消費生活用品安全法PSCレーザーの1号検査(ロット検査)の進め方について
こんにちは。管理人の堀です。
最近、Amazonで消費生活用品安全法(PSC)の基準を満たしていない、そもそもちゃんと検査をしていないレーザー商品の摘発が増えているようです。
その中で、AmazonからPSC試験結果などの提出を求められ、それが完了するまで出品停止措置になっている事業者さんから、PSC試験を代行してほしいというご連絡が多くを頂いています。
しかし、残念ながら、現在は、日本の検査機関による海外工場検査が停止状態となっています。
以前、約1年ほど前に工場検査が実施できない状況について書きましたが、何と実はまだ同じ状態が続いているのです。
記事の中では、海外工場検査はリモートワークでも対応可能、という経済産業省の見解があると書きましたが、一方で、それを実施する検査機関側は、安全性が担保できないためにやらない、という回答。
そして、国内に輸入した際のロット試験のみ対応するということですが、そのロット試験もなんでこんなに高いの?と目を疑いたくなるような見積り。
いろんな状況に挟まれ、結局、割を食っているのは真面目に事業をやろうと考えている事業者です。この辺は憤りしかありません。
そうした中、それでもロット試験をやりたい、正確に言うと、やらざるを得ないお客様がいらっしゃり、当社でロット試験の代行を引き受けることになりました。
あらためてロット試験の概要と進行内容などを、当社実例を用いてお伝えしていきます。
Contents
1号検査(ロット試験)と2号検査(サンプル・工場試験)の違い
まず簡単に当社作成図でPSCレーザーの試験の流れを確認しましょう。
PSC試験の大まかな流れは下記記事からもご確認ください。
なお、図中にある「基準適合確認」というのはサンプル検査のことで、「適合性検査」というのは工場検査のことを指します。
1号検査(以下、ロット検査)というのは、日本に輸入された製品の中からサンプル数個を抽出して検査機関が試験を実施。サンプルが日本の技術基準に適合しているかどうかの確認、提出された技術資料との照合などを行います。
これに合格すれば、残りの製品の国内販売が認められます。サンプルは分解されるので基本的に返却されません。
一方、2号検査というのは、所定数のサンプルを検査機関に提出し、それが合格した後は、検査機関の職員を生産工場に派遣して、工場の設備などを確認するというものです。
冒頭でお話ししていたのは、この2号検査が、検査機関の職員を海外派遣できないために取り止めになっているという話です。
なお、PSCレーザーの検査が出来る検査機関は、JQA(日本品質保証機構)とUL Japanのみとなっています。なので、海外工場の検査を海外検査機関に委託する、ということはできません。
なお、当社では、JQAでもUL Japanでも必要な検査実施を申し込むことは可能です。
ロット検査のメリット・デメリット
率直なところ、ロット検査のメリットは特段ないと思っています。
検査機関などは、(工場検査が無い分)スピーディーに検査が出来るという言いますが、ロット検査自体でも少なくても3か月くらいは掛かるので、あまりスピーディーとは感じません。。
また、作ってしまった在庫品も検査が出来ると言っていますが、そもそも「(PSC検査を意識せずに)作ってしまった」製品が、ロット検査であってもPSC合格するわけがありません。
一方、ロット検査のデメリットは、
・費用が2号検査並みに高い
・次回以降に検査がある場合はまた最初から試験をする必要がある
という点です。
費用が2号検査並みに高い
「工場検査しないんだからロット検査は安いのではないか?」というイメージがありますが、正直なところそれほど変わりませんし、対象サンプル数が多い場合は、むしろロット検査の方が高くなる場合もあります。
まさしく舐めてんのか!という感じで、PSC検査したくても出来ない状況を自分たちで選択しておいて、その試験料金が通常一般的に行われる2号検査並となれば、事業者としては全くメリットがありません。
次回以降に検査がある場合はまた最初から試験をする必要がある
これも致命的な話ですが、ロット検査はあくまで当該ロットのみが対象となるので、次回またロット試験などをする場合は、また最初から試験をしなければならないのです。
2号検査は、一度工場検査(適合性検査)までが終了してしまえば、その後は、PSC基準通りに生産をしていれば、3年間試験無用となります。
上記2点から、どう考えても2号検査が出来た方が良いですし、ロット検査のメリットは何もなく、正直なところ、ロット検査って何のために存在しているのか、良くわかりません。
そのような状況ですので、AmazonからPSC違反だと言われて相談に来られるお客様も、上記を説明すると、しばらくおとなしくしている結論に至ります。当然だと思います。
確かに何もしなければ何も問題は起きませんが、それでは経済はまわりません。
一方、それでもどうしても急がないといけない理由がある、ということでレーザーロット試験を依頼してきたお客様がいらっしゃいました。その事例を通して、ロット試験ってどういうことやるのだろうか?その辺をお伝えしていきたいと思います。
レーザーポインターを使ってセミナーを行う
ロット検査を依頼された背景と進め方
お客様は、既知であった台湾のレーザー工場より新商品を日本で展開して欲しい、と頼まれたようです。本来であれば、2号検査で進めたいというのは、お客様・工場ともどもの総意なのですが、コロナ禍でそれができないということで、いわば仕方なくですがロット検査を、選択することにされました。
検査を急ぐ理由は、クラウドファンディングです。
どうしても今月9月中に開始したく、期間中の10月~11月初旬にはPSC試験が終わっている必要がありました。
そうした経緯で当社にご依頼がありました。
今回いつもと違うのは、台湾のレーザー工場が日本語が堪能な上に、何回も何回もPSC試験をやった経験があるということで、当社の中国人パートナーは使わず、当社が届け出事業者の代理人として、検査機関(UL Japan)と生産工場を繋ぐ役割を果たしました。
正直なところ、当社が入らず、お客様自らが届け出事業者になれば良いのではないか、と提案もしたのですが、
PSCのことは全くわかっていないし、検査機関や工場の言うことが理解できない際に、誰にも聞けないのは不安
ということで、ご依頼を頂きました。
たしかに、進めてみてPSCラベル部分などで工場が勘違いしているところもあったので、その点はこちらから指摘できたのは良かったかと思います。
少し専門的ですが、製品サンプル以外に提出する資料の一覧です。
・取扱説明書、カタログ
・レーザー出力制御回路図
・製品仕様書
・レーザー仕様書
・レーザーmodule仕様書
・レーザー出力制御部のPCB部品配置図及びパターン図
・PSC銘板ラベル(データ)
・シリアルナンバー
・検査成績書(自主検査記録)
今回、経産省と検査機関で見解が違ったのは、「検査成績書(自主検査記録)」の位置づけです。
基本的に、自主検査というのは生産後に、製品の安全性を確認するための検査であって、例えば、ロット試験で500個のサンプルから数個をランダム抽出したものが合格ということであれば、残りもすべて合格品であると考えるのが妥当であるはずです。つまり、自主検査機記録は不要。
そうでなければ、サンプリングそのものの意味が無くなります。
その点を経産省に確認したら、その見解で問題無いという回答だったのですが、その旨、検査機関に伝えたら、全数の自主検査が為されているどうかがわかる資料を提出して欲しい、ということで譲りませんでした。
かなり憮然と感じましたが、工場は手慣れたモノでさっと仕上げてくれました。
レーザー温度計
試験結果はサンプル抽出より2か月後。。。
そして、無事にすべての資料を提出し、生産されたサンプルが日本に到着しました。本来であれば、検査機関の人間が在庫保管場所まで来訪するのですが、コロナ禍ということで結局リモートで、事業主が自らサンプリングしている場面を確認、それを自ら検査機関に送るという作業となりました。
これだったら、最初から、工場検査もリモートで出来ないのかな、という印象はあります。
オンライン上で検査機関立会いの下、倉庫に保管されているサンプルを抽出する事業者
そして、サンプル抽出後に出る試験結果は2か月後ということで、現在、結果待ちの状態です。
一方、依頼主のクラウドファンディングはすでに開始されており、初月で目標額を突破するなど絶好調の様子。
「堀さんのおかげでロット試験が出来て大変感謝している」というお言葉を頂き、当社としても満足しております。あとは、無事に試験が終わることを願っています。
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