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PSE事業者になるために必須なEMC・EMI(電磁)に関する情報をリアルな現場からお届け!

 2023/03/26 EMI PSE 中国認証 事例 日本国内ビジネス 認証の原理原則
この記事は約 9 分で読めます。 2,004 Views

こんにちは。管理人の堀です。

代行会社の御社にお任せすればPSE試験は合格しますか?

 

幾度となく聞かれたご質問。
その際は下記のように回答しています。

まず、代行会社は(PSE)試験をスムーズに進めるための段取りを取る会社であり、合格を保証する会社でありません。もちろん、合格を目標にして行動しますが、合格するために大事なポイントは、工場の協力EMC(EMI)試験が通るかどうかです。

 

そうすると、皆さん一様に、EMC??となります。当然です。こんなマニアックなことを知っている人が稀で、普段の生活にはほとんど必要がない知識です。しかし、電気用品を扱うには知っておくべき話であり、これがわかっていないとPSEは通りません。

今回は、PSE試験で必須であり最重要項目であるEMC(EMI)について深掘りしていきます。ハッキリ言って、こんな情報はどこにも載っていないので、是非最後までお読みになってください。

そもそもEMC(EMI)とは何なのか?

EMC(EMI)については、ほぼこの記事に書いていますが、あらためて大事な部分をピックアップします。

中国・海外工場生産の電気用品PSE認証で失敗する一番の理由はEMC試験!?

その中にある引用や文章を再掲します。

EMCはElectromagnetic Compatibilityの頭文字で、JISでは電磁両立性と定義されている。
すなわち機器は「電磁的妨害源とならないように、かつ、電磁的な干渉を受けないように、あるいは受けても正常に動作する(両立する)」ように設計、製造されていなければならない。
図に示すように、電磁両立性はエミッション(EMI)とイミュニティ(EMS)に分けられる
エミッション(EMI)とは、ある発生源から電磁エネルギーが放出する現象である。

 

 

一方、機器からのエミッション(EMI)等により、周辺の機器で起こりうる性能低下や誤動作に対して、性能低下や誤動作を起こさずに動作できる機器の能力をイミュニティ(EMS)という。
EMCは学問分野を意味する環境電磁工学、電磁環境学の意味で用いられる。一方、技術用語としては、電気電子機器の電磁気的な問題に対して、整合性があるのか、両立しているのかという意味で用いられる。
具体的には、機器から放出されている電磁妨害波が小さく、外部からのある程度の電磁妨害波に対しても正常に動作し、かつ、機器自体で誤動作しないとき、その機器はEMCを有するという。電磁両立性と称されている。
引用:CEND.jp -EMC対策・ノイズ対策の総合情報サイト-_1.EMCの概要

 

簡単に言うと、ほとんどすべての電気用品は「電磁波」を発しており、その放出量が人間および周辺機器などに干渉しない(悪影響を及ぼさない)ように、設計・製造に工夫を施さないといけません。

日本でもJIS(日本産業規格)に定められた基準があり、PSE試験ではそれらを採用しています。ちなみに、EMI(エミッション)は、周辺に電磁波での周囲への放出と、電源プラグを通じて電線ネットワークを介して放出の2種類があります。

なお、余談ですが、EMS(イミュニティ)はPSEの検査項目に含まれていません。つまり、周囲からの電磁波による製品への影響有無に関しては、PSEでは問われません。しかし、PSE(法律的)では不問ですが、納入先の事情や製品内容によって、自主的なイミュニティ検査が求められる場合もあります。

EMC(EMI)の知識なんかは自分には関係ないと思う方も、実際にはその通りなのですが、ただ自分自身の身体に悪影響を及ぼす可能性がある、という観点では覚えておいて損はない知識です。

いずれにしても、EMC(EMI)はPSE試験ではかなり重要項目として取り扱われています。なお、PSE試験に登場するのは「EMI」ですので、表記は「EMI」で統一いたします。

 

中国(海外)製品、初めて電気用品を作る国内事業者はEMIが最難関

こちらも上記のリンク記事と重複する部分もありますが、要するに、設計者が日本のPSE試験で求められるEMIの技術基準を理解していないということがその理由です。

例えば、中国やアメリカなどでは日本とEMIの基準が違うので、元々、当該国向けに作られている製品を日本に輸入する場合は、EMIを含めて日本仕様に変更する必要があるかもしれません。

ちなみに、ヨーロッパ(CE認証)と日本は技術基準が似ているので、ヨーロッパ向けに作られている製品は、日本のEMIを一発合格する可能性は高くあります。

他方、日本国内産の場合、日本の技術者であれば日本のEMIは理解していると思いがちですが、実のところそうでもありません。大手電機メーカーの技術者であれば当然理解しているでしょうが、初めて電気製品を設計・生産するようなところではEMIもよくわかっていないことが多くあります。

組み立てをするだけでも一苦労で、EMIまで計算に入れることは難しいという方も少なくありません。

そして、一番厄介なのは、PSE試験においてEMIはまず一番最初にやる試験項目であることです。現状の製品状態でEMIを確認する必要があり、電気配線など製品構造に変化があるとEMIもイチからやり直し。

PSE=EMI→構造試験という大原則の流れがあります。

 

PSE試験に出す前に事前のEMI測定はできないのか?

EMIが難しいことを説明すればするほど、よく言われるのが、

あらかじめEMI試験をしてから、あらためてPSE試験をすることは出来ないのか?

ということ。

できる限り、不合格を避けたいお気持ちは痛いほどわかりますが、実はこれはあまり意味がなく、また物理的に不可能なことでもあります。

まずそもそもとして、EMI測定設備は大変高価であり、一企業が保有することは難しくあります。結局、設備を保有している検査機関を利用した方が早いです。

また、EMIは測定してみないと正直なところ、結果はわかりませんので、一度そのまま測定に出して合格になってしまえばそれに越したことはありませんし、例え不合格だとしても測定結果が出てくれば対策が立てやすくなります。

大事なことは、仮にEMI試験で一度不合格になったとしても、それでPSE試験が強制終了になるわけではなく、追加費用が掛かるとしても対策を立てて次回試験に挑めばよいだけ。怖がる前に、EMIは失敗する可能性が高いことを見越して、対策を立てられるリソースを組んでおくことです。

EMIを事前に確認するために、それだけを単発で検査機関に委託すれば余計に高くなってしまうので、PSE試験のメニューの一つとして組み込んでおいた方がコスパは良いです。

 

リアルなEMI測定の現場

言葉でEMI測定を説明していますが、実際にどんなことをやっているのか画像でご紹介します。写真は、検査機関ではなく地方自治体の産業技術センターに製品を持ち込んだ際のものです。製品本体は見えないようにしています。

現場の風景

EMI検査室入り口、ノイズが一切入らないように超厳重

 

EMI測定をする為に各種機器、これらと製品を接続する

 

製品の出力コードと測定器のコードを繋げる(技術者による作業)

 

繋がった状態

 

製品の定格出力情報が測定機械に反映

 

検査員によるモニターチェック

 

測定結果(一部抜粋)

 

真ん中の赤い太い線が基準値、今回ではそれを大幅に上回ることが判明しました。試験は不合格。対策が必要になります。EMIが正常の製品では、一般的に境界線よりかなり低い位置で、一定数値で均等になります。この場合では、改善が求められます。

 

これだけのことをやっているのだからどうしても試験費用は安くならない

EMIの再試験をすることになった場合、お客様から「高い!」と言われたことは数知れず。もちろん、そのお気持ちはわかりますし、当方もお客様の立場であれば同じことを言うと思います。

しかし、それはEMI測定の現場でどのような作業が行われている知らない為であり、こちらの情報伝達不足によるものであるとも痛感しています。

EMI試験の現場では、上述したような検査員の作業が発生しています。決して、無料でワンタッチで出来るものではありません。DXや自動化が叫ばれる昨今において、属人的で非効率な世界であることは当方も感じていますが、現状ではどうしようも無いのも現実。

これがモノづくりの世界の一側面でもあります。つまるところ、電気用品を(PSE試験をして)正規に販売するにはこれだけの手間がかかるわけで、それが周り回ってユーザーの安全性に繋がっている事実があります。

他社の攻撃にもなってしまいますが、そうした中で、検査員の報酬・給料などを考えたら格安PSEなどはあり得ないわけで、そんなものを頼んでしまったら、そもそもちゃんと検査をしてくれているかどうかも怪しくなってきます。

 

EMI測定不合格の場合の対策は○○を付けるのが一般的

最後になりますが、EMI試験で不合格になってしまった場合のリカバリー対策としては、○○を製品内部に取り付けることが一般的です。

○○の写真

 

ただ、どういった○○を付けるのか、製品内部のどの辺りに付けるのかは、設計の問題であったり、技術者のノウハウなどがかなり重要になってきます。

電気用品を取り扱うということは、実はこれだけのことが必要でかなりハードルが高そうにも感じるのですが、実際のところ仕組みさえ理解してしまえば、検査機関にもいろいろ指示が出せるようになり、自身でコントロールしていくことも可能です。

試験内容は丸投げしたいというのが本音でしょうが、相手が丸投げしても大丈夫なところなのかどうかを見極めるためにも、事業主として最低限の知識は本メディアで勉強するようにしてください。

 

 

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