかどうか不明というのは大変怖いと感じます。

 

採用している検査基準のアンマッチ

これも意味不明な事例でした。

とある製品のPSEレポートの確認をご依頼頂いた際に、

証明書

レポート

 

で実施した検査の技術基準が異なっているということがありました。

Jで始まる規格はJIS(日本工業規格)、IECというのは国際電気標準の規格です。本来であれば、一つの検査内容に対してはどちらか一方の規格のみで検査をするべきところ、証明書とレポートに記載されている規格が混在してしまっています。

証明書に「Appendix 12」と記載されていますが、これは電気用品安全法(PSE法)別表十二の技術基準で検査している、という意味です。

かなりマニアックな話なので、簡単に流しておいていただければと思いますが、少しだけお伝えしておきます。

 

PSEには大きく

(1)日本独自の技術基準(電気用品安全法 別表)

(2)国際規格(IEC規格)に準拠し日本独自の考え方を追加した技術基準

の大きく2つ技術基準があります。

(1)は電気用品安全別表一から十一まであり、(2)は国際規格に準拠して別表第十二となっています。

 

海外で試験する場合は、別表十二で検査することが多く、それ自体は問題ないのですが、今回困った点としてはそれが混在していることです。また、JISとIECでは同じ対象物においても検査内容は全く一緒ではありません。

以前書いた記事もご参考ください。

中国・海外工場生産の電気用品PSE認証で失敗する一番の理由はEMC試験!?

 

それが混在しているということは、一体どんな検査をしたんだ?という疑念を抱かざるを得ません。

検査業を行っていない人からすると大した問題ではないと感じるかもしれませんし、率直なところ私でもそう思いますが、これが検査機関がやっていることだとしたら、尋常ではない出来事だと感じてしまいます。

日本のPSEをまるで理解していないのでしょう。事実、他の部分でのレポート不備が散見されました。こういう検査機関も多数紛れ込んでいますので、やはり代行会社をしっかり使うことをお勧めしています。

こんな不確かな状態でPSE製品を販売していたら、いずれ大きな事故につながる可能性は高いですし、そうしたら事業者様のビジネスも一巻の終わりになりかねません。やるんだったらちゃんとやる、という捉え方が何より重要かと思います。

 

LED電球の調光機能に関する記載漏れ

少し細かい話ですが、こういうこともありました。

あるLEDライトのPSE試験について。この製品のウリの一つとして、アプリで調光機能がある点です。調光機能についての試験はないのですが、PSEの基準上、調光機能があるかどうかの確認は必要です。

レポート確認をした際に、上記4.の内容が全く記載されていませんでした。

The appliances are not suitable for operating in dimming circuit, but can change RGB mode, CCT, luminous flux and power of light by App.この製品は調光回路での動作には備えていませんが、アプリによってRGBモード、CCT、光束、および光のパワーを変更(調光)できます。

 

最初にこの指摘をした際、検査機関はプライドに触ったのかなかなか修正しようとしてくれませんでした。

 

そもそもPSE基準を満たしていないものでPSE証明書発行

はんだごてのPSEレポートの確認を依頼された際、先ずはサンプルをいただきました。

その際に確認した技術者が一言。

この製品はそもそもPSE技術基準を満たしていない

 

その理由として、

PSEの根本的な技術部分には、製品の電気部分はユーザーに直接触れられないように設計すること、具体的に言うと、容易に分解が出来ないこと、

 

というものがあります。
なのに、このはんだごてはネジ止めもなく、製品をクルクル回したら簡単に分解できる構造になっていたのです。こういう状態にあるにもかかわらず、PSE証明書を発行するというのはどういう見解なのでしょうか。

もしかしたら、検査機関も使わずに、工場が自作した証明書なのかもしれません。この辺は本当に気を付けた方が良いでしょう。

 

簡単ですが、PSE検査不備の実例の一部をご紹介させていただきました。

 

不備があるのはPSE法制度上の問題もあり、今後の対策について

繰り返しますが、基本的に丸形PSE(特定電気用品以外)の検査内容に不備があったとしても経済産業省への事業届は可能です。

その理由は、経産省には検査内容(レポート)までは届け出ない(経産省はそこまで確認しない)からです。だから、別に検査内容に不備があってもいいんじゃない、と思う方もいらっしゃるでしょう。

ただ、PSE(電気用品安全法)も無駄に存在しているわけではなく、製品の安全性、しいてはエンドユーザーの安全性を確保するためにあります。その内容に問題があるとしたら、なかなか由々しき問題となってきます。

もちろん、では、申請を受け付ける経産省側のチェック体制をもっと厳しくするべきと言う意見もあるかと思いますが、かなり甘めに経産省側を擁護すると法律が追いついていないという実情があると感じています。

現在では、海外にも経産省が認めた登録検査機関というものがあり、そこは主に菱形PSE(特定電気用品)の検査を行っていますが、丸形PSEの検査はどの検査機関でも行えます。

PSE(電気用品安全法)の前身である電気用品取締法が制定された昭和30年代において、海外で自由に日本向け電気用品の検査をするという発想がなかったのでしょう。つまり、日本で作られた製品を日本の検査機関でちゃんと検査している、という前提があり、検査内容まで細かく見る必要がなかったのだと推測しています。

海外(中国)で作った製品を海外(中国)の検査機関で日本の検査(PSE)をするというのは、ある意味で想像を絶する行為でもあります。普通に考えたら、不備があるのはむしろ当たり前なのかも知れません。

じゃあ、何でかんでも日本で検査すればよいかというと、そういうこともなく、中国など海外で作ったものは中国で検査する方が利点も多いのは事実です。

問題なのは、日本のPSEを理解していない工場が、これまた日本のPSEを理解していない検査機関に依頼してしまうこと。そして、中国に存在する多くの検査機関は日本のPSEを理解していません。

 

その前提に立って、信頼できる代行会社を経由するなどして試験依頼をして頂ければと考えています。最後はいつもの通り、当社のPRだったのですが、それが実際の話ですので、中国工場が自分たちはPSEを取得している、という言葉は安易に信用しないようにしてください。

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