企業の認証担当者向け、PSE、PSC、電波法など1Day事故事例解説
こんにちは。管理人の堀です。
以前、PSEに関するモバイルバッテリー、自主検査について書きました。
前者は電池事故の多発によってモバイルバッテリーのPSEが義務付けれた話、
後者はPSE検査終了後、出荷・販売に伴い製品検査を自ら行い、その検査レポートを保管することを義務付けられている話、
です。
PSE、PSCなどは製品の危険性があるものに対して、必要な技術基準および生産後の検査・管理を徹底する法律を定めています。
生産自体は中国工場に委託しているとしても、自社で企画・開発・製造をコントロールしているメーカーであれば、生産後の管理を徹底することは容易に実現できるでしょう。
一方で、中国などの海外工場で生産されている製品をアリババなどで見つけて輸入しようとした場合、PSE・PSCの検査自体も大変ですが、認証後・生産後の自主検査はまた違った意味で大変になってきます。
まず第一に、工場に日本の基準による検査項目を理解させることは容易ではありません。
工場としても、せっかく購入してくれるクライアントの言うことを守りたいという気持ちはあるでしょうが、そもそも何をすればよいのかがわからない場合は多くあります。
現状では、輸入・販売側と生産工場側に意識の乖離があり、そうした点を結びつけるには当事者間の明確なルールが必要だと考えています。
今回のお話しのメインは、そのような状況がある中で、過去に起きたPSEやPSCに関する事件をおさらい的にまとめて見解を述べるとともに、当社で扱ったことのあるPSE違法問題を書きたいと思います。
PSEやPSC事件については、既に散々にネットで書かれていることなので、特に伏字などは使わないで表現したいと思います。
コーナン商事 PSE違反1623品目事件
大手ホームセンター・コーナンを展開するコーナン商事は、2014年(平成26年)に、近畿経済産業局より電気用品安全法に基づく行政処分が行われました。
この事件は、令和になった現在でも、PSE業務にかかわる担当者の中では話題となる事件の一つです。
詳しくは、貼付するURLにある近畿経済産業局の発表内容をご覧いただければと思いますが、大手企業でも法律内容を間違えるとこうした大事件になってしまう一例かと思います。
1.事案の経緯
コーナン商事が平成13年度以降に輸入した電気用品1623品目について、電気用品安全法(以下「法」という。)に基づく報告の徴収及び立入検査を実施した結果、法に規定する技術基準不適合等の違反が確認されたため、法第11条の規定に基づく改善命令及び第12条の規定に基づく表示の禁止を行うとともに、商務流通保安審議官名で厳重注意を行い、違反の改善状況について定期的に報告すること等を指導しました。
なお、コーナン商事は法の義務を果たしていない電気用品についてすでに販売を停止しており、自主回収を実施しています。
2.法令違反の内容
(1)法第3条: 3品目
<違反内容>輸入事業者として届出が行われていない電気用品の区分がある。
(2)法第5条: 797品目
<違反内容>届出事項の変更の届出が行われていない。
(3)法第8条第1項: 88品目
<違反内容>技術基準への適合義務を果たしていないものがある。
(4)法第8条第2項: 1015品目
<違反内容>自主検査の記録の全部又は一部が保存されていない。自主検査の方法が法令で定める方式ではない。 等
(5)法第9条第1項: 319品目
<違反内容>特定電気用品の適合性検査の証明書もしくはこれと同等なものが保存されていない、もしくは有効期限切れである。 等
(6)法第10条第2項(表示): 257品目
<違反内容>PSEマークなし、会社名の間違い、登録検査機関の記載なしなど、法令で定める方式による表示が行われていない。
3.行政処分及び行政指導の内容
法令違反が確定した品目に関して、以下の行政処分(改善命令、表示の禁止)及び行政指導を行いました。
(1)改善命令
法第8条第1項違反に関して、法第11条の規定に基づき、以下の措置をとるべきことを命じた。
電気用品を輸入するに当たり、法第8条第1項の規定を遵守するための業務改善措置を策定し、これを社内に周知徹底するとともに、当該改善措置の実施を確保するための体制を設けること。
策定した業務改善措置について、平成26年7月31日までに報告するとともに、その実施状況について今後1年間、定期的に報告すること。
(2)表示の禁止
法第8条第2項又は第9条第1項違反に関して、型式ごとに違反の程度に応じて、1か月間又は3か月間、法第10条第1項の規定により表示を付することを禁止した。
(3)厳重注意
今後、同様の事態が発生しないよう、電気用品安全法の理解を深めるとともに、法令を遵守するための体制整備等、改善措置を徹底するよう厳重注意を行いました。また、違反が確認された電気用品については、違反状態が改善されるまで販売を停止するとともに、以下の事項について報告するよう指導しました。
法第8条第1項に関して、技術基準への適合状況が確認できなかったものについて、速やかに技術基準への適合状況を確認して、その結果について、定期的に報告すること。
法第3条、法第5条、法第8条第2項、法第9条第1項、法第10条第2項及び法第27条第1項違反の改善状況について、定期的に報告すること。
引用;近畿経済産業局‗コーナン商事株式会社に対して電気用品安全法に基づく行政処分を行いました
1623品目ってものすごい数ですよね。
これは、6年以上の前の話なので、今では何の問題もないでしょうが、他山の石とせずに、教訓として学びたいこととしては、こうなってしまったプロセスはわかりませんが、
結果として法令を遵守できなかったことに対して、
事業の存続が厳しくなることはもちろん、何よりもユーザーへ安全信頼が揺らぐ信用を損なってしまったことが大変大きいのではないかと思われます。
PSCでの事故事例および行政による勧告事例
一方、PSEの兄弟法令であるPSCについても事故事例や行政の勧告事例などをお伝えします。
どうしてこのような法令が存在しているのか、その大元を辿ってみると事業者として取り扱う製品が及ぼすユーザーへの影響を再認識することになるでしょう。
特にPSCは、ユーザーの生命にかかわるものであり、専門業者でないと輸入販売する機会もそうそうないでしょうが、一個の販売業者として、このような事例を認識しておいていただければと思います。
平成14年ジェット噴流機能付き24時間風呂(PSC)事故
浴槽用水循環器に入浴中に女児の髪の毛が吸い込み口に吸い込まれ溺死する事故が発生しました。
これをきっかけに、「浴槽用温水循環器」を消費生活用製品安全法の特定製品に指定するとし、以降、PSC対象となりました。
引用:JET(一般財団法人 日本電気安全環境研究所)_浴槽用温水循環器 適合性検査
大変痛ましいですが、新しい製品の登場で世の中が便利になる一方で、より快適に生活を送るために、安全基準というものの設定が大切になるということを痛感します。
PSE、PSCなどはこうした悲しい事故から、日々アップデートされていっている法律であると言えます。
PSCマーク付き石油燃焼機器の普及活動
多発していた石油燃焼機器の事故を防止するため、平成21年(2009年)にPSC表示する法案が施行され、経過措置として2年後の平成23年に完全義務化となりました。
具体的には、空焚き防止装置の設置義務付け、一酸化炭素濃度基準値遵守、カートリッジタンクのふたの改善、カートリッジ給油式に給油時消火装置設置義務付け、不完全燃焼防止装置設置義務付けなどが課されます。
また、また日経XTECHの記事では、PSC表示がされている石油燃焼機器(石油暖房機器)の累計出荷数が4000万台を突破したという記事があります。
こうした世の中の動きを確認しながら、自社でどのような製品を扱っていくか検討したいものですね。
参考:日経XTECH_「PSCマーク」付きの安全な石油暖房機器が4000万台突破
取扱注意!100円ライターもPSC対象
平成22年(2010年)から、たばこライター及び多目的ライター(点火棒)などがPSC規制の対象になりました。
背景として、子供のライター火遊びによる火災事故が多数発生し、死傷者も出ていること、また一方、欧米では子供がライターを簡単に使用できないチャイルドレジスタンス(CR)機能に関する安全規制が導入され事故防止に効果を上げている例を見習い、日本でも規制が導入されました。
それにより、国に対して事業届出を行った業者が製造・輸入する製品で、国の定めた技術基準に適合する等の義務を履行し、その証であるPSCマークを付けたものでなければ販売が禁止となりました。
具体的な規制対象としては、「ライター(たばこ以外のものに点火する器具を含み、燃料の
容器と構造上一体となっているものであって、当該容器の全部又は一部にプラスチックを用いた家庭用のものに限る)」となっています。
引用・参考:社団法人 日本喫煙具協会_たばこライター及び 多目的ライター(点火棒)の 販売規制に関するQ&A
木製ベビーベッドの重大事故(PSC)
これはPSCの技術基準をクリアしたベビーベッドでも起こりうる事件ですが、PSC対象になっている製品はこうした事故も想定されます。
優良で技術基準を満たした日本企業でさえこのような事件が起こるわけで、日本の法令を理解していない外国事業者などの販売は断固として拒否する必要はあるかと思います。
引用:独立行政法人 国民生活センター_木製ベビーベッドの収納扉が不意に開き乳児が窒息する重大事故が発生!
PSE製品回収事件(当社事例)
当社のお客様のお話しですので、あまり詳しくは書けませんが、このページをご覧の方には少しでも気を付けていただきたいという意味を込めて、内容をかいつまんでお伝えさせていただきます。
当社にご相談いただいた際、その会社様は、ACアダプター(直流電源装置:PSE特定電気用品)のPSE表示不備について経済産業省から業務改善命令を受けた、ということでした。
どうやら、購買担当者(会社の重役が直接担当)が中国で製品を購入して、それに使うACアダプターも購入していたとのこと。
ただ、ACアダプターそのものにはPSEという表示があったのですが、輸入事業者としてのちゃんとしたPSE手続きを行わないまま販売をしており、経産省から通達がありました。
しかし、経産省の通達に対応するにも社内にPSEなどの認証に関する専門知識を有した部署・人間は存在せず。
イチから育成する時間・資金を考えると、アウトソーシングをした方が経済的だということで、当社にお声が掛かりました。
お呼び出し頂いて話を伺ってみると、ACアダプターのPSE特定電気用品の輸入事業者として必要な「副本」の入手を行っていないようでしたので、まずはそこからサポートさせていただきました。
一方で、製品回収の手続き、広報など、必要なことはすべて実行済みとのことでした。
会社様の製品サンプルを取り寄せ、工場からACアダプターを取り寄せ、電圧チェックなどを行い、正式に副本を申請。
副本入手後には、経済産業省(管轄の経済産業局)へのPSE輸入事業者届けのサポートもさせていただきました。
それと並行して、経済産業省へ提出する業務改善報告書の添削を行いました。
大変だったのは、当時の担当者の方は、PSE法に関する知識が少なくありましたので、このままだと経産省に通りにくいだろうと思われる文面が多数あったところ。
良い悪いは別として、法律条文に関する表現は慣れていない人からすると扱いづらく、一方で、専門分野の立場からすると、「わかっていない」と判断されてしまいがちです。
その点、当社ではそれこそ幾度となく条文を読み込んでいますし、私自身が公的組織であるJETRO出身で、そうした条文表現には慣れておりましたので、適宜修正させていただきました。
そもそもその会社様は真面目に事業に取り組んでいらっしゃり、必要なPSE関連法をたまたま知らず営業してしまったのですが、見事にすべて挽回されました。
副本とともに業務改善報告書を提出して、無事に経済産業省からも今後の事業継続を認められたようです。
こうした問題と常に相対するのが事業者の使命だと思いますが、当然出来る限り事前に回避したいでしょうし、ユーザーの安全性を考えると、そもそも回避という話ではなく、始めた段階ですべてうまく回るようにビジネスを設計するのが大前提です。
当社では、最初期の段階からお手伝いすることが可能ですし、万一、上記の会社様のような状態に陥ってしまった事業者様のご相談に乗ることもできますので、その点についてもお気軽にご連絡頂ければと思います。
どうやったら認証を無事に進められるかの知識を学ぶことは大事ですが、その反面で、うまくいかなかった事例は、さらに理解が深まるかと思います。
今回の内容が、皆様の業務に活かされることを願っています。
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