PSEは【取得】するものではなく、あくまで【自己申告】するものです
こんにちは。管理人の堀です。
PSEの許認可認証代行事業をやっていると、本当に多くのお客様から
PSEを取りたい(取得したい)!
PSEマークはいつ経済産業省から付与されるのか?
というご相談をいただきます。
しかし、正確に言うと、PSEは取得するものではありませんし、PSEマークを経済産業省から付与されることもありません。
もちろん、「PSEは取得」するという認識でも、うまく代行事業者などが段取りをしてくれれば特に問題もないのですが、やはり全体像を正しく理解しておかないと、どこかのタイミングでトラブルになったり、自分自身が今何をやっているのかわからなくなることもあるかもしれません。
PSE認証(試験)業務自体は代行会社にやらせるとしても、ご自身である程度は理解をしておかないと、インチキ代行業者などに騙されてしまうリスクも伴ってきます。
率直に言うと、取締りを行う経済産業省自体が正確に理解をしていない、もしくは自分たちに都合の良いように、事業者に対していろいろ要求をしてくることもあります。
「お上が言うのだから間違いない」
と言って、言いなりになっていると、実はそれは全然違う内容だったということも少なくありません。当社では、そうした事業者様にも様々にアドバイスを行ってきました。そういう意味でも、電気用品を扱う以上、事業者自身が正確な知識を得る必要があるのです。
今回のお話しで、言葉の定義は正しくして、よりスムーズなPSE認証試験に臨んでいっていただければと思っています。
Contents
電気用品安全法の条文をおさらい
PSEに関する法律を規定しているのが「電気用品安全法」です。こちらを少しおさらいしてみましょう。
電気用品安全法(以下、同法)
第一章 総則
第一条
この法律は、電気用品の製造、販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより、電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的とする。
ここにあるように、電気用品(電化製品)の安全性は事業者自らが確認するという大前提に立っています。その上で、各種の規定が伴ってきます。
なので、正しい確認の仕方というのは事業者の責任となり、仮に使った代行会社がインチキ会社だとしても、ずさんな検査結果により事故などが起きたとしても基本的には事業者の責任となるわけです。もちろん、代行会社への裁判などはあり得るかもしれませんが。
認証試験なんてものを積極的にやりたいという人はいないでしょうが、それでもやらされている感で適当にやっていても、誰もアドバイスはしてくれず、何かあった際に大変な思いをするのはご自身です。やはり正しい知識、言葉の定義などは必要になってきます。
今回の本題である、PSEは「取得する」ものではなく「(自己)申告する」モノだという点については、下記条文も確認してみましょう。
第二章 事業の届出等
(事業の届出)
第三条
電気用品の製造又は輸入の事業を行う者は、経済産業省令で定める電気用品の区分に従い、事業開始の日から三十日以内に、次の事項を経済産業大臣に届け出なければならない。
第三章 電気用品の適合性検査等
(基準適合義務等)
第八条
届出事業者は、第三条の規定による届出に係る型式(以下単に「届出に係る型式」という。)の電気用品を製造し、又は輸入する場合においては、経済産業省令で定める技術上の基準(以下「技術基準」という。)に適合するようにしなければならない。
(表示)
第十条
届出事業者は、その届出に係る型式の電気用品の技術基準に対する適合性について、第八条第二項(特定電気用品の場合にあつては、同項及び前条第一項)の規定による義務を履行したときは、当該電気用品に経済産業省令で定める方式による表示を付することができる。
第四章 販売等の制限
(販売の制限)
第二十七条
電気用品の製造、輸入又は販売の事業を行う者は、第十条第一項の表示が付されているものでなければ、電気用品を販売し、又は販売の目的で陳列してはならない。
電気用品を販売するまでの大よそのプロセス部分を抜粋しました。
まず大前提として、(電源コンセントを用いるなどの)電気用品は勝手に作って、勝手に販売をしてはいけない、という法律が定められています。それが電気用品安全となります。
上記では順を追って抜粋していますが、要するに、電気用品の安全基準が経産省が規定した通りになっているか(第三者検査機関を使って)確認し(第八条)、合格した後に自ら経産省に届出を行い(第三条)、製品にPSEマークを表示して販売をする事ができる(第十条)、という流れになっています。
また、第二十七条ではPSEマークを表示していない電気用品を販売してはいけないと定めています。
PSEの事業届は許可制ではなく申請制
こうした流れを見ていただくと、何となくでも理解していただけるかと思いますが、「PSE取得する」という話はどこにも出てきません。
あくまで事業者自らが(第三者検査機関などを使って)当該電気用品の安全性を確認して、経済産業省に(電気用品を販売する)事業を開始する届出を出すという流れになっています。ちなみに、事業届は電気用品ごとに都度行う必要があります。
なお、PSEに関する事業届においては、許可制ではなく申請制となっています。つまり、届けを行うたびに経産省にその内容を審査されることはなく、様式一枚と「型式区分」と言われる経産省規定の製品スペックシートのようなものを提出して終わりとなります。
PSEの事業届時には検査レポートなどは不要
驚かれる方も多いのですが、事業届時には検査レポートの提出は不要となっており、前出したように経産省規定の書類を出すだけとなっています。
そうすると、
電気用品の安全性はどこで(どの段階で)確認するのか?
という疑問を抱くかもしれません。それは、結局、経産省の試買テスト(流通後規制)や、経産省の関連団体である独立行政法人製品評価技術基盤機構(通称:NITE(ナイト))による見回りなどで、取締ることになっています。
流通後規制につては、下記ページもご参考ください。
この制度の良し悪しについて今回は触れませんが、少なからず日本はそういう国だと感じています。例えば、税務申告についても、税務署に提出するのはあくまで決算書であり、総勘定元帳などは提出しません。元帳の作成は義務付けられています。税務署から立ち入り調査などがあった時に、事業者は求めに応じて元帳などの説明を行っていきます。
電気用品安全法などいずれにしても、受理時点ですべての会社のすべての内容を確認・チェックすることは物理的に不可能に近く、とりあえず受けておいて、後から(何となく怪しい事業者を中心に)確認するというのは理にかなっているとも言えます。そうなると、益々もってPSEは「取得」するものではなく、「申告」するものであるとご理解いただけると思います。
入口の時点でこのようなやり方であると、インチキしようとすればいくらでも出来てしまう印象もあるのは率直なところですが、それでも販売を始めた後から指摘を受けるなどは、それはそれで大変な労力が掛かるのも事実です。
出来る限り、最初のうちから正しい知識を持って、正しい手順で手続きを進めておくのがあるべき経営の姿だと思います。
PSEマークはダウンロードするもの
ちなみに、もう一つよくあるご質問として、
PSEマークはいつ付与されるのか?
というものがありますが、結論を言うと、PSEマークは付与されません!
事業者自らが経産省のホームページなどからダウンロードして使用することになります。ちなみに、下記は画像サイトから購入したものです。
左が丸形PSE 特定電気用品以外、右が菱形PSE 特定電気用品
こういった点からも、電気用品安全法は、経産省に何らかしら認めさせてPSEマークを付与され、PSEを取得するというものではないということをご理解いただければと思います。
経産省からの認識違いの通告事例
これまでご説明してきましたが、PSEは「取得」するのか、「申告」するのか、正直言ってあまり大したことではない話であるとも、当方自身も感じています。ちょっと聞いて、理解すれば問題ではないですし、内容自体も基本的に簡単です。
しかし、繰り返しお伝えしているように、事業者本人が正しい知識を有していないと、冒頭のように経産省に言われたままになってしまうということもあります。
最後になりますが、その事例を端的にお伝えさせていただきます。
当社のお客様で、特定電気用品(菱形PSE)のPSE認証試験を行った方がいらっしゃいます。特定電気用品については、経産省に登録している検査機関によって製品試験を行い、合格証(証明書)の原紙を保管しておく必要があります。
一方で、どのような検査を行ったかの検査レポートの保管は義務付けられていません。また検査機関によっては、レポートの発行が試験費用とは別に有料となっています。
かなり高い検査費用を拠出されていたお客様は、検査レポートの発行はいたしませんでした。それ自体は合法です。
検査終了後から約1年が経ち、経産省の監査がそのお客様のところにあったようで、その際に、「検査レポート」の提出を求められたとのことでした。
当方は、「検査レポートがあるに越したことはないが、保管は義務付けられていない」と何度も説明したのですが、経産省側は「電気用品安全法八条、九条などに抵触する」と言って聞かない様子。
しかし、同法同条を幾度見てもそんな条文は存在していません。当方からは、「自分が経産省側と話をしましょうか?」というご提案も差し上げましたが、お客様は「お上と揉めたくない」ということで、それなりの費用を検査機関に支払って、検査レポートを発行されていました。
上記は一例ですが、経産省側の勘違いということは多々ありますし、事業者(国民)と接するポジションに(法制度をしっかりと理解していない)嘱託員(いわゆる契約社員)をあてがっていることも、往々にして存在しています。
そうした背景も含めて、事業者自身がある程度学んで、よりスムーズにビジネスを進めていっていただければと考えています。
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