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モバイルバッテリーを扱う事業者の方に、中国工場のPSE証明書を信用して本当に大丈夫ですか?最前線の現場の情報をお伝えします

 2021/02/15 PSE コラム 中国ビジネス 中国輸入 事例 認証の原理原則
この記事は約 9 分で読めます。 4,163 Views

こんにちは。管理人の堀です。

モバイルバッテリー(リチウムイオン電池)がPSE法制化された背景や、PSEの検査手順などについては、以前にもご紹介させていただきました。

モバイルバッテリーを取り扱いたい事業者の方に向けた、PSEマーク取得7つの基礎知識!

 

その後も当社に寄せられるモバイルバッテリーに関するご質問は多く、そして実際に案件となっている事例が増えており、他にもお悩みになられている方の参考になるのではないかと思い、今回記事を書かせていただきたいと思います。

特に多い内容として、「PSEの証明書自体は中国工場が有しており、それをそのまま使って大丈夫なのか?」というご質問です。

まず最初に申し上げると、PSE証明書自体はあまり問題ではなく、実際にどういった検査を行ったかを記録した「検査レポート」の内容が重要です。

海外の検査機関が発行する証明書は一部日本語も含まれていますが、「検査レポート」は全部英語で書かれていますので、そもそもPSEの検査内容がわからない方は、英語で書かれているとさらに訳が分からなくなってしまいます。

英語が堪能な当社の技術者が「検査レポート」を確認してみると、その内容に様々な不備が発見されます。そこで、依頼主の方と相談になるのですが、今回はそうした点について、事例を交えながら解説していきたいと思います。

 

そもそも経済産業省への事業届けには「検査レポート」は不要

大前提を共有しますと、経済産業省へのモバイルバッテリー(リチウムイオン蓄電池)のPSE事業届けに「検査レポート」は不要で、PSE証明書と当該製品の概要資料「型式区分」のみで行えます。場合によっては、PSE証明書も不要ということもあります。

「検査レポート」が重要だとお伝えしておきながら、経産省への提出は不要というと話が矛盾するようですが、実はここが今回の話のポイントになります。

 

本当にちゃんと検査をしているのかわからない

本来であれば、届けを受理する経産省(正確に言うと、書類を受理するのは「経済産業局」という経産省関連の書類受理機関)で製品がキチンと認証・テストされたのか、その検査レポートを確認するべきなのですが、あの人たちも電気用品などの専門家ではありません。

また、膨大な数の事業届けが提出される中で、ひとつひとつのレポート内容を確認することはかなり難しく、海外の検査機関で実施されたレポートはすべて英語ですので尚更です。

つまり受理する経産局(省)側としては、キチンと認証・テストされているのが当たり前という前提であり、その上で、PSE証明書・型式区分だけを受け取っていると考えられます。そして、その製品が市場流通後に問題あった際取り締まるという感じなのかなと思います。

その体制が良いか悪いかはひとまず置いておき、現状ではそのようになっていると認識しておいてください。

そうすると、問題になってくるのが、本当に正しく・ちゃんと・過不足なく認証・テストが実施されているのかという点です。

誤解を恐れずに言うと、中国工場が中国国内検査機関に独自で依頼した試験はかなり怪しいものがあります。また、意図的にちゃんと検査をしていない、日本の基準に合わせること無く自分たちの基準でやったいい加減な検査(検査レポート)を出している例が散見されます。

中には、試験レポートのテンプレートが出回っており、その検査項目にチェックだけしてやったことにしている連中も少なからずいると個人的に感じています。

繰り返しになりますが、その内容でも経産省への事業届けは出来てしまいます。中国工場から取り寄せた正しく検査されたかわからないPSE認定証を以て、輸入事業者となる日本企業が量産されていっています。

ちゃんと検査がされたか不明、ということは製品が本当に安全であるかも不明、ということです。安全性が100%保証されていない製品を市場投入して、万一それで発火事故などが起これば、当然輸入事業者の責任となりますし、何よりユーザーに対して多大な迷惑をかけることになります。

当社としては、モバイルバッテリーのPSE証明書を工場から提示されたがどのようにすれば良いか?というご相談あった事業者の方には、そういったリスクがあることを説明させていただき、その上でどうするかの判断を委ねています。

もちろん、疑わしきもありますが、一方で、ちゃんと検査をしていないとは100%言い切れず、もしかしたらしっかりと検査をしているかもしれません。それは当社にもわかりません。

ただ、工場が証明書・検査レポートを持っているからといって、それが100%確かな内容であると鵜呑みにすることの危険性はあるということは認識しておいてください。

それでもあらためてPSE検査をセッティングするとなると、費用・労力・時間すべて掛かりますので、何とかして現状の証明書・レポートで済ませたいというお客様もいらっしゃいます。その場合は、工場はちゃんと検査を行っているという前提で、そちらには関知せず、経産省への届け方法、レポートの中身の確認サービスも行っています。

そのような現状で、モバイルバッテリーのレポートを確認してほしいということでご相談あったお客様の事例をご紹介したいと思います。

 

工場の検査が信用できず、当社にあらためて検査依頼されたA様

A様は広く商品展開をされたいと考えており、工場の検査内容で本当に大丈夫なのか?当社にご相談いただきました。

A様曰く、「この工場はPSE試験を300ドルで委託したらしいです。でも、貴社から提示あった検査費用と比較すると1桁違います。もちろん安いに越したことはないのですが、安過ぎるのはやっぱり不安。当社のビジネスモデルでは製品事故は致命的な損害になりかねないので、貴社であらためて検査をしてもらいたいと考えています。」

とてもコンプライアンスを重視されている会社様だと感じました。

少し専門的な話になりますが、モバイルバッテリー(リチウムイオン蓄電池)のPSE試験は、J62133 (H28) (JISC7812(2015))と電気用品安全法(PSE)別表9という2つの基準(試験項目)があります。

どちらの基準で試験を行っても良く、検査機関や工場が有している試験ノウハウや生産設備に合わせ、どちらかを選んで試験を実施します。

工場の検査レポートを見ると、J62133 (H28) (JISC7812(2015))の基準で試験を行ったことになっていましたので、当社では電気用品安全法(PSE)別表9に従って検査をすることとしました。

そうすれば、J62133 (H28) (JISC7812(2015))と電気用品安全法(PSE)別表9の両方で試験をすることになるので、A様としても安心できるということになりました。

 

試験内容に大幅な不備・28日間定電圧充電の検査がされていなかったB様

B様は、元々は工場がモバイルバッテリーのPSE認証をしているので、日本国内での事業届けのやり方を教えてほしいというご相談から始まりました。

当社としては、B様に昨今の状況を説明したところ、工場からなんとかレポートを入手できたので確認してほしいという依頼がありました。

基本的に工場は、証明書があれば事足りると思っていますし、どのように検査をしたのかあまり詮索されたくないようでレポートの提示に消極的であることは多いです。

モバイルバッテリー検査には、「連続定電圧充電時の安全」 という項目があり、その内容は 「28 日間定電圧充電を行った際に発火、破裂又は漏液しないこと」。提供されたレポートにはその記述がありませんでした。

お伝えしたように、これでも証明書さえ出せば経産局(省)への届けは出来ますが、この内容で市場販売を続け、万一事故が起こった際は事業者の責任は一層厳しく問われることが容易に想像できます。

そのことをB様に言うと、であれば、別の工場でイチから検査をしたいということになりました。既存工場は、自社のレポート(試験)は完璧であると信じて、再検査などには応じそうも無いとのこと。

言葉は悪いですが、他国の法律を遵守せず、それでも自分たちは正しいと思い込む考え方は到底理解できません。B様の既存工場との取引は中止したようでした。

 

試験内容に大幅な不備・組電池検査がされていなかったC様

次のC様は、当初は電波法認証のご依頼をいただいておりました。その為、電波法に関する技術資料などを確認していると、製品の一部にモバイルバッテリーを使用していることが分かり、C様に電池試験について尋ねてみました。

すると、電池に関しては、工場が自らPSE試験を行ってくれており、証明書とレポートがあるということでした。しかし、これまた昨今の状況をお伝えして、念の為、その内容を当社が確認させていただくとご提案しまして拝見することになりました。

そして、その中身を見ると、試験は単電池のみで組電池試験が全く行われていないことが発覚したのです。

組電池とは、同じ種類の単電池を複数個パックしたものでパック電池とも呼ばれています。PSEにおいては、単電池試験と組電池試験が求められますが、その片方を一切やっていないということは大問題です。

C様に確認したところ、この内容で万一事故などの問題があれば、数千個作るつもりなのでむしろ大損害になりかねず、電波法認証と合わせて新規でモバイルバッテリーの認証を依頼したい、ということになりました。

 

 


以上が当社の最新事例の一部です。仮に、レポート上での軽微な記載上のミスであれば、それが元で事故などに繋がることも無いとは思いますが、必要な試験の検査漏れはかなり致命的であると言えるでしょう。今回は書きませんでしたが、そういったパターンも複数ありました。

タイトルにある「中国工場のPSE証明書を信用して本当に大丈夫ですか?」という問いに対して、当社は基本的に信用せずまずはご自分で然るべきところに確認した方が良い、と回答いたします。

繰り返しになりますが、上記事例などからも分かるように、ちゃんと試験をしていない可能性も高くあり、そうすると製品事故の可能性もグンと高まります。

製品の不具合はもちろん扱っている事業者にも痛手となりますが、もっと言うと、それを使ってしまったユーザーの事故、つまり大惨事につながりかねません。下手をすると、それが事業者生命を絶つ原因にもなるのです。

相応の費用が発生するPSE試験を真っ先に行うべきだとまでは言いませんが、ひとまず、提示あった証明書・レポートが正確なものであるかを確認する必要はあるのではないかと考えます。

 

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