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体重計の輸入販売を行いたい方は、ざっくりと計量法を勉強しましょう-前編

 2020/04/26 計量法 認証の原理原則
この記事は約 10 分で読めます。 3,667 Views

こんにちは。管理人の堀です。

このサイトのタイトルにはありませんが、PSE、PSCなどと並んで計量法という経済産業省管轄の法律があります。

計量法は、一般流通の観点から言えば、PSEなどと比べると少しマニアックな法律という印象がありますが、その歴史はPSE(電気用品)などより遥かに古く、日本で言えば、起源は701年の大宝律令まで遡ることになります。

長さ・量・重さ、いわゆる度量衡を「はかる(測る・量る・計るなど)」という行為は、我々の生活に欠かすことのできないものであり、例えば、水道、ガス、電気の使用量や、ガソリンスタンドでの給油量、食料品の計量、健康管理のための体温計、血圧計、体重計等、様々な計量器が使用されています。

また、環境を見守るための大気汚染測定などに使用される計量器もあり、「はかる」という行為は、日々の暮らしと密接な関わりを持っています。

現在、世界には以下のような計量単位があります。

引用:東京都計量検定所_くらしを守る計量法

長さ:メートル、質量:キログラム、時間:秒、電流:アンペアなど、聞き慣れた単位が多いですが、ちょっと考えると、こうした単位が国際社会で統一されていることはとてもすごいことなのです。

例えば、メートルという基準(単位)は、18世紀末のフランスにおいて、世界共通で使用できる統一単位制度の確立を目指して制定されました。

もう少し具体的にメートル法について書くと、長さの単位であるメートル(フランス語: mètre)と質量の単位であるキログラム(フランス語: kilogramme)を基準とする、十進法による単位系のことです。

そうした基準が作られた背景として、それまで人間の行動範囲が限定されている間は、その国・地域だけで単位が統一されていれば良くありました。

しかし、人間の行動範囲が広がり、国際間で商取引等が行われるようになるにつれ、単位の不統一が大きな問題となってきていたことがあります。

例えば、江戸時代であった当時の日本は、当然世界各国とは別の単位を使用していたわけですが、その後明治維新があった19世紀にアジア諸国の中で迅速に国際化を遂げられた理由の一つとして、いち早く単位を国際標準に切り替えたことが挙げられます。

このサイトでは、対象となる認証について制度の説明は極力省略して、どうやったら認証ができるのかを重視して書いています。

とはいえ、計量法に関しては、その前提となる計量(度量衡)の歴史をざっくりでも理解しておかないと、この法律がどうしてこれほどまでに複雑なのか理解できないと思います。

ハッキリ言って、マニアックに書こうとすればいくらでも書けてしまうのですが、ビジネスパーソンの視点で、知っておくべき必要十分な内容にかいつまんでお伝えします。

また、このページをご覧になっていらっしゃる方が、計量に関する製品を輸入・販売するとしたら、主に家庭用特定計量器(一般用体重計、乳幼児用体重計、調理用はかり)でしょう。

家庭用特定計量器に表示が義務付けられている丸正マーク

その認証方法については、次回書いていきます。
今回は計量法の歴史をざっくりご説明いたします。

計量に関する大まかな歴史(世界史)

引用:東京都計量検定所_探検!計量の世界_「第4回」計量制度の歴史

いくつかの資料を見ましたが、上記図のような表がいくつかあり、とても端的にまとまっているので、引用させていただきました。

史実(記録)として語れるのは上記のようになりますが、本来的に人間が「はかる」ことを始めたのは、約1万年以上前だといわれています。初めの頃は、狩猟、採集、農耕のために、月の満ち欠け、指の幅、手でひとすくいした量などを用いていたそうです。

この頃は、人類が他地域との交流・交易もなくそれぞれの地域ならではの計量を行っていたと推測されます。

そして、時は進み、計量の方法もそれぞれに進化していきました。そして、計量の世界において、人類史上において革命的な出来事が起きます。

秦の始皇帝

現在、ヤングジャンプで連載されている漫画「キングダム」でも有名な秦の始皇帝。漫画は始皇帝側の視点で描かれていますが、歴史上では彼の評価(功罪)は大きく分かれています。

しかし一方で、彼が行った事業においては2000年以上の時を経た現代にも原形があるものもあり、そうした観点から考えると、やはりとてつもない人物であったことが窺えます。

その事業の一つに、貨幣・度量衡などの統一があります。
秦が統一するまでの中国は春秋戦国時代と呼ばれ、秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓の7つの国が覇権を争っていました。

その頃は、各国で独自の貨幣・度量衡があったわけですが、それらを統一することで、権力の統一も行ったわけです。

ここが大事なポイントで、端的に言うと、生活に密着するものを統一することで、無駄な事故・争いもなくなり、それを使う人間同士のコミュニケーションなどが活発となり、国土の平定につながる、という論理展開があります。

現在でも生きている、「認証」という制度の起源もここにあるのではないかと個人的に感じています。国家の統一は度量衡の統一から始まっているのです。

実際にどのようなことを行ったのか、下記に引用しておきます。

貨幣は、戦国の各国が発行した青銅貨幣は布貨、刀貨、円貨など流通するものが違っていたので半両銭という統一通貨を発行した。また度量衡ではまず長さ(度)の単位の一歩を6尺と定め、量をはかる「ます」(秦量)と重さ(衡)をはかる「はかり」(秦権)の標準器を製造して全国に分配した。(中略)また、「車軌」を統一して、馬車が同じ轍で走れるようにした(具体的な車幅などは判っていないが、現代でいえば鉄道車両のゲージを統一してJRも私鉄も同じ電車が走れるようにすること)。
引用:世界の窓_始皇帝

メートル法

先ほども書いたとおり、18世紀末にフランスで誕生した長さ(メートル)、重さ(キログラム)に関する統一単位制度です。

中身自体は大変に重厚長大なのですが、成り立ちなどは今回の趣旨とは少し外れるので割愛いたします。

日本における計量法

大宝律令

西暦701年、教科書的いうと、時の文武天皇が中心となって日本で初めて制定された国家の統治制度です。

その背景には、隣国・百済が滅亡するなど緊迫の東アジア国際情勢の中、倭国(当時の日本)は中央集権化を進め、政権を安定させることで、国家としての独立を保つ必要がありました。

国家統一の為に様々な法律が制定される中、それまで各地でバラバラだった度量衡の制度についても統一がされたのでした。

これが現在の日本の「計量法」の始まりです。

中国発祥の尺貫法による計量単位や計量器を使用し、また計量制度も唐の律令制度を手本に、度量衡制度を定めました。

これにより、国家の根幹となる租税・貨幣・土地制度などが確立されていきました。

太閤検地

戦国時代が終焉した、安土・桃山時代、太閤となった豊臣秀吉が全国的に行った農地の検地のことを指します。

細かい制度内容は省きますが、大きく言うと、土地の権利関係の整理と、その時代において各地でバラバラだった単位の統一を図ることで、自らが天下統一した国家の更なる安定を企図したわけです。

検地の意義についてはwikipediaを引用しておきます。

権利関係の整理や単位統一が図られた革新的な意味をもつのみでなく、農民への年貢の賦課、大名や家臣への知行給付、軍役賦課、家格など、その後の制度、経済、文化の基礎となる正確な情報が中央に集権されて把握されたことであり、その意義は大きい。
引用:wikipedia_太閤検地

計量法の意義を簡単におさらい

秦の始皇帝、大宝律令、太閤検地などで見てきましたが、国家の統一には法制度の整備が必要であり、その根幹ともいえるのが度量衡なのです。

言われてみればわかるのですが、例えば、Aさんが量ったものが500gであり、一方でBさんが量ったものが1㎏ということでは大変です。また、Cさんが測ったら1mなのに、Dさんは1.2mということでは困ります。

そういうところから無益な争いが生まれたり、円滑な商行為の妨げになるわけで、国家としてそれを統一していった歴史があるのです。

そして時代は流れ、その統一が一国だけの話ではなく、世界単位で進むようになります。

計量法視点で見る日本の国際化

メートル条約加盟

要約することなくとても分かりやすい解説がありますので、そのまま引用します。

明治以降の近代日本の計量制度を振り返ってみましょう。度量衡取締条例を公布した1875(明治8)年にはフランスでメートル条約が成立、日本は1885(明治18)年に加盟し 1890(明治23)年には欧米各国と同時期にメートル原器とキログラム原器を受け取りました。 日本が旧来の尺貫法にこだわらずメートル法に移行できたのは、明治維新という変革の時代で江戸時代までの日本の計量制度近代日本の計量制度あったことも幸運でした。日本の近代計量制度 がメートル法とともに歩みを進めたことは、日本が技術大国となった礎の1つと言えます。
引用:東京都計量検定所_探検!計量の世界_「第4回」計量制度の歴史

日本の近代化いうと、富国強兵、軍備の拡張などが大まかに語られますが、その背景にはこうした法律の整備などもあるのです。

誰もが知る有名なところとして、大日本国憲法の制定に伴い、国家権力を総括する中央政府として太政官を置き、その太政官の権力を立法・行政・司法の三権に分けるなどの法体制構築というものがありますが、もっと具体的にはメートル法採用なども存在するのです。

日本各地での不満

しかし、一方では、今まで自分たちが使っていた計量単位、例えば、尺、貫、匁などが使えなくなることに対して、日本国内で、特に庶民による不満や抵抗などはかなり強く残ったそうです。

今まで自分たちが商売などで使っていたものが急に方向転換となれば、誰でも異論を述べるのは当然でしょう。

そう考えると、当時の明治政府はかなりラディカルだったと思いますし、それだけ国際化への情熱を持っていたとも言えます。

政府は、その後も国内の根強い反発を抑えていったわけですが、完全に禁止というわけではないので、今でも個人の間では日本古来からの計量表記を行う人もいるようですし、中には、そうした表記をした方が使い勝手が良い道具もあるそうです。

メートル法の制定

細かい歴史を辿ればまたいくらでも細かくなってしまうので、再び、端的にまとまっている東京都計量検定所の資料を引用いたします。

その後1891(明治24)年に、欧米の計量制度に倣い制定した「度量衡法」を公布してメートル法を正式に導入し、第2次世界大戦終戦後の 1951(昭和26)年には、新憲法・地方自治法 に対応し、国際的視野に立ち社会経済の変化に も適応した「計量法」を公布して民主的・合理的な新たな計量制度をスタートさせています。
引用:東京都計量検定所_探検!計量の世界_「第4回」計量制度の歴史

少し補足すると、1959年(昭和34年)には土地・建物の坪表記を除き、メートル法が完全実施され、1966年(昭和41年)4月1日にようやくメートル法が全面的に完全実施されたのでした。

ちなみに、1959年にはメートル法完全実施を記念する切手が発売されるなど、政府の計量行政にかける思いが伝わってきます。

その後も、政府の一方的な施策に対して根強い反発もあったようですが、それらを乗り越えて、現在の計量行政に至っています。

引用:wikipedia_メートル法

計量法対象となる商品の販売は正直難しい

駆け足で計量法の歴史を見てきましたが、長い歴史と政府の介入を繰り返してきた法律であり、PSE、PSC、電波法などが可愛く見えてくるほどに一般事業者の参入は難しくあります。

率直に言って、無理して計量法に関する商材を選ばないでも他に売れるものは数多くあるでしょう。

ただ、決して参入が不可能というわけではありませんので、次回の計量法取得に関する記事をお待ちください。

最後に申し上げておきますと、度量衡の統一を図ることでコミュニケーションの円滑化を目指すわけですが、それでも人間は戦争や争いを繰り返してきています。

だからと言って、ではそれが無駄なことかと言えばそんな事は決してなく、それでもそれは常に前進しようとする人間の英知なのではないかと思います。

ちなみに、日本においても、この計量法が、計量は国家の根幹であるという美名のもと、数多くの利権が存在し、各都道府県にある計量検定所などは本当に必要なのか、正直、外野の立場の人間からするとそんな疑問もわいてきます。

ただ、そこに対してどうこう言っても仕方なく、計量法という法律がそのように成り立っており、その認証をするにはそうした制度を理解することがとても大事だと考えます。

 

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