意外に知られていない食品衛生法検査の注意点についてリアルな実例から指摘します
こんにちは。管理人の堀です。
人間の口に触れる食品機器を輸入通関する際には、事前に食品衛生法試験をする必要があります。当社の場合では、電気(PSE)を使う食品家電(キッチン家電)において、PSE検査と食品衛生法検査をまとめて依頼いただくことが多くあります。
食品衛生法に関してはこちらの記事をご参考ください。
また、食品衛生法に関して、輸入通関がうまくいかなかった方のお話もご参照ください。
(3 日本では電気・電波・危険物の通関は簡単、問題は食品衛生法 部分)
上記記事でも書いていますが、日本の輸入通関の現場では、電気製品(PSE)、危険物製品(PSC)、Bluetooth、Wifiなどの製品(電波法)に関する取り締まりは厳しくありませんが、食品衛生法にまつわる製品のチェックはかなり厳格に行われます。
輸入事業者の方も、検査が終わったから一安心ということにはならず、輸入通関作業は別にあると認識していただく必要があります。
今回は、せっかく食品衛生法検査が終了しているのに、通関手続きを理解していないために作業が難航した方のリアルな実例をもとに、手続きについて少し詳しくお伝えしていきたいと思います。
Contents
輸入通関手続きに必要な「申請書」は事業者側で作成する
簡単に言うと、輸入事業者は(代行会社を経由して)検査機関に検査の申請を行います。そして、製品サンプルを提出するなどして、製品に使用される部品を確認、どの部品を検査するのか、そのサンプル個数などを確認していきます。
検査機関からは、必要サンプル個数が伝えられるので、生産工場から直接検査機関に言われたサンプルを送付してもらい、試験がスタートします。
そして試験が終了すれば、成績書(証明書)やレポートが発行されるので、実際に輸入通関する際に、図中にある「食品等輸入届出書」(通称:申請書)をとともに提出をすることになります。
ここでポイントになるのが、試験をしてもその成績書などだけではなく、申請書を提出することにあります。むしろ、申請書が主体であり、それを補足するのが成績書、レポートなのです。
そして、申請書は成績書・レポートと紐づけながら作成していきます。言うなれば、成績書など単体では書類の体裁を為さないことになります。
この辺を理解しておかないと、せっかく試験をしたのに成績書が機能していない!と誤解して、その他確認作業に遅れが生じることになります。
ちなみに、食品衛生法の対象となるのは、樹脂コーティングやプラスチック素材なので、金属に関しては対象外です。ただ、実際に輸入通関手続きを行う検疫所からは念の為の確認として、当該部品の素材確認を求められることもあります。
なので、輸入事業者としては、生産工場と協力しながら、食品衛生法対象・対象外を問わず、
製品に使われている一つ一つの部品についてある程度把握しておく必要があるのです。
食品衛生法検査は工場との密な関係構築が必要
これは他試験でも同じことが言えますが、特に、食品衛生法ではかなり綿密なサンプルや資料の提出が求められます。
例えば、食品衛生法では人間の口に触れる部分の部品提出が必要ですが、小さいモノであれば100個200個単位で要求されることがあります。
そんなに必要なのか!?とクレームを言ってくるお客様もいらっしゃいますが、これは決して当社が無理に算出した個数ではなく、検査機関が国の基準で決められた計算式で割り出したサンプル数です。
良いか悪いかはおいておき、日本の食品衛生法に関する厳しさは世界一です。中国などの工場からすると、日本の要求が理解できないということでかなり反発されることがありますが、いずれにしても日本の試験をする為には必要なのです。
一方で、提出された部品が製品全体の中でどこの部分で使用されるのかを示した展開図も必要となってきます。正直、きちんとした工場では自分たちの資料として作成していますが、いい加減な工場ではこうしたものを用意していないこともしばしばです。
そして提出(作成)を求めると、いとも簡単に「NO!」と言ってきます。
なお、試験自体はこの展開図がなくても終了できますが、通関手続き時には要求されるので、いずれにしても最終的には必要になってきます。ただ、どうしても提出できない場合は、検疫所との交渉になると思われます。
こうした資料は依頼主(輸入事業者)からすれば、工場は提出して然るべきと考えるでしょう。そう思うこと自体は問題ないですが、工場には工場なりの言い分があります。何故出せないのか?そういった部分をしっかりヒアリングしていきましょう。
大事なことは自分の言い分を通すことよりも、スムーズにビジネスを進めることにあります。
検査はあくまで検査、一番肝心なのは輸入通関業務
先ほどと重複しますが、重要なのであらためてお伝えします。
食品衛生法試験で発行される証明書、レポートだけでは輸入通関業務に必要な資料としては不足しています。一番肝心なのは、輸入申請書です。
言い換えると、証明書、レポートだけでは輸入通関できませんので、検査機関がいい加減なものを発行したと勘違いすることになります。この事実を把握しておかないと、余計な確認作業が発生することになり、輸入通関業務が大幅に遅れることになります。
そして、そのことは輸入事業者本人が把握しておかねばなりません。誰も教えてくれません。下手をすると、取引先(通関会社)も理解していないということもありえるのです。
つまるところ、ご自身を守るのはご自身の知識・情報のみ。
下記ではそうした事例をご紹介したいと思います。
通関業者に丸投げせず自分でもある程度の理解が必要
これは当社の事例ですが、試験代行をご依頼頂いたお客様からある日突然連絡がありました。
(依頼主)
試験成績書や部品リストが間違っているから修正して欲しい
正直、「そんなことがあるはずがない」と思ったのですが、通関会社からそのような指示があったということ。また、その他にも、あの資料が足りないとか、(食品衛生法対象外の)部品の情報が足りないなど、寝耳に水のような話のオンパレード。
そもそも試験成績書や部品リストなどは、厚生労働省から認可された検査機関が厳密に行っているので間違いがあるはずがありません。要するに、基準を決めている側の人たちが、その内容を漏らすということは考えられません。
いずれにしても、真偽を確認する必要があるので、依頼主の方には、
(当社)
「通関会社から通関手続きの際に必要となる『申請書』を提供してください」
とお伝えしました。すると、下記のような返事。
(依頼主)
「『申請書』はまだ作っていないようです。通関会社が手続きを行う検疫所に試験成績書や部品リストを見せたところ、このような指示がありました。早く成績書の修正や追加書類を提出してください」
先述したように、通関時には、申請書と試験成績書や部品リストを3点セットで提出しますので、申請書を作っていないというのは流石におかしいと思い、何度かやり取りしていると、依頼主の方から通関会社のメッセージを伝えられました。
(通関会社)
「自分は、○○検疫所の△△さんに全て確認しています。疑問があれば電話してもらって構いません」
という自信満々の内容だったので顧問に電話してみてもらうと、
(検疫所)
「あの通関会社の方は業務内容を理解していなくて本当に困っています。申請書も作らずに試験成績書や部品リストなどを見せて回答を求めてきてますが、こちらとしてもコンサルできないので、見せられて資料に対して少しコメントしたまでです。早く申請書を出してください。」
という回答。
こんなことがあるんだと唖然としましたが、依頼主の方には経緯を伝えて、通関会社の担当者を変更してもらうように進言いたしました。それ以降、当社への連絡はなくなりました。すべてうまく進んだのでしょう。
恐らくですが、業務内容を理解していない新人担当者が、社内で確認もせず、自分の仕事が正しいと恐ろしいまでの勘違いで業務を進めた結果だと推測しています。
あえてポジショントークを言わせていただくと、認証や通関業務などはかなり複雑ですが、当社は認証のプロとして不正確な情報は絶対に出しません。しかし一方で、特に会社の新人担当者が言うことは、決してそのまま鵜呑みにしないようにしてください。
そのためにも、事業者の方自身がある程度の業務知識を持つことは必要です。自分は素人だからよくわからないというのは言い訳にはなりません。
結局のところ、その新人のことは聞いて、当社の言うことは最後まで信用されなかったということは残念で仕方ありませんでした。
あらためて通関業務と検査業務は別物と認識しておこう
最後に繰り返しになりますが、食品機器の通関申請業務と食品衛生法試験は丸っきりの別物です。なので、代行を依頼するとしても、それぞれ別の会社を利用することになります。もちろん、両方まとめて受託できる会社もあるでしょう。
当社も、ご依頼されれば両方の代行を受託することは可能です。
しかし、通関と検査は別物ですので、通常はまずは検査代行業務のみを受託することになります。業務依頼をする場合は、まずはこの部分を認識するようにしてください。
間違っても試験代行を依頼したのだから通関手続きも一緒にやる、試験成績書だけで通関手続きができる、と思いこまないようにしてください。
これは決して試験代行会社のポジショントークではありません。
誰が何がやるのか?そこを理解していないと業務そのものが滞ってしまい、大事なビジネスに遅延が生じる可能性があるのです。
例えば、試験代行を依頼して、そのまま試験代行会社が通関手続きもすると思っていて、いざ輸入申請手続き時になって、試験代行会社に催促してみたら、「それはうちの仕事ではない」ということになれば、仕事がてんやわんやになることは必須。
業務の全貌が分かった際に、通関会社などに申請書作成を依頼していたらその分また時間がかかりますし、遅れれば遅れるほど保税倉庫にある荷物の保管料などが発生してきます。
食品衛生法試験や通関業務内容自体はそれぞれの代行会社に依頼すれば良いですが、業務全体でどのようなことが必要なのかはご自身でも把握する必要があります。
このページを読んだ方は、食品機器の一連の輸入業務に支障がないことを祈念いたします。不明点などはお気軽にお問い合わせください。
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