自動販売機のPSEマーク認証で必要なこと5選!ポイントは型式区分や工場検査設備など
こんにちは。管理人の堀です。
以前こちらの記事に書いたように、最近、自動販売機のPSE特定電気用品の試験代行依頼が増えています。
その理由としては、上記記事と重複になりますがご紹介しておきます。
これまで自動販売機というと、大手の飲料メーカーや酒類メーカーなどの独占市場。しかも、自動販売機そのものも専門の大手メーカーが寡占している状態でした。
しかし、近年、ヨーロッパ向けなどに中国のVender(ベンダー)メーカーが増えています。かなり性能も良く、それを輸入して自社・取引先のオリジナル商品を販売したいと考える事業者様が増えています。PSE試験費用は決して安くはありませんが、イチから開発するよりは全然安いと言えるでしょう。
特に、大小問わず比較的多くの店舗を構えていらっしゃる事業者様は、他社の自動販売機で他社の製品を他社のルールで販売するよりも、自らルールメイキングをしながら販売できるオリジナル自販機を自店舗に設置するビジネスの可能性を見出すようになってきています。
しかし、実際のところ自動販売機のPSE試験はかなり難易度が高く、費用も他試験よりかなり高額になることも事実です。正直言って、初めてPSE試験に挑むような会社様が独力でやっていてはまず不可能と言って良いでしょう。
今回は、では何故不可能と言い切れるのか、また、ではどのようにすればそれを克服して自動販売機のPSE認証が可能になるのかをお伝えしていきたいと思います。
Contents
PSE視点(特定電気用品とそれ以外)から考える自動販売機
初歩的なところですが、一言で「自動販売機」といってもその定義はいくつかあるので簡単に整理しておきましょう。こうした点もかなり重要であったりします。
特定電気用品(菱形PSE)の自動販売機
電動力応用機械器具の自動販売機に分類されています。また補足として、
電熱装置、冷却装置、放電灯又は液体収納装置を有するものに限り、乗車券用のものを除く。
となっています。
簡単に言うと、飲料や食品などを冷蔵・加熱する機能や、照光機能が付いている自動販売機は特定電気用品に該当することになり、今回の記事のテーマの通りです。
街中で見掛けるような自動販売機の多くはこのタイプでしょう。
ちなみに、LEDディスプレイで動画などを放映する機能があると丸形PSEの「広告灯」、音声機能があると同じく「音響機器」を併設することになります。
特定電気用品以外(丸形PSE)の自動販売機
電動力応用機械器具の自動販売機に分類されています。また補足として、
乗車券用のものを除く。及び両替機。
となっています。
電熱、冷却機能がない自動販売機ということで、チケット販売や食券販売などの機械が該当します。
補足:自動販売機の定義
まさに字のごとく、自動で(モノを)販売する機械はPSE対象ということなのですが、例えば、ウォーターサーバーにお金の投入やICタッチなどで商品を提供する機能を加えると、「自動販売機」としてのPSEが追加となります。
もちろん、ウォーターサーバーとしても必要になります。この辺の解釈は興味深くあります。
信頼できる中国の自動販売機メーカーを探す
中国で大型製品を製造・認証するために必要なことを書いたと上述で紹介しましたが、
そもそも一番の肝となるのは、中国で信頼できる自動販売機メーカーを見つけることです。輸入した自動販売機でビジネスをやりましょう、と簡単に申し上げていますが、やはりそれは製造メーカーがあっての話し。
中国と日本では、電圧も違いますし、試験基準も違うので、日本仕様に合わせる為に様々なところで電気の障害が発生するかも知れません。それらを見越した上で試験をすることになり、工場も手探り状態です。
そうした際に、慣れている代行会社・アドバイザーなどを入れないとかなり試験は難航してしまいます。ましてや、中国工場に日本の仕様を理解させることになるので尚更です。
ここで言う「信頼できる」というのは、「工場の人間性」および「技術力」の双方が求められます。単に自動販売機を作れるメーカーを相手にしていては、必ずと言って失敗するでしょう。そうしたリソースも自動販売機ビジネスでは重要になってきます。
いずれにしても、やり方自体はいろいろありますので、「自動販売機ビジネスをやってみたい」と思ったら、まずはお気軽にご相談ください。
型式区分から逆算して認証を進める
型式区分は、その電気用品を構成する為に必要な各仕様をまとめた、言わばスペックシートのようなモノですが、品目によって様々に規定されています。
自動販売機の型式区分は、他と比べてもかなり多くの内容が盛り込まれています。その全部をスクリーンショットで貼ることは難しいので、代表的なモノだけを取り上げます。
引用:JET 電気安全環境研究所_型式の区分 – 特定電気用品 電動力応用機械器具_自動販売機
例えば、「定格周波数」では、50hzと60hzがあります。50hz・60hzの考え方は、この記事でもご紹介しましたが、
日本では、東日本は50hz、西日本は60hzとなっています。一方中国では、60hzが基本です。なので、何も調整せずにそのまま試験をすると、60hzのみとなってしまい、後から50hzも追加しようとすると、もう一度最初から試験をしなければなりません。
元々高い認証費用が二度発生することはやはり避ける必要があります。その為にも、一度にまとめて試験が出来る最初の認証設計が必要になるのです。
その他、「冷却装置」の有無について。あくまで「冷却」なので、それが「冷蔵」なのか「冷凍」なのかについては問われていません。例えば、試験時は冷蔵であっても、その後、冷凍に変更して新しい機械を設計しても、他の型式が変わらなければ問題無いのです。
また、「電熱器具の定格消費電力」に関しても、1kwから2kwで取得していれば、使用場所の気温、例えば、北海道などの使うバージョンは、消費電力を高めにしても良いのです。
上記はかなりマニアックな話になるので、完全に理解する必要はありませんが、型式区分から逆算すると無駄な試験をすることが避けられますし、一回の試験でもいろいろな製品ラインナップを考えられるということは覚えておきましょう。
工場検査に必要な生産設備を必ず揃える
特定電気用品の試験で義務付けられている「工場検査」とは、PSEフローの正式名称で言うと、「適合性検査」となります。
「適合性検査」の全体の流れ自体は、以前の記事をご参照頂きたいのですが、
何をするのかというと、検査員による生産工場への立ち入り検査を実施し、規定の工場設備を有しているかどうか、またそれらを工場職員が扱えるかどうかの確認です。
特に、自動販売機は検査設備が多岐にわたり、また求められる精度の水準も高くあります。設備の技術基準もPSE独自で定められたモノなので、PSEのことを知らないと工場が自ら調べて購入することはかなり難しいと言えるでしょう。
どんな設備を用意するのかしっかり理解し、実行しないと、いつまで経っても検査を終了することが出来ません。また、設備自体も決して安価ではなく、試験費用以外にもそのやり繰りを考える必要があります。
ただ、設備自体も工場の資産になるモノでもあるので、費用の拠出については事業者と工場と協議しても良いかも知れません。
PSE試験中の何回かの不合格はむしろ当然くらいに考えておく
このように言うと、無責任と言われるかも知れませんが、それが事実です。もちろん、依頼主からすると、自身の試験は問題なしで進めたいというのが人情でしょうし、私が依頼人の立場だとしても同じ事は考えるでしょう。
しかし、この記事にもあるように、
試験を行う中で様々な問題があり、すべてが一度うまくいく方が奇跡であると考えておいた方が良いかも知れません。特にEMIなどが顕著です。
認証代行会社の仕事としては、手続きや流れをスムーズにする段取りを手配することと、万一、一部で不合格になった場合に、その対策を講じられることです。最初のサンプルを、何もしないで合格品にすることは、魔法使いでもないので不可能です。
海外で日本の許認可認証をするにあたり、また自動販売機のような大型製品を、一度も問題無く無事に終わるということ自体が無理、という認識で頂いた方が良いかも知れません。
当社としても、追加などはほとんど実費になり作業が増えるだけなので、出来る限りは仕事を増やしたくないというのが本当のところです。しかし、やるべきことはやらないとお客様に「認証合格」をご提示できませんので、一生懸命取り組ませて頂いている次第です。
海外ビジネスにおいて「追加=悪」と一元的に考えられるようであれば、その方はそもそも向いていないかも知れません。諦めて、国内だけで細々とビジネスをされることをお勧めします。
以上、ザッと見てもかなり大がかりの仕事になることがお分かりになるかも知れません。費用も時間も掛かりますが、それでもこのハードルを越えたお客様は、認証後にテストマーケティングを実施し、数十台・数百台単位で追加購入するなど、今まで未知の領域であった自動販売機ビジネスを進めています。
ノウハウやリソースのご提供は可能ですので、自動販売機ビジネスで新規事業を行ってみたい方は、是非一度ご相談頂ければと思います。
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