楽天モバイル電波法(技適)違反!? 事件の経緯と今後予測できる3つの電波行政
こんにちは。管理人の堀です。
現在、楽天の携帯電話事業会社・楽天モバイルが展開するスマートフォン「Rakuten Mini」が電波法違反の疑いで一部メディアで大々的に報じられています。
「Rakuten Mini」は、モバイルFeliCa搭載のスマホでは世界最小、最軽量を謳い、さらに、各種キャンペーンを利用すると実質1円で端末が手に入るなど話題になっていました。
事件発生を受けてか、本当に人気があって品薄なのかはわかりませんが、2020年6月21日現在、ホームページ上では、「ご好評により現在入荷待ちをなっており、各色のお届け時期は8月中を予定しております。」となっています。
この事件については、大手メディアからマニアック(専門的)なメディア迄いろいろ取り上げられており、今のところ新しい情報というものはないのですが、楽天や総務省における問題の本質と、認証ビジネスを行うモノの視点から、今後の電波行政について見解を述べさせていただきたいと考えています。
Contents
通信キャリアの世界の簡単なおさらい ~楽天が通信キャリア事業に参入するまで~
以前に書いた記事を引用する形で、楽天が通信キャリア事業に参入した経緯をおさらいし、何故、このような事件に至ったかを考察したいと思います。
日本電電公社が民営化されNTTになる昭和60年の前年である昭和59年に、電気通信事業に関する法整備が行われ、電気通信事業法が制定されました。
~電気通信事業法の概要は割愛~
この電気通信事業法に則り、通信事業者(電話会社)は当初は民営化したNTTのみでスタートし、昭和62年にDDI(現KDDI)、日本テレコムが参画、2000年に日本テレコム子会社のジェイフォンがイギリスのボーダフォンによって買収され、外資系の通信会社ボーダフォンが日本に誕生。
その後、2006年にボーダフォンがソフトバンクに買収され、通信会社ソフトバンクが登場。ソフトバンクにより2008年にiPhoneが日本に導入され、日本にスマホ時代が到来。
NTT、KDDI、ソフトバンクの通信3社鼎立の状態がしばらく続きましたが、2019年に楽天が通信事業に参入し、通信業界は新たな装いを見せています。
基本的には、NTT、KDDI、ソフトバンク、楽天の4社(いわゆるキャリア)が通信電波を保有する形で、他社がMVNO(仮想移動体通信事業者)として、通信事業者としてのサービスを展開したり、携帯端末などを販売しています。
その際に、Rマークの電波法認証とTマークの電気通信事業法の認証が必要になってきます。高いと言えども、大手企業のレベルで考えれば微々たるものですので、比較的容易に参入ができる環境であると言えます。
なお、このMVNOは2014年10月に総務省が策定した「モバイル誕生プラン」により、普及が促進されています。
それには、スマホの普及によって大手携帯通信電話会社間の差別化が困難となった結果、高額なキャッシュバックや抱き合わせ販売による顧客の奪い合いという不健全な競争が横行したということが背景にあります。
さらに、2015年のSIMロック解除が義務化され、電波を保有しているのは最大手3社(当時)のみですが、ユーザーは端末メーカーや通信事業者は自由に選べる時代を迎えることになりました。
ちなみに、楽天自体は、グループ会社のフュージョン・コミュニケーションズが2009年、ウィルコムのPHS回線を利用した法人向けIP電話サービス「楽天モバイル for Business」を開始。
その後、2014年には、NTTドコモの通信網を利用した格安携帯電話として(端末)サービスを開始するなど、通信業界での歴史は比較的長く、いよいよ満を持しての通信キャリア事業を2019年にスタートさせました。
グループ内の各事業との相乗効果もあるでしょうし、様々な業界への新規参入を繰り返してきた楽天としては、通信事業の主権を握れるキャリア参入はまさに悲願であったと言えると思います。
しかし、広大なシェアがあるとは言え、既存3社で寡占されている通信キャリアの世界で、一定数のシェアを得ることは相当に厳しい戦いを強いられることは想像に難くありません。
それが原因による事件であるかどうかはわかりませんが、一定程度に通信事業者としての経験がある企業ですので、単純な電波法ミスという話では片付けられないと個人的に感じています。
今回の事件の概要
あらためて事件の経緯を日本経済新聞記事の引用を中心にお伝えします。
独自に開発したスマートフォンで、総務省に正式な報告をせずに対応周波数を変更し、消費者への告知も遅れた。
(中略)
自社の通信網で利用しない周波数への対応を外す一方、米国キャリアなどが使う周波数を追加していた。
(中略)
5月に楽天ミニの周波数を変えたのは、米国など海外でのローミングの利便性を高めるためだ。スマホが対応できる周波数の数には上限があり、国内大手3社などが使う「バンド1」と呼ぶ周波数を削除し、代わりに「バンド4」と呼ぶ米国の通信会社などが使う周波数を加えた。
端末の認証を再申請しなかった理由について、楽天は「事前にメーカーや認証機関から、追加の申請は必要ないと回答があった」と釈明する。だが総務省は「対応するバンドの削除があれば、再申請が必要」との見解で、消費者への告知も遅れた。第三者任せの管理体制の甘さは否めない。
引用:日本経済新聞_楽天モバイル迷走 周波数無断変更、行政指導や回収も(2020年6月15日)
電波法に対して馴染みがないと「バンド数を変更することがそれほど問題なのか?」という疑問がわいてくるのは当然のことと思いますが、「電波」というものは、国民全員の有限の資産として、適切に管理・運営される必要があります。
特に今回のような大規模での電波利用の中において、適切な手続きが行われず勝手にバンド数を変更することで当該電波及び周辺電波で混信が起きたり、場合によっては、医療機関での医療機器の誤作動など、様々な障害が発生する可能性も否めません。
問われる楽天の倫理観
本当の真相はわからないということを大前提にお話しさせていただきますが、多少でも電波法に興味関心・知識がある方であれば、バンド数を変更しておきながらそのまま発売するというのはあり得ないというのが共通の見解です。
電波行政に関わる以上、バンド数(周波数)が変われば再度申請するというのは、朝に人に会ったら「おはよう!」というくらいの常識の話で、知りませんでしたという言い訳は通用しないでしょう。
ただこれが、担当者の判断なのか、トップ(上司)の指示なのかはわかりません。しかし、何回もお伝えしているように基本的に販売者が罰せられる法律ではないので、バレても大丈夫という慢心があったのではないかという邪推をしてしまうのも事実です。
総務省が重い腰を動かしたと推測できる背景
結局のところ、今回の事件において法的にユーザーが罰せられるという点を除いて、ユーザーが被る非利便性はどのようなものなのでしょうか?
関連記事を複数確認したところ、一番細かく書いてあったものを引用したいと思います。
今回の仕様変更によりBand 1が使えなくても、楽天モバイルの自社回線やauローミングの利用は問題ありません。しかし、海外ローミング利用時や、例えば他社回線を利用するIIJmioのeSIM利用時に、エリアが狭まるなどの影響が考えられます。
引用:engadge_楽天のスマホ「Rakuten Mini」電波法違反の恐れ、総務省が報告を求める
正直なところ、一般ユーザーがこのことに気が付くのは難しいと思われますし、気付いたとしても「Rakuten Mini」が大量に出回った後からでしょう。
ユーザーが罰せられるものが広く販売されてしまった後からでは、どのように対応すべきか収集がつかなくなってしまいますし、そのようなものを販売した楽天モバイルを罰する法律がないということであれば、総務省と楽天への国民の怒りは沸騰していたでしょう。
いずれにしても、総務省へ通告したのは、一部のユーザー(専門家)とされており、義憤に駆られた行動なのか、はたまた他に理由があるのかわかりません。
しかし、「販売者を取り締まることができない」という電波法ですが、それでも総務省担当者は、「これは流石にヤバい」と思ったのではないかと推測しています。
今後予測される電波行政
今まで本サイトでは何度かお伝えした通り、現在中国事業者による違法電波製品がAmazonなどのECサイトを中心に大量に出回っています。
しかし、そうした事実を総務省に連絡しても大事の前の小事という感じで取り合ってもらえませんでした。
それでも、当社のお客様をはじめ、多くの日本人業者たちは自分たちの企業倫理、社会規範を守るため、そして何より顧客に迷惑をかけないためにも愚直に電波法順守を行っています。
それが今回のように大手企業がいとも簡単に法令を無視してさらに特段のお咎めなし、また総務省も曖昧な対応を続けていたら、一部団体からは総務省に対して猛烈な抗議が起きるのではないかと思われます。
そうしたことを踏まえ、また希望的観測を込めて、今後予測される電波行政について見解を述べておきたいと思います。
電波法違反商品について販売者への罰則化、総務省の取り締まりの強化
何回も書いていますが、違法品が通常のECサイトなどで売られていてそれを知らずに使ってしまったユーザーが罰せられる、という法律は絶対におかしいと思います。
一方でそうは言っても、ユーザーが罰せられることはほとんどないという話もあり、誰も罰せられることがないのであれば、そもそも何のための法律なのでしょうか?
総務省はそれに対する見解は出すべきだと考えます。
検査費用を下げる、もしくは認証取得事業者にインセンティブを与える
あまり現実的ではないと思いますが、結局認証にかかるお金は、レバレッジの効かない費用でしかないので積極的に認証したい企業は少ないのが現実です。
認証代行の仕事をしている当社が言うのも何ですが。
Rakuten Miniに関しても、どういう経緯で電波法違反に至ったかはわかりませんが、やはり認証は負担でしかなく、キャリアの後発参入組がシェアを獲るためには端末の値段を下げるしかないわけで、そうした事情が背景にあるのかもしれません。
このサイトでもお伝えしているように、携帯電話バンドの認証費用は桁違いに高くありますし、通信キャリアのためのバンド費用はさらに桁違いでしょう。しかし、もちろん電波法違反自体は許されるものではありません。
一方で、検査費用を下げると有象無象の参入者が現れる可能性もあるので、認証取得後に一定の条件を満たせば、インセンティブ(補助金)があるということにすれば、違反もなくなってくるかもしれません。
AmazonなどEC販売モールに対しても電波法違反を課していく
少しポジショントーク的になりますが、販売者に罰則を課せない、そして販売をほう助するECモールにも罰則を課せないようであれば、違反の数は減っていきません。
電波法違反をする中国事業者がどんどん増える毎日ですので、そのように違法品が増えてくれば、新規参入組も別に違法してもいいじゃん、という気持ちになることは容易に想像できます。
家電量販店などのリアル店舗では電波法順守する一方で、それ以外も含めてですがコストがかかり値段が高くなり商品が売れなくなる現実があるのに、自浄能力がない販売モールで違法品が安く売られる状況は健全ではないと考えられます。
罰金・罰則はオペレーション的に難しいとしても、強制的に販売停止するなどして、違法品の根絶をお願いしたいと思います。
Rakuten Miniの問題から最後は総務省への問題に話が変わってきてしまっていますが、結局は取り締まるが明確な方針を示さないと同じような事例はどんどん増えてきます。
真面目に電波法認証している業者がバカを見ないよう、総務省の賢明なる方針を期待したと思います。
最後に、このページで何回か掲載している総務省の不法電波禁止の広告をあらためて掲載したいと思います。
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