PSEマーク、PSC、電波法(技適)など、計画より認証が遅れてぶち切られた当社実例
こんにちは。管理人の堀です。
前回記事で認証が遅れる根本的な原因は生産工場にあり、さらに言うと、工場の協力をしっかり得られていない依頼主にもその原因の一端があることをお伝えしました。
当社では中国工場とネイティブで話が出来ますので、その点だけを考えてもかなりスムーズに認証が進められることは確かですが、それもあくまで工場が認証に協力的であることが前提です。
工場が認証に対して全然ヤル気が無い場合に、それを振り向かせるのは言語が通じる以前の問題であります。
なお、認証が遅れる場合には数か月、下手をすると1年単位でタイムラグが生じてきます。
その他にも、検査機関の書類ミスや繁忙、簡単な判断ミスなどありますが、実際のところそれは数日の誤差程度ですので、そうした許容範囲も認められないという事業者の方は、認証という行為そのものが合っていないようにも感じます。
また、認証が必要な製品においてあまりスケジュールを詰め込んだ販売計画を立てているとそれはどうしても狂ってしまう可能性はあります。どうしても急ぐ場合は、100%工場の協力を得られるようにしておいてください。
こう言ってしまうと、認証代行の当社は何もしていない印象を受けられるかもしれませんが、当社のコアな仕事は認証代行なので、工場に対して認証に必要な技術書類やサンプルの説明を行い、一緒に認証を進めていくことです。
なので、基本的には工場に対して、協力を要請することは当社の仕事外になってしまいます。
もちろん、そうは言っても、出来る限り工場が協力してくれるように連絡を行ったり、スムーズに進められるような案を出したり、依頼主の方に逐次のご連絡をして必要であれば工場にプッシュを行ってもらったりをしています。
自画自賛のようで恐縮なのですが、実はこの部分を担うだけでもかなり画期的なサービスでありまして、ニッチなビジネスである分、なかなか比較対象がないというのも事実です。気になる方は、是非競合を調べてみてください。
しかしながら、日本の発達したサービスのように、注文したらその後何もせず決まった日時に商品などが届くというものに慣れてしまっていると、なかなか0→100とならないことに理解がされないことも多いという現状があります。
そうした状況を踏まえながら、今回は、認証自体は最終的に終わったけど、当初の予定より遅れたということで依頼主が切れて最後は(一方的に)喧嘩別れとなってしまった当社実例をご紹介したいと思います。
決してこの内容で当社に対して同情して頂きたいということでもありませんし、当社の言い訳を聞いていただきたいということでもなく、認証を行うということにどのような注意点があるのか、ケーススタディとしてご参考にして頂けたらと考えています。
Contents
当初は実質6週間ほどの認証期間を予定していた
とあるベンチャー企業の若い重役担当のAさんという方から、業務で使用・販売する製品の電波法認証を行いたいというご相談を頂きました。
生産工場は例によって中国工場なのですが、Aさんはかなり中国語が堪能ということで、工場に対しても技術資料の開示要請などを積極的に行ってくれていました。
先方としては、初めての電波法認証になり、工場がその実力・能力を有しているかもわからないので、途中で資料提出ができなくなるようであれば、そのまま認証はやめるということも考えていたようです。
当社としても、途中でキャンセルなどになるのもいろいろ大変ですので、最初の部分はお付き合いする感じで進めていましたが、どうやら工場は電波法認証の経験もあるようで、書類提出には協力してくれていました。
また、工場が理解できない書類などについては、こちらで書類の見本になりそうなものをネットで見つけて提供したりしていました。
どうにか書類準備が進む中で、後はサンプルだけということになり、Aさん(の会社)と正式な契約を結ぶことになりました。
その際に、Aさんから認証期間を尋ねられたので、何事も無ければ6週間程度、ちょっと先に中国の連休があったのでそれまでには終われるようにしたいとは伝えていました。
前回記事でも書いたように、この何事も無ければというのが今後の大きなポイントになってくるのでした。。
技術資料は順調に揃い始めて、いざ試験を開始したら、、、
そしていよいよ満を持して電波法認証の為のテスト用サンプルということで、工場から検査機関にサンプル提出がされました。
この時点までは依頼主・Aさんはもちろん、当社も順調に認証が進むと思っていました。
しかし、いざ始まってみると、即不合格!の連絡。
さすがに私も驚いているところに間髪入れず、Aさんから山のように連絡が入ります。
何で?何で?何で?この先どうなるの?
製品の販売スケジュールが決まっている中、Aさんとしても受け入れがたい事実だったのでしょう。
こういう時、認証代行会社としては、お客様の立場に寄り添いながらも冷静に事実確認をする必要があります。そして、技術者経由で検査機関の見解を聞くと、実は単純な話で、何と工場はヨーロッパ向けのサンプルを検査機関に送ったとのことでした。
日本とヨーロッパでは使用帯域(周波数)が違いますので、それでは日本の電波法認証は試験することすらできません。すぐに周波数を変更したサンプルの作成を依頼することになりました。
この事実を知ったAさんからは、
「検査機関・代行会社(上海の技術部門)は日本の電波法のサンプルを用意しろと言わなかった、そちらの落ち度だ」と言い始めます。
一方で、パートナー(技術者)の意見としては、
「日本の電波法試験をするのだから、日本用のサンプルを用意するのは当たり前。むしろ、依頼主が工場としっかり本業務についてコミュニケーションが取れていないのも原因だ」と反論します。
この段階で、両者が認証実務以外の部分で揉めるのは得策ではないと感じた私は、大事なことは互いが協力することだ、と伝えて、何においても工場にサンプル再作成を急いでもらうことにしました。
実際のところ、私個人の意見としては、両方の言い分はわかるのですが、恐らくですが、この段階で工場はあまり乗り気でなく、サンプルを提出するのを面倒くさがっていた印象もありました。
工場もかなり繁忙だったようで、書類くらいは出すけど、サンプルは後回しという雰囲気があったようにも思います。
その段階では日本用のサンプルを用意してと言っても腰は重そうなので、とりあえずサンプルを送れという検査機関の言い分は、長い目で見ると間違っていない判断だった感じています。
結果的にヨーロッパ向けのサンプルだったというオチはあるのですが、まずは認証を動かしたという意味で検査機関の判断は正しかったと感じており、いずれにしても一回はサンプル不合格になる運命だったのではないか、と私は感じています。
もちろん、Aさんにとってはたまったものではないと思いますが、こうした工場の当たりはずれ・タイミングだけはコントロールできない部分はどうしてもあるのが現実でもあります。
中国の連休と工場の繁忙などによりサンプルはどんどん遅れる
サンプル不合格の理由が判明し始めた頃には、中国全体が休みモードに入り始め、当然工場も休み体制になるので、サンプル再作成は休み明けになるという連絡がありました。
Aさんとしては、最悪の事態ということになってしまっているので、しきりにこちらの責任を仄めかす内容のメールを再三送ってきたり、少しでも何とかしたいのか試験後の流れを幾度と質問されました。
しかし、正直なところ、(海外検査機関による)電波法認証に関しては、認証機関が直接日本の総務省に申請するので、実際のところ依頼者(申請者)自身はやることはありません。認定書のデータを受け取っておしまいです。
そう説明をしているのですが、認証機関が総務省に申請する際のメールに自分もccに入れて欲しいなど、今までどのお客様からも言われたこともないような要求をされたこともありました。
それはさすがにビジネス上で不可能なので断りましたが、Aさんの元々の性格なのか、検査が当初予定より遅れているために何かしないと気が済まないと感じていたのかわかりませんが、数々の申し出に技術者側も少し辟易し始めていたのも事実です。
一回目のサンプルが不合格だったという部分が大きいですが、いくら説明しても頭で理解できても心で納得できない、というところだと感じています。もちろん私がAさんの立場であれば、確かにそう思ったかもしれません。
しかし、いずれにしても現実としては仕方ない状態が続きました。
検査機関と工場の意思疎通の遅れにより検査自体も遅れる
休み明け1週間くらいでサンプルは提出するという話でしたが、結局のところ工場はそれから約3週間ほど経ってようやくサンプルを提出してくれました。
Aさんとしては、イライラが募るばかりだったでしょうが、さすがに工場がサンプルを作成している間はどうしようもないので、連絡もほとんどありませんでした。
そして、ようやく試験再開。これでもう大丈夫かと思っていたら、なんとまた不合格。。
当然ながら、またAさんから矢のようにメール・電話が相次ぎ、私としても検査機関に何か問題があるのではないかと思うほどでした。
Aさんからは、検査機関が無駄な資料提供をしているという話もありましたが、検査機関も多くの仕事を抱えているので無駄な仕事はしないのが大前提です。
聞いてみると、不合格を言い渡された工場が自分たちの正当性を主張していたので、では確認の為にその根拠となる資料を見せて欲しい、という流れだったようです。主張の正当性を見るために資料を確認するのは当然の話です。
この辺も理論より感情が先立ってしまっている状態でした。
それでもう一度、検査以前の機械性能などを確認したところ、当該製品は2つのタイプに分かれており、タイプαでは○○周波数、タイプβでは△△周波数となっており、当該製品はタイプβであるところ、検査機関はタイプαと捉えており、それによって求められる周波数の認識が違っていたということが判明しました。
結果、回りまわって試験は合格となりました。
Aさんから、試験合格は喜ばしいが検査機関の判断ミスによって1週間ロスしたという主張がありましたが、
一方でパートナー(技術者)からは、認証における1週間などは許容範囲でしかないし、そもそも依頼主・工場はαβの違いを把握していなかった、本来であればαβの違いを伝えたうえで試験に臨むべきではないか、と再び平行線になってしまいました。。。
正直なところ、私自身も当該製品の2タイプについては、2回目の試験直前まで知らなかったので、自分としても落ち度を感じるところもありました。しかし、いずれにしても無事に試験は終わり、残すは書類整理などの作業のみとなりました。
いろいろ問題があったので検査機関も念入りに確認していたら、それも遅れと言われる
検査機関としても、今回は様々な事象があった案件であり、どうしても簡単に手放せないということで認定書発行までに通常の倍近くの日数がかけて確認をしておりました。
検査機関の対応もわかるのですが、これに関しては、私自身、特に一番問題だと感じたのは、認定書を発行すると言った当日になって、やっぱりもう少し時間が掛かるというタイムコントロール意識の欠如です。
お客さんを散々またしているんだから、少しでも早くやればよいのにと思うのですが、それはやはり日本人と中国人の感覚の違いがあるかもしれません。
ただ、人種差別だと指摘されることを覚悟で言うと、この辺は中国人の仕事だから仕方ないのかなーとも思ってしまいます。日本人って良くも悪くもこういうところはすごく生真面目で、ズルズルと締め切りを遅らせる感覚はあまりないと感じています。
いずれにしても、Aさんからのクレームを一身に浴びるのは私の役割なのですが、なんだかんだでようやく認証終了・認定証の発行をする事ができました。
最後に反省会を開きたいと言われ、こちらの要望を伝えていたらぶち切れられて終了
認定証のデータ(海外検査機関の場合、認定書はPDF発行のみ)をAさんに送る際、紆余曲折ありながらも、本当に数多くのやり取りをしたのも事実ですので、当社レビューを頂けないか聞いてみました。
Aさんとしても、次の案件も考えているようであり、今回の案件の反省会のようなものを開きたいと考えている、ということでした。
つまり、その反省会に付き合えばレビューもしてくれる、というところです。
正直なところ、クリティカルな話としては、「工場の対応」に尽きるのがこちらの意見であり、その説明はしていたのでAさんとこれ以上何か話し合うことはない、というのが本音でした。
ただ、Aさんとしては、こちらに責任を感じさせたいという思惑・執念があったようでもありました。
いずれにしても最後くらいはキッチリと話し合いをした方が、お互いに後腐れも無いと感じ、反省会に付き合うことを了承いたしました。
しかし、その日が近づくにつれ、反省会に向けて資料を作って欲しい、1時間は時間を確保して欲しいと言われたので、資料は作らない・30分のみなら付き合うと返事したら、
「その内容では次回に向けた改善ではできないので、レビューもしないし次の仕事も無い」とメールでぶち切れられた終了となりました。
私としては、元々気が進まない反省会だったので問題ありませんし、こちらのスタッフもAさんとは相性が悪いと感じて辟易していたので、むしろ次の仕事もいらなかったというのが真相です。
というか、今回試験が長引いたことによる追加料金もあると伝えていたのに、それはスルーされてしまったという気持ちがなくもない、というのが率直な感想です笑。
以上で今回のお話を終わります。
冒頭に申し上げたようにこの内容は当社を擁護するモノでもありませんし、ましてや依頼主を責めたてるモノでもありません。やはり、当初予定していた認証が遅れてしまったことに対する、ご苦労は相当なものであっただろうことは想像に難くありません。
ただ、ビジネスをするうえで全体の流れを把握するということはとても重要かと考えています。
この話をお読みになられて、当社へのご相談・ご依頼を考え直すという方もいらっしゃるかもしれませんし、一方でこういった経験があるからこそ見えづらい認証ビジネスのポイントがわかっていたり、もしもの際のリカバリーの仕方もわかっているということで、むしろ相談しやすいという方もいらっしゃるかもしれません。
そのご判断はお任せしますが、当社では出来る限り「認証ビジネスの見える化」をしていきたいと考えており、それが一社でも多くの認証ビジネスへの挑戦につながると思っています。
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