充電アダプターを使っていても製品本体が必ずしもPSE対象外ではないという事例について
こんにちは。管理人の堀です。
PSEのことを調べられているお客様から、
PSE対象なのは充電アダプター(直流電源装置)であり、製品本体はPSE対象ではないですよね?
という質問が増えております。
さらに言うと、充電アダプターは海外生産工場でPSE取得している場合が多く、副本申請など比較的に簡単な手続きで済ませられますので、イチからPSE検査をするよりはPSE費用も安いですし、そもそも検査を段取りするという手間も省けます。
お客様(輸入事業者)の立場からすると、してやったりということになります。当社としても、無駄な認証を勧める理由はありませんので、必要に応じた対応をさせて頂いております。
しかし一方で、最近の当社事例の中では、充電アダプターを使う製品でも充電アダプターではなく、製品本体でPSE認証をするべき・した方が良いという案件も出てきています。
この辺の知識がいないと、代行会社の言いなりで検査を進めてしまったり、そもそも必要な検査を満たしていないということにもなりかねませんので、しっかりと学んでおいていただければと思います。
Contents
直流電源装置(ACアダプター)の役割とは?
このメディアでも何度かお伝えしていますが、基本的にPSEは直流(AC)の電気用品が対象になります。
簡単に言うと、電源コードを用いて本体に電源供給する製品がPSE対象になります。
一方で、本体そのものには電源コードが付属しておらず、直流電源装置(ACアダプター)を接続して電源供給する製品本体は、基本的にPSE対象外(「DC=交流」であるため)です。一方で、ACアダプターがPSE特定電気用品の対象となります。
引用:モノタロウ
ちなみに、なぜ製品設計上においてアダプターが用いられることが多いのか、簡単におさらいしておきましょう。
大変良くまとまっているページがありますので、引用しておきます。
-ACアダプターが無いと何が起こるのか?-
ACアダプターを使用しない場合、製品のなかにACをDCに変換する機能を含める必要があります。
その分、機器とACアダプターを一緒に持ち歩く必要はなくなりますが、機器自体は大きく重くなります。
-ACアダプターが良く使われている理由について-
電源回路用の専用部品を機器に必要な部品の他に調達、管理する工数が削減でき、電源回路を部品として購入することで、開発費用も不要になり、メーカにとってコストの削減になります。
また、寿命の短い電源回路を機器と別にすることで、電源回路に故障や寿命がきて使えなくなった場合でもACアダプターを交換することで、機器を買い替えることなく使い続けることができるのもメリットのひとつです。
近年増えてきた、充電式のバッテリーを使用した機器については、バッテリーの充電器として使用することができることもACアダプターが良く使われている理由でしょう。ユーザーの立場でのメリット例として、職場と自宅それぞれにACアダプターを用意しておくことで、毎日の通勤で持ち運ぶのはパソコン本体のみで荷物が軽くなり助かっています。
確かに製品本体と電源部分が別になっていれば、仮に本体機能がまだ機能するのに電源部分が先に消耗してしまって使えないという場合に、電源部分だけを新しく切り替えるということも出来ます。
また、リチウムイオン蓄電池を搭載した製品であれば、ACアダプターを使って製品本体を充電し、アダプターを外した際にそのままコードレスで利用することも出来ます。ノートパソコンや掃除機などが代表例でしょう。
その他にも、製品から直接電源コードが延びていないということのメリットはいろいろあります。
アダプターがPSE対象なのか、本体がPSE対象なのか
PSE認証をしようと検討している方は、海外工場でPSE認証したACアダプターを使えば比較的安価に、PSE手続きを終了することができるので、ビジネスも進めやすいという認識を持たれていることが多いです。
たしかに費用が安いに越したことはないので、その認識は間違えではないのですが、最近の当社事例では、必ずしもACアダプターを使っているからそのまま直流電源装置のPSE手続きだけですまないというパターンが出てきており、今回はそうした点をお伝えしたいと思います。
本体をPSE対象にした方が都合良いパターン事例
DC製品(本体から電源コンセントが伸びていない製品)とACアダプターがあり、当初ではACアダプターをPSE検査する予定でいました。同じ製品がかなりの量数になるので、DC製品とACアダプターが自由に着脱出来るようにしておいた方が都合が良かったからです。
しかし、ACアダプター(直流電源装置)はPSE特定電気用品に該当する為、登録検査機関による工場立ち入り検査が求められるのと同時に、製品の校正設備の導入も要求されることになります。なお、今回はACアダプターの認証もイチから行う必要がありました。
実のところ必要な設備を工場は有しておらず、導入するだけで数10万円が発生することになります。中国の生産工場としてはそんな設備は買いたくありませんし、そもそもサプライヤーを探すことも面倒です。
費用の高い特定電気用品の検査に加えて、設備導入もすることになったらダブルパンチですので、当社からご提案させていただいたのは、DC製品の本体とアダプターを着脱不可の一体式に少し改造し特定電気用品以外にすることで、試験の難易度を下げるパターンです。
一体式になることで、使用現場では若干の不便性が出るかも知れませんが、それによって認証が出来ずに事業そのものができないという最悪のケースは回避することができました。また、一体式にしてPSE試験をする為のポイントについてもアドバイスさせていただきました。
本体がPSE対象になってしまったパターン事例
今回のパターンは、海外メーカーもよく設計について考えてられており、PSE認証をされたアダプターを利用して、開発コストを抑えるということをやっていました。
アダプターの使い方は、製品と一体にする構造です。
製品本体は、かなり様々なところに移動して使う用途になっており、アダプターと本体が完全に分かれる着脱式タイプだと、毎回一緒に持ち歩かないといけないので機能性がかなり低まります。そのため、製品とアダプターを一体型にしていました。
しかし、そうした場合に、経済産業省は、製品本体がPSE対象であるという見解を出しました。
当初は、正直まだ製品自体が多く出回っていない物だったので、経産省もあまりちゃんと見ていなかったのでしょうが、後出しじゃんけん的に新しい見解を示すことになりました。
しかも、本案件における製品本体は特定電気用品ということになり、生産工場の立ち入り検査が必要になるなど、相応の難易度と費用が発生するPSE試験を行う必要があります。
困ってしまうのは事業主の方で、今まで安く抑えられていた費用が急に追加的に掛かるというのはかなり厄介です。一方で汚い言い方をすると、当社としてはそちらの方が仕事が増える訳なのですが、いずれしてもなるべくリーズナブルな提案で対応させていただきました。
このような場合もあるので、一回PSEをクリアしているからと言って、後は何があっても大丈夫とは考えずに、常にいろんな可能性があると認識しておくことは重要でしょう。
余談:PSE認証済みアダプターでも粗悪品はあるので要注意!
お客様からご依頼あり、PSE認証されているという中国工場が生産したACアダプターの安全性試験を念の為に行いたいということで、実施してみましたが、結果はEMC(電磁両立性試験)が不合格でした。
簡単に言うと、製品から電磁(電波)が規定以上に発出されており、周囲の電子機器や人体などに悪影響を及ぼす可能性がある状態のことです。
本当にその工場がPSEを取得しているのであれば、検査は経済産業省が指定した登録検査機関しか行えませんので、検査機関も適当にやっていないことがわかります。そうすると、工場が検査が終わって量産する際に、手抜きをしてちゃんとEMC対策をしていなかったのだと考えられます。
一律的にPSE証明書があるから大丈夫としないで、生産工場と製品内容についてしっかり話をしておかないと万一それで事故などが遭った際、すべて輸入事業者の責任になりますので、その点は十分に注意するようにしてください。
以上のように、ACアダプター(直流電源装置)でもいろいろな検査が必要になってくる可能性もあるので、まずは当社のような専門の会社に一度お問い合わせいただければ、正確で安全な判断を提供させていただきます。
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