中国・海外工場生産の電気用品PSE認証で失敗する一番の理由はEMC試験!?
こんにちは。管理人の堀です。
当然ながら、どの会社様もPSEなど認証試験では一回での合格を希望されます。
もちろん、代行を担当する当社としても、試験が一回で終了してくれることいつも願っています。
しかし、なかなかそうなってくれないのも事実であり、そうした際のリカバリー案を提案させていただき、生産工場に対策品(新しいサンプル)を作ってもらうアドバイスをするのも当社の仕事であります。
そうした幾度の経験からわかってきました。
中国などの海外工場がPSE認証試験で不合格となる一番の理由は、
EMC(電磁両立性試験)です。
EMCという単語は聞き馴染みがないと思いますが、実は電気用品においてかなり重要な役割を果たしている機能であり、これがしっかり正常に機能していないと、ユーザーは安全・安心に製品が使えなくなってしまいます。
少し大げさに言うと、EMC機能が働いていない電気用品の影響で社会が混乱する可能性も否定は出来ません。
ただ、だからと言って、販売がメイン業務である事業者の方が、EMCについて詳しくなる必要はあまりないと感じており、最低限知っておいた方が良いポイントや、当社などの代行会社の使い方について書かせていただきたいと思います。
Contents
そもそもEMCとは、EMI(エミッション)とEMS(イミュニティ)
以前にEMCについて、簡単にご紹介しましたが、あらためておさらいしたいと思います。
そこにある引用が一番わかりやすいと思うので、再度引用したいと思います。
EMCはElectromagnetic Compatibilityの頭文字で、JISでは電磁両立性と定義されている。
すなわち機器は「電磁的妨害源とならないように、かつ、電磁的な干渉を受けないように、あるいは受けても正常に動作する(両立する)」ように設計、製造されていなければならない。
図に示すように、電磁両立性はエミッション(EMI)とイミュニティ(EMS)に分けられる。エミッション(EMI)とは、ある発生源から電磁エネルギーが放出する現象である。
一方、機器からのエミッション(EMI)等により、周辺の機器で起こりうる性能低下や誤動作に対して、性能低下や誤動作を起こさずに動作できる機器の能力をイミュニティ(EMS)という。
EMCは学問分野を意味する環境電磁工学、電磁環境学の意味で用いられる。一方、技術用語としては、電気電子機器の電磁気的な問題に対して、整合性があるのか、両立しているのかという意味で用いられる。
具体的には、機器から放出されている電磁妨害波が小さく、外部からのある程度の電磁妨害波に対しても正常に動作し、かつ、機器自体で誤動作しないとき、その機器はEMCを有するという。電磁両立性と称されている。
簡単に言うと、ほとんどすべての電気用品は「電磁波」を発しており、それが人間および周辺機器などに干渉しない(悪影響を及ぼさない)ように、設計・製造に工夫を施さないといけません。
日本でもJISに定められた基準があり、PSE試験ではそれらを採用しています。なお、後述しますが、世界各国でその基準は様々に存在する一方、IEC(国際電気標準)をベースにした国際規格があり、日本はそちらも採用しています。
ちなみに、EMI(エミッション)は、周辺に電磁波での周囲への放出と、電源プラグを通じて電線ネットワークを介して放出の2種類があります。
なお、EMS(イミュニティ)はPSEの検査項目に含まれていません。
つまり、周囲からの電磁波による影響有無に関しては、PSEでは問われなくあるのです。しかし、PSE(法律的)では不問ですが、納入先の事情や製品内容によって、自主的なイミュニティ検査が求められる場合もあります。
いずれにしても、詳しい必要はありませんがEMC電磁両立性試験の存在自体は、電気用品を扱う事業者としては是非覚えておいてください。
EMC試験は電気用品安全法別表十もしくは十二に沿って行われる
かなりマニアックな話なので、簡単に流しておいていただければと思いますが、少しだけお伝えしておきます。
PSEには大きく
(1)日本独自の技術基準
(2)国際規格(IEC規格)に準拠し日本独自の考え方を追加した技術基準(一般的にIEC-J規格という)
の大きく2つ技術基準があります。
(1)は電気用品安全別表一から十一まであり、(2)は国際規格に準拠して別表第十二となっています。
それぞれの電気用品の種類によって技術基準が設定されていますが、EMCについては別表十「雑音の強さ」もしくは別表十二で規定されています。
つまるところ、PSEにおけるEMCの基準内容は日本独自の規格と国際規格の2つが存在しており、基準内容を満たしてPSE試験を行っていれば、どちらの規格を採用しても構わないのです。
といっても、日本の工場で作られたものは別表八で試験することが多いですし、海外生産のものは別表十二で試験することが多くあります。
細かい規定はいろいろとあるのですが、とりあえず流れだけでも把握しておいていただければと思います。
海外製品がEMC試験で不合格になる理由(当社事例)
当社では、中国だけではなく、台湾やアメリカなど、日本の輸入事業者の依頼により世界各国の工場のPSE試験の代行を行っています。
大体の流れとして、日本のJET(一般財団法人 電気安全環境研究所)に依頼する為の代行会社として当社にお声掛けいただくのですが、当社は、特段のこだわりがなければPSE試験はJETではなく、海外検査機関でやった方が良いと提案しています。
その理由を細かく書くと、JETの悪口になるので割愛しますが、結論だけを言うと海外検査機関を使った方が早く認証できる(ことが多い)、とだけ覚えておいてください。
早く進めようとする理由の一つとして、海外工場で新しく開発・設計した製品は一様にEMC(EMI)に不備があることが多いからです。正直なところ、不備がある原因はよくわかりませんが、工場としても、その段階で初めて製品不備を知ることになります。
また、基本的に海外検査機関では先述の電気用品安全法・別表12に定められたIEC(国際電気標準)ベースで行われます。つまり、日本のPSEのEMIが特段厳しいわけではなく、そもそもどの国に出しても、試験不合格になっている可能性は高いのです。
そういう意味で、日本企業から要請あって設計し、今後、世界展開を考えている企業としては、日本企業の資金で検査が出来るわけで、お得であったりもします。
いずれにしても、EMC試験で失敗が多いので、スピーディーにやってくれる検査機関でないといつまで経っても認証が終わらなくあります。
余談ですが、アメリカのEMI基準であるFCCは、IECより基準が甘いようで、アメリカ企業が開発した製品をそのままPSE試験すると、大抵EMI試験で不合格となってしまうと言うのも実際の話であります。
また一方で、有象無象の中国工場の場合は、そもそもEMIに関する知識がなかったり、手を抜いてEMIをしていないということもありますので、PSE試験でしっかりと確認しておいた方が良いでしょう。
出来れば定期的にEMIがちゃんと出来ているのか、抜き取り検査をする必要があるかも知れません。
医療機器やJISなど他の認証では求められるEMCのレベルが違ってくる場合もある
EMCの、EMI・EMSにおいて、製品種類によってやるべき試験などは変わってきますが、基本的に試験内容がそれほど多岐にわたっているわけでは無く、
言うなれば、広さ(数)より深さ(レベル)が問題になってきます。
例えば簡単に言うと、
ある電気用品のEMIにおいて、PSE試験ではレベル2まで求められるが、それを医療機器として申請する場合には、レベル5まで必要となり、またEMSも必要になってくる、というイメージです。
より高度な試験が実施出来ることをアピールする為に、各検査機関やメーカーなどは、こぞって測定器などのレベルの高さを訴求していたりします。
しかし、PSEレベルの検査では、通常の法定範囲内の検査で十分なので、その辺は理解しておきましょう。但し、後述しますが、販売先の事情などでよりレベルの高いEMI試験、またはEMS試験が必要であれば、専門機関にPSEとは別に試験依頼することになるでしょう。
そうしたことを理解しておくと、EMCって何だ?電気用品を扱っているけど何かしないといけないのか?などという疑問が解消されると思います。
簡単なテストから品質向上テストまで、海外工場のEMCアドバイスを実施
お伝えしたようにPSEでは法定で決められた最低限必要な、EMC(EMI)試験が実施されますので、検査内容が合っていれば基本的にそれが理由で経産省などから処罰されるようなことはないでしょう。
しかし、今回ご紹介した事例のように、工場が検査後も変わらずEMI基準に沿った製品を作っていないというケースもあったりします。何かの折りにそうした事態の懸念を感じた際に、工場に問い合わせても、恐らく向こうは大丈夫、大丈夫、とだけ言うでしょう。
それでその後は修正してくれれば良いですが、決定的な証拠が無かったり、そもそも工場が改善方法を把握していない場合もあります。そうした際は、当社にお声掛けいただければ、EMIの測量テストに加えて、工場への改善指導も1セットでお受けさせていただきます。
一方、製品の納入先によっては、PSEの法定基準以上を求められる場合もあるかも知れません。また、EMI(エミッション)だけではなく、EMS(イミュニティ)が必要になることもあるでしょう。
そうした際、求められるレベルに応じたEMI、EMS試験を中国などの海外工場で実施することも可能です。また、そもそもどういったレベルの試験をすれば良いか、のご相談も承っています。
お気軽にお問い合わせ頂ければと思います。
EMCの試験を行う検査機関・会社は日本にも多く存在していますが、そうした会社と当社の一番の違いは、やはり海外工場のEMC試験が出来ること、また現地工場の人間に対して言語の壁が無く理解させられることです。
検査機関がどれほど立派な設備を有していても、関わる人間(工場の人間)が制度や基準を理解していないとまさに宝の持ち腐れとなってしまいます。
海外工場生産品のEMC全般のご相談に関しては、是非当社にお問い合わせ頂ければと思います。
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