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中国工場でPSE検査前に一度で合格するようにすべてを事前把握できないか?という質問に対する「認証代行会社」としての回答

 2020/11/07 PSC PSE コラム 中国ビジネス 事例 認証の原理原則 電波法
この記事は約 13 分で読めます。 1,995 Views

こんにちは。管理人の堀です。

以前の記事「イチから大型電気用品の製造・PSE検査をすることになった場合に必要な7つのプロセス」で、中国工場でイチから製造させてそのままPSE試験までを行う流れについて書かせていただきました。

イチから大型電気用品の製造・PSE検査をすることになった場合に必要な7つのプロセス

 

今回はその続編として、認証における「代行会社」と「コンサルティング会社」の当社の立ち位置を明確に分けたうえで、「中国工場でPSE特定電気用品検査前にすべて必要な検査が把握できないか?」に対するご質問に回答していきます。

話は少し逸れるかもしれませんが、まずは当社のスタンスについて書かせていただきます。

当社は「認証代行会社(Certification Agent Service)」を名乗っており、「認証コンサルティング会社」ではありません。もちろん、認証コンサルティングも出来ますし、ほとんどの案件で認証代行の一環としてコンサルティングも実施しています。

正直言って、それでも通常の認証代行会社の域を超えてサービスを実施させていただいておりますが、決して当社では「コンサルティング会社」は名乗っていません。

その理由として、結局のところ、認証の可否を握っているのは生産工場だからです。工場がやる気になって主体的に、加えて日本の認証をよく理解して製品サンプルなどを作ってもらう必要があります。

もちろん、その為の説明などは十分に行いますが、最終的に求められるのは工場の主体性です。そこで、「コンサルティング会社」を名乗ってしまうと、言わば魔法使いのように工場に何でもやらせてくれると誤解されてしまうことを避けるため、当社は「代行会社」という立場を貫いております。

逃げのように聞こえるかもしれませんが、「コンサルティング会社」としてしまうと、正直現状の料金では全然足りません。

また工場が主体的にやってくれればコンサルティングするまでもなく、代行会社として少し協力すればよいだけなので、依頼主様としてもリーズナブルに認証が進められるのです。

この前提をもとに、話を戻して、特にPSE特定電気用品(菱形PSE)においての前出のご質問に回答していきたいと思います。

 

試験サンプルを用意するのはあくまで工場の仕事、そのクォリティも工場の責任

そもそものところとして、認証経験を有していない方から、「試験は実施すれば合格できるものなのですか?認証が失敗したら返金してくれるのですか?」という質問を多く受けます。

最初に回答を申し上げると、実施すれば必ず合格できるものではないですし、こちらがミスリードをしていない限り返金は行いませんが、基本的にミスリードは致しません。その自信はあります。なお、工場がサンプルを出し続けてくれる以上は「失敗」はあり得ません。

当社が「代行会社」を名乗っている大きな理由の一つとして、サンプルを作るのはあくまで工場であり、当社はそのアドバイスをする立場である、という点です。

コンサル会社となってしまうと、工場の首根っこを摑えてでもさっさとサンプルを作らせる必要が発生してしまいますが、膨大で多種多様な中国工場に対してそんなことは不可能ですし、そんな時間も労力もありません。

あくまでこちらは協力するように促すのみであります。そして、認証試験が無事に実施できるかどうかは工場の協力次第であり、工場にやる気を持って取り組んでもらうためには、やはり依頼主が工場としっかりとした関係を築くこと何より重要です。

というわけで、「試験は実施すれば合格できるものなのですか?認証が失敗したら返金してくれるのですか?」という質問は、既に自社の責任から逃れようとしている内容になってしまうのです。

もちろん、認証の枠組みを知らない方に最初はそのことを簡単にはご説明しますが、お金を払ってさらに工場に対して協力を取り付けるのも自社の仕事とするのは納得いかない、と思う方は、申し訳ありませんが、認証という行為はこの時点で止めた方が良いでしょう。

また、工場に対してPSE、PSC、電波法などそれぞれの認証でどのようなサンプルが必要になるかの説明も十分に行いますが、実際に手を動かして作成するのは工場です。

ハッキリ言って、当社はどういったものを作れば良いか基本的に把握しており、ポイントは工場がそれを再現できるのか、という点です。

サンプルのクォリティ自体は当社では担保できませんで、そういう意味でもあくまで当社は「代行会社」なのであります。

中には、認証を前提とした設計時に簡単なアドバイスはさせていただくことも有りますが、あくまで工場が主導で生産して認証を迎えた際に、試験やり直しなどが生じると当社の責任であると言ってきた会社様もいらっしゃいましたが、基本的に製品のクォリティは工場の責任であり、強いて言えば依頼主様の責任なのです。

当社は認証代行会社の立場で必要なアドバイスはしますが、コンサル会社ではないので発言に強制力もなく、それを自ら実現するのは工場の仕事です。

試験が一度で終わるクォリティまでのアドバイスが必要であれば、それはコンサルティングとなり、今の当社の費用ではとても間に合いませんし、そうすると結局、再試験するよりも費用は高くなってしまうのが実情です。

機械の開発ってこれだけお金が掛かること、覚えておいていただければと思います。

 

複雑な試験は一度で全部終わらない、という認識を持っておいた方が無難

日本人特有の話なのか、海外も含めた話なのかは分かりませんが、基本、ビジネスにおいて追加費用というものは嫌われます。

当然、私もそのように思います。何をするにしても基本的に追加費用などは支払いたくない、というのが普通の感覚です。

しかし、決して良いことではないとは思っていますが、認証の世界(機械設計の世界)ではそれはどうしても難しい話なのです。

特に、PSE電気用品においては、一個の機械に本当に様々な部品やパーツなどが施されており、またそのそれぞれに対して試験が行われます。日本の法律でそのように定められているのです。

生産する側ももちろん最善を尽くして作っていますが、最初からそのすべてをPSEに準拠したように生産することはまさに神業の領域であり、それこそPSE試験をしながらダメなところを発見して、一つずつ対策をしていくという試験スタイルの方がむしろ賢いやり方だったりするのです。

もちろん、当社でもPSE特定電気用品試験などでは事前に製品部品リストを確認して、必要な資料や部品の確認をしたり、どういった試験が行われるかの説明を工場に行ったりします。

しかし、だからと言って、明らかにダメなモノ、例えば日本のJETコンセントを使っていない以外はまずは一度試験を受けさせるようにしています。

それで検査機関のフィードバックを聞きながら、工場に対策品の指示を出し、また新しいサンプルで試験に臨む、そうしたことの積み重ねで一つの試験が終了していくのです。

基本的に一回の試験で全てが完璧に終わることはないと思っていた方が良いでしょう。

事前にすべてをクリアするまで試験を行わないというスタンスを取っていると、確認はいつまでも終わりませんし、そしていつまで経っても認証が進まないという状況になってしまいます。

繰り返しになりますが、基本的になるべく追加費用などは払いたくないというのはビジネスでの共通の考えであり、当社も勿論そのように考えますが、現状の認証の世界ではそれが大変難しくあるのですが事実です。

それがどうしても嫌だというのであれば、最初から認証が必要な製品を扱わないことが賢明であるというアドバイスしかできません。

一方、そもそも何故認証をするのかと言えば、安心・安全な製品(電気用品)を消費者に届けるためであり、試験をクリアできないというのは消費者に対して危険があるということです。是非、その点だけは忘れないようにして頂ければと思います。

 

一度で試験が終わらない事例①EMC(電磁両立性)試験

EMCなどは普通に生活しているとあまり馴染みのない言葉ですが、実は電機の世界では大変重要な話であり、またPSE試験においてかなり重要な項目となります。

以下、専門サイトから概要を引用いたします。

EMCはElectromagnetic Compatibilityの頭文字で、JISでは電磁両立性と定義されている。

すなわち機器は「電磁的妨害源とならないように、かつ、電磁的な干渉を受けないように、あるいは受けても正常に動作する(両立する)」ように設計、製造されていなければならない。
図に示すように、電磁両立性はエミッション(EMI)とイミュニティ(EMS)に分けられる。エミッション(EMI)とは、ある発生源から電磁エネルギーが放出する現象である。

一方、機器からのエミッション(EMI)等により、周辺の機器で起こりうる性能低下や誤動作に対して、性能低下や誤動作を起こさずに動作できる機器の能力をイミュニティ(EMS)という。

EMCは学問分野を意味する環境電磁工学、電磁環境学の意味で用いられる。一方、技術用語としては、電気電子機器の電磁気的な問題に対して、整合性があるのか、両立しているのかという意味で用いられる。

具体的には、機器から放出されている電磁妨害波が小さく、外部からのある程度の電磁妨害波に対しても正常に動作し、かつ、機器自体で誤動作しないとき、その機器はEMCを有するという。電磁両立性と称されている。
引用:CEND.jp -EMC対策・ノイズ対策の総合情報サイト-_1.EMCの概要

 

簡単に言うと、ほとんどすべての電気用品は「電磁波」をというものを発しており、それが人間および周辺機器などに干渉しない(悪影響を及ぼさない)ように、設計・製造に工夫を施さないといけません。

世界各国でその基準は様々に存在し、日本でもJISに定められた基準があり、PSE試験ではそれらを採用しています。日本の国内メーカーからするとお手のものかもしれませんが、海外メーカーからすると、日本のEMC基準に合わせないといけないのですが、なかなか最初から一回で合わせるのが難しくもあります。

そのため、まずは一度試験をしてみて、検査機関の見解など確認してから対策をした方がかなり効率的です。もちろん、最初から合格することも有りますが、その可能性は低いと思っていた方が良いかも知れません。

この電磁両立性試験の存在は、是非覚えておいてください。

 

一度で試験が終わらない事例②資料が揃わず部品のPSE追加試験

PSE試験を進めていく中で、例えば、製品内部にソケット(電球や豆電球やLED電球などを取り付ける電気器具)が使われている際、そのソケット(部品)そのものがPSE認定や、CE認証を受けている必要があったりします。

要は得体の知れない部品をそのまま使うということが許されないのです。この制度の是非はともかく、製品の安全性を担保するために製品そのものだけではなく、それに使われる部品にも認証が必要になってきます。

もちろん、ちゃんとした工場の技術者はそういうことはわかっているので、なるべく認証された部品を使っていますが、特に海外工場となると日本のPSEを意識していないために、日本の認証では認められていない部品を使っていることも多々あります。

また、その部品が本当に認証されているモノなのか、サプライヤー(部品メーカー)から認定証を取り寄せる必要もあります。

なお、部品そのものが認証されていなかったり、部品認定証が揃わなかったりした場合、今回試験する製品のみで適用されるための部品試験を実施しなければなりません。

一度、日本の部品メーカーがどうしても認定証を提供してくれず、試験の予定期日まで間に合わなそうになり、急きょ使用部品の供給先を海外に切り替えて、海外の部品を取り付けるとともにいそいで認定証をもらって、試験を間に合わせたという経験もあります。

「部品試験」で追加があるというと、当社がぼったくっていると感じてかなり憤る方もいらっしゃいますが、正直部品試験はほとんどが実費でそれも手間ばかりです。ハッキリ言って、部品試験はやらない方が当社としても助かる訳なのですが、PSE認証を進めるためにある意味仕方なくてやっているというのが現状です。

PSE認証をやるのであれば「部品試験」というモノが存在することは認識しておいてください。

 

一度で試験が終わらない事例③特殊試験

例えば、コンプレッサー(空気圧縮機)を搭載する機械においては、コンプレッサー単独試験が行われる場合があります。

一言でコンプレッサーといっても、空気圧を使って内蔵の製品を移動させたり、音量調節をしたり、モノを切断したりと用途は多種多様です。コンプレッサー自体が問題無いとしても、使用用途によって使い方も変わってきて、製品に合わせたコンプレッサー内容の試験が必要になってくる場合もあります。

以前の当社事例では、試験最中にコンプレッサーが火を噴いてしまったこともあり、当然コンプレッサー試験は不合格となりました。

対策としては、当社が知っているサプライヤーを紹介して、コンプレッサーそのものを変更。さらに、製品との設置方法を練り直して再度試験、無事に試験合格となりました。

このようにサプライヤーを紹介するというのは、基本的に代行会社の仕事ではないと思っていますが、試験をスムーズ進めるために必要な措置として提案をさせていただく場合もあります。

いずれにしても、このように工場が既に使っている部品そのものに不具合があるかどうかなどわかる由もありませんし、それを事前にすべて把握したいということになればPSE試験を2回するのと同様なので、それだと費用も期間も倍になってしまいます。

 

結論:工場が主体的にやってくれれば大抵の試験は終わらせることができる

沢山のことを様々に書いてきましたが、結論として、少なくとも当社は認証代行会社として検査合格の為に必要なノウハウは持っておりますので、あとは工場が主体的にこちらの指示を実行してくれるかどうかが肝となってきます。

また、それには依頼主と工場の良好な関係性が必須です。それがあるかどうかが認証のスピードを決めてきますので、是非覚えておいていただければと思います。

そして最後に、タイトルにもある「中国工場でPSE特定電気用品検査前に一度で合格するようにすべてを把握できないか?」というご質問に対して返答をすると、

このページで何回もお伝えしていますが、

把握は難しいですし、それをしたいのであれば認証代行会社の費用ではなくコンサル会社としての費用を請求することになり、結局、追加試験より高くなってしまいます。それよりも、ある程度のところで見極めて、追加試験もある程度覚悟しながら進めた方が、結果的に安くなるし、何よりもスピーディーに試験を終えることができる、

という回答です。

そして、それを実現するためにも、工場の主体的な協力が必要だというのが当社の見解です。

手前味噌となり恐縮ですが、ここまで説明している認証代行会社は当社しか存在しないと感じております。他で認証代行・コンサルティング会社を名乗っている会社様がいれば、このようなことを聞いてみてください、それで大体の実力がわかってくると思います。

当社では無事に認証を終了させるためのご相談は随時承っていますので、ご用命などありましたらお気軽にお問い合わせください。

 

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