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PSE最難関のEMI試験がどうしてもうまくいかなかったリアル事例をご紹介

 2023/08/06 EMI PSE 事例 認証の原理原則
この記事は約 10 分で読めます。 1,703 Views

こんにちは。管理人の堀です。

これまでも何度か書いてきたEMIですが、繰り返しお伝えしているようにPSE(電気用品安全法)試験の中で最難関と言ってよいでしょう。

PSEの一般的な試験項目は以下の通りです。

絶縁材料試験、耐圧試験、絶縁抵抗試験、構造チェック(絶縁距離測定)、残留電圧試験、ケーブル引張試験、転倒試験、外郭強度試験、外郭燃焼試験、電子回路短絡試験、入力試験、温度試験、モーターロック試験、漏れ電流試験、部品試験、EMI電磁試験、その他各電気用品に定められた技術基準内容に沿った試験

 

こうした沢山の試験項目がある中で、特に難しい理由として、EMIは測定しないと目に見えない、という点が挙げられます。また、その測定機械が大変高価であり一家に一台という感覚で工場が自ら保有することは困難です。

専門の検査機関だけが有していることがほとんどで、試験をするために稼働させるとそれだけで費用が掛かります。また、費用が掛かっても検査ができればよい方で、検査自体も相応に時間が掛かるためいつも予約がいっぱいで、試験をするために待たないといけません。

試験を急げ急げという事業者の方もいらっしゃいますが、もう少し試験の内情を知らないと、単純にうるさい客と認識されてしまう可能性は高くあります。

一方で、EMIの対策はセオリーがあり大体それを実施すればパスできるものなのですが、実はそうではない場合もまれに存在しています。今回はEMIの実情を詳しくご説明するとともに、うまくいかない場合の事例をご紹介していきたいと思います。

 

そもそもEMIとは何なのか?

EMIについては以前の記事で詳述しているのでそちらをご参考いただけますと幸いです。

PSE事業者になるために必須なEMC・EMI(電磁)に関する情報をリアルな現場からお届け!

ごく簡単に言うと、世の中にあるほとんどすべての電気用品は「電磁波」を発しており、その放出量が人間および周辺機器などに干渉しない(悪影響を及ぼさない)ように、設計・製造に工夫を施さないといけません。

日本ではJIS(日本産業規格)に定められた放出範囲の基準があり、PSE試験ではそれらを確認することになります。ちなみに、EMIは、周辺に電磁波での周囲への放出と、電源プラグを通じて電線ネットワークを介して放出の2種類があります。

かなりマニアックな内容なのですが、電気用品を扱う事業者としては知らなかったでは済まされない話です。

EMIは世界各国・地域でEMIの基準も違うので、海外製品の場合、日本のEMI基準に合わないということも多々あります。

また、自国内ではEMIに気を付けるけど、他国であれば(その国の安心・安全は)関係ないという不届きの生産工場がいるのも事実です。結局、事業者自身がちゃんと確認する必要があります。

一方、今回の事例となるのですが、国内の生産業者(現場技術者)においてもEMI基準をきちんと理解できていないパターンもあります。

 

どんな試験内容なのか?

これについても記事をご参考いただければと思います。

PSE事業者になるために必須なEMC・EMI(電磁)に関する情報をリアルな現場からお届け!

試験内容(手順)自体はそれほど難しくなく、測定機械と対象製品を接続してスイッチオン!あとは、測定数値が現れるのを待つだけです。記事中に写真もありますのでそちらをご覧ください。

専門的なPSE検査機関であれば、機械との接続も全部やってくれますが、例えば各都道府県にある産業技術センターのようなところでEMI試験だけをする場合、接続等はすべて依頼主側で行う必要があります。

 

最初から対策したほうが良いのではないか?

当社がPSE試験を希望する新規のお客様にEMIのリスクについて説明すると、必ずこのように聞かれます。

追加試験費用を払うぐらいであれば最初から対策したほうが良いのではないか?と考えるのは人情です。私も依頼主であれば同じようことを考えるでしょうし、対策をせずそのまま進めてそれで追加費用が発生するものであれば居たたまれない気持ちになるでしょう。

しかし、そういう事情を理解した上でも、当社ではまずはそのまま試験をした方が良いというように説明をします。

 

単純にそのままクリアになる可能性はゼロではない

EMIのリスクについてご説明してきましたが、それはあくまでリスクであって絶対に不合格になるわけではありません。可能性が高いというだけです。

これまで多くのEMI試験をしてきた中で、海外製であっても一発でEMI試験に合格したことも何度もありました。そして、対策というのは追加の試験費用だけではなく、今後の生産コストが上がる話でもあります。

 

対策に使うノイズフィルターは結構よい値段がする

これまた以前の記事になりますが、最後の部分に対策の方法について説明をしています。

PSE事業者になるために必須なEMC・EMI(電磁)に関する情報をリアルな現場からお届け!

記事では○○〇を使うと書いていますが、今回は特別にそれが何であるかを教えます。

それは「ノイズフィルター」と呼ばれるもので、簡単に言うと、EMIの電磁波の放出を下げるためのものです。これを製品の内部にある電源部分に装着します。

大抵はこれを装着するとEMIの数値が安定するようになります。しかし、これ自体でそれなりの値段はしますし、中国検査機関で対策する場合は大よそ中国産のノイズフィルターを使います。

そうした際、向こうで入手ができなるとまた別のノイズフィルターで検査する必要が出てくるなど、結構な手間であったりします。なので出来る限り、ノイズフィルターを使わないで試験が終わるに越したことがないのです。

 

最初からノイズフィルターも用意してEMI試験をすれば追加費用は発生しない?

ここまで説明してもまれに食い下がってくる方もいらっしゃいます。

最初はノイズフィルターなしで検査したほうが良いことは分かったけど、最初からノイズフィルターも一緒に送って、不合格になったらその場でそれを装着してもう一回やれば、追加試験にならないのではないか?

 

という質問を受けたことがあります。

そこまでして追加試験費用を払いたくないのであれば、そもそもPSE試験などしないほうが良いとお伝えしたのですが、どうしても知りたいという質問がありました。

それに対しても明確な回答があります。

一言でEMI対策と言っても、まずは一度測定してみないと何に問題があるのかわかりません。例えば、基準値を大幅に超えてしまっているのか、比較的に少ない程度なのか、超えているのが全体なのか、高周波部分だけなのか、低周波部分もそうなのか。

 

などなど見るべきポイントが複数あります。それぞれの状態によって、使用するノイズフィルターも変わってきます。

そもそもノイズフィルターだって無料ではありません。むやみにハイスペックなものを用意してしまうと今後の生産コストにも響いてきます。結局、まずは数値を確認して、その状況に適したノイズフィルターを用いるのがベストなのです。

 

中にはノイズフィルターを付けなくても済む場合もある

当社のお客様で一度EMI試験で不合格になったけど、結果としてノイズフィルターを付けずに再試験をして合格になった事例も何件かあります。

それは電源配線をキレイにした整理した時です。サンプルということで、内部の配線を結構雑に処理する工場もあります。あまりに乱雑なので検査機関の方で少し整理したら、電磁放出も下がったということもあります。

こうしたことは専門家でないと判断・対応は難しいでしょうが、そうした場合もあります。そういう意味で、最初からノイズフィルターを付属させるということはあまり解決にならず、まずは一度測定してみる、というのが結局近道なのです。

むしろ、EMI試験は追加が発生するというあらかじめ想定しておいてもよいかもしれません。

 

何回対策してもうまくいかなかった事例

ようやく今回の本題ですが、お客様は国内の生産工場で、これまでは組み立てが主体であり、初めて開発から事業を行うということです。もちろんPSE自体も初めてということです。

モノは大型の民生品です。

EMI以外の試験は終了しており、EMIは専門の検査機関ではなく、上述した自治体の産業技術センターを利用することにしました。

 

いろんなノイズフィルターを何回も試しても数値が下がらない

具体的なデータは出せませんが、簡単に時系列を説明すると、ノイズフィルターを付けない状態で1回目試験。全体的に揺れ幅が大きく、高周波部分でもかなり基準値を超えてしまう結果。

次は、小さめのノイズフィルターを付けると全体の揺れはかなり収まり、高周波部分だけが基準値を超える結果。次は、高周波部分が強いという日本最高峰のノイズフィルターを付けます。これで、EMI試験は終了だと思っていました。しかし、結果は高周波部分が下がりきらない。。

またさらに、フェライトコアというノイズフィルターとは別に電源部分に装着するフィルターを追加。しかし、それでも下がりきらないという状態になりました。

 

”対策”ではなく”開発”がことの問題に

不合格が続き、お客様にも不安と焦りがにじんでおり、こちらとしてもそれは痛いほど伝わってきました。

ただ現実問題として、下がりきらない状態。しかし、電気用品である以上は必ず下がる(基準内に収まる)というのが原則です。そうなると、相談するべきは試験の専門家だけではなく、開発の専門家になってきます。

どのような設計や配線処理をすればよいのか、専門家を交えて教示し、実際にいろいろと測定をする必要があります。これは単純なPSE試験ではなく、製品開発の段階の話になってきます。

実はこの話はまだここまで(2023年8月6日現在)の状態なので、追加できる情報があればまたお伝えしていきます。

これからPSE試験を検討される方に覚えておいていただきたいのが、EMIというのはここまで難しい場合があるということとで、当社にではそれぞれの場合での経験値があるということです。

 

自分たちは素人だからという言い訳がしづらくなってくる時代

海外産の輸入事業者であっても、国内事業者であっても同じことが言えますが、「PSE(他の許認可認証も同様)のことはよくわからないからよろしくねー」というノリは通用しないということです。

当社では、試験を合格させるためのさまざまな役務は提供できますが、実際にその製品が合格できるかどうかは、まさに開発・設計部分から確認する必要があることがあります。そして、設計・開発と許認可認証はまた違った話です。

もちろん、当社では許認可認証を進めるために、出来る限りの事前確認等は行いますが、最終的な認証合格は製品ありきであり、生産工場の協力及び技術水準によるものであると考えておく、許認可認証の捉え方も変わってくると思います。

 

 

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