ダイハツ不正問題から見るPSE違反に手を染めようとする事業者の悲喜こもごも
こんにちは。管理人の堀です。
2024年を迎えました。昨年も様々なニュースが目に飛び込んできましたが、「許認可認証」というテーマから考えると、やはり一番大きな話題は「ダイハツの認証不正」ではないでしょうか。
自動車業界には詳しくありませんが、「許認可認証」という点から考えると、電気用品(PSE)や電波製品(電波法)などと、自動車は通じるものがあります。
それぞれの分野に共通しているのは、それぞれの製品に課された許認可認証をクリアしないと、販売するそれぞれの国によって安全基準というものが存在し、それをクリアしていないと販売が行えないということです。
大手メーカーであればそんなものはいくらでもクリアできるというのが、当方の持論だったのですが、だって、認証基準がわかっていればそこから逆算してつくればいいだけなので。
輸入品販売する事業者だけが問題なのだと思っていたところ、実はそうでもない様子。
今回は、ダイハツの認証不正を題材に、PSE不正にならないように注意喚起をする記事を書いていきたいと思います。
Contents
そもそもダイハツの認証不正とはどういったものだったのか
ダイハツの不正について、端的にまとまった記事を引用してご紹介したいと思います。
ダイハツ工業の創業は明治40年(1907年)。日本の量産車を手掛けるメーカーとして最も古い歴史を持ち、軽自動車販売シェアでは17年連続1位を誇る。世界で178万台もの自動車を生産し(2022年度)、インドネシアでの生産台数、マレーシアでの販売台数でトップシェアを保持している。
そのダイハツにおいて23年4月、自動車の安全性確認試験で不正行為があったことが内部告発により発覚。その後第三者委員会を立ち上げて問題を調査していたが、12月20日に調査報告書の内容が同社から発表された。
報告書では、最も古い事例で1989年から不正が行われていたと認定。その後の調査によって、新たに25の試験項目で174件の不正が判明したという。結果として、同社が国内で生産・開発しているほぼ全ての車種における安全性試験で不正行為が確認され、ダイハツは国内外で生産・販売する全ての車種の出荷停止を発表するという前代未聞の事態へと発展している。
記事では老舗の名門企業がどうして不正に手を染めてしまったのか、という書きぶりになっていますが、許認可認証の分野に関わっている当社の見解としては、
①担当者の経験が浅く、必要な認証項目を熟知していない
②短納期・低予算ばかりを求められていて問題が発覚してもリカバリーが困難
③雇用の流動性が進み、愛社精神が欠如している
などがあるのではないかと思っています。
一つ一つを解説はしませんが、どれもこれもが身も蓋もない話になってしまうかもしれませんが、日本に限らずすべての生産現場で同じようなことが言えるかもしれないと感じています。
結局のところ、ユーザーの立場としては、事細かに製品に対する知識レベルを上げる必要があると言えるでしょうし、事業者に関しても規模の大小にかかわらず、責任者が現場レベルの業務内容を把握し、指示・管理を徹底することが求められる時代であると言えます。
丸形PSEはちゃんとやらない認証不正になる可能性もある
一方で、電気用品のPSE試験について取り上げます。
この話題も何度も取り上げていますが、同じPSEの中でも、特定電気用品(菱形PSE)と特定電気用品以外(丸形PSE)があり、両者のざっくり大きな違いは、経済産業省が指定した登録検査機関が検査内容を確認するかどうかです。
いわゆる菱形PSEは指定登録検査機関による検査・確認が義務付けられていますが、丸形PSEは指定登録検査機関の検査・確認は義務ではありません。
もちろん丸形でも指定登録検査機関に検査・確認してもらっても良いのですが、その辺は自由に検査機関を選ぶことが出来ますし、場合によっては工場が自らPSE検査を行うことも理論上では可能です。
但し、それは工場自らがPSE検査基準をすべて把握し、必要な設備を有し、設備の操作、試験内容を理解している検査員(検査担当者)が存在しているかどうかも重要なところです。
つまり、理論上では誰が検査しても良いことになっているのですが、物理的には検査機関でしか検査実施が出来ないのが実情です。実施出来ることが前提であり、日本の工場でもそれらをクリアするのはなかなか難しくあります。中国工場では尚更でしょう。
中国(・香港・台湾)の検査機関のすべてが日本のPSEを理解しているわけではない
中国国内には有象無象の多数の検査機関が存在しています。しかし、それらはすべてが日本向けではなく、ヨーロッパ相手やアメリカ相手、その他東南アジア諸国向けであったりします。中には、そもそも基準のレベルに達していないところもあるかもしれません。
もちろん、日本の法律を熟知した日本向けサービスをやっている検査機関もあるのですが、それらに辿り着く為にはやはり長年のネットワークなどがないと、探し当てられなかったりするのも事実です。
工場が日本のPSE認証をしたいと思っても、完全に対応出来る検査機関を探し当てることは出来ず、一部かじっただけの検査機関に依頼することが大半です。
そして、当然、工場自身も日本のPSEのことを熟知していない訳なので、よくわかっていない検査機関からの認定証・レポートをそのまま信じて、自分たちはPSE認証していると思い込んでしまっていると見受けられます。
つまり、事業者自身がちゃんと検査項目のなどの内容を把握していないと、自分ではちゃんと検査をしたつもりなのに、上がってきたレポート内容などをよく確認してみると、全然基準を満たしていないということも往々にしてあり得ます。
ポジショントークのようで恐縮ですが、結局のところ、当社のような代行会社になどを入れて、しっかり検査・確認をしないと、規模の違いはあるにせよダイハツの二の舞だと考えます。
認証試験のコストをケチる会社はすべてにおいて衰退に向かうと思っておりまして、そうした会社は遅かれ早かれ、市場からの退場を余儀なくされるでしょう。
自分で100%理解すること、自分でわからなければ専門機関を利用すること
これまたポジショントークのですが、ご自身でそれぞれの製品における固有の検査項目を理解せずに、中国工場・検査機関から提出された検査証明書だけを信じて、「これで大丈夫」と言い切る事業者の方は、こちらから見ると「何も知らない〇カ」にしか見えないというのが、正直なところ感想です。
いずれにしても、最優先にされるべきなのは、使用するユーザーの安全性であること覚えておいていただければと思います。・
不正が出来ないはずの特定電気用品の試験で不正をした検査機関も存在
経済産業省から指定を受けた登録検査機関による検査機関であれば、問題ないと思いがちですが、実は、十数年前に以下のような問題も発生しておりました。
検査を行わずに証明書を発行していたということで、経産省から登録検査機関として登録抹消となったようです。現在、その措置も解除され、あらためて登録検査機関になっているようですが、
当社の中国人認証パートナーにこの件について聞いてみたところ、
「私は、このように一度問題があった検査機関は使わないようにしている。いつまた、同じようなことをしでかすかわからないので」
と言っておりました。こういう言い方は中国人の方に失礼ですが、中国人にすらこういう方を言われてしまう日本組織は日本の恥でしかないというのが当社の見解です。
要するに、事業者の立場であろうと、検査機関の立場であろうと、一度やらかしてしまった過失は取り返しのつかないものであるのです。
インターネットが発達した現代においては、デジタルタトゥーのようにいつまでも不正の事実が閲覧可能になるわけなので、事業者の方は細心の注意が必要になるでしょう。
事業者自らもある程度の法知識を持つ必要がある
結局のところ、故意にせよ、本当に知らなかったにせよ、「(当社は)知りませんでした」という言い訳は成り立たないのが、経営の厳しさです。
担当者レベルで、「安くなりました!」と言ってきた報告を真に受けていたら、それが(会社の)終わりの始まりになる可能性は否めません。
そのリスクを取りたくないのであれば、最初から許認可認証が必要な製品を取り扱わないことが、経営判断として必要になってくるでしょう。
許認可認証は安くすればよい話ではないので、(その分、偽装・手抜きをされる可能性もあるので)未熟な担当者に任せるのではなく、トップダウンで行うか、それこそ信頼できる代行会社に委託するか。
新年早々にポジショントークのような記事でしたが、実は、許認可認証というのはそれだけ重要な業務であることをご認識頂ければ幸いです。
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