モバイルバッテリーを取り扱いたい事業者の方に向けた、PSEマーク取得7つの基礎知識!
こんにちは。管理人の堀です。
スマホやパソコンの充電ツール、災害時などの電源供給ツールとして、リチウムイオン電池を使用するモバイルバッテリー(蓄電池)の必要性・重要性は近年急速高まりつつあります。
いわゆる「社会のスマート化」において、モバイルバッテリーは必要不可欠なツールであり、需要が増えるにつれて供給(販売事業者)も増えていっています。
しかし、その一方で、電池の発火事故などが相次ぐなどして、経済産業省は2019年2月にリチウムイオン電池を使用したモバイルバッテリーをPSE対象としました。
つまり、安全面の担保がされていない(PSE認証していない)モバイルバッテリーを全面的に違法としたわけです。
法制化される2019年2月直前にPSE認証されていないモバイルバッテリーがインターネット上で投げ売りされるなどの社会問題が起きるなどもありました。
その後も電池事故が頻発する中で、新しい法制度の為か、なかなかモバイルバッテリーのPSEが順守されていないようにも個人的には感じています。
ただ、一方で、周りの対応が遅れているということはビジネスチャンスでもあるとも言えます。当社では、これまで何回もモバイルバッテリーのPSE認証を行ってきました。
その経験に基づいて、検査の流れや注意点などを書いていきたいと思います。
Contents
モバイルバッテリー(蓄電池)のPSE法制化の経緯
引用:経済産業省ウェブサイト「電気用品安全法_モバイルバッテリーについて_1.概要」
経済産業の資料を引用しましたが、前述したように、社会のスマート化が進むにつれてモバイルバッテリーの需要が増える一方で、品質が担保されていない製品も多く市場に出回り、資料のように事故件数も急速に増えています。
ちなみに、この資料にある合計約150件の事故のうち約7割が、火災を伴う事故だったようです。この150という数字が多いのか少ないのかは意見が分かれる話かもしれません。
しかし、少なくとも10年20年前にはモバイルバッテリーによる事故というものがほとんど存在しなかったでしょうから、そう考えると問題のある数字でしょうし、今後さらに増えることが容易に想定されます。
こうした背景を踏まえて、経済産業省は2019年2月にモバイルバッテリーを電気用品安全法(PSE)の規制対象としました。
PSE対象になる畜電池の考え方
モバイルバッテリーのPSE対象・非対象の分類については、経済産業省の「電気用品安全法_モバイルバッテリーに関するFAQ」によくまとめられているのでご参照いただきたいのですが、ごく簡単にお伝えさせていただきます。
経済産業省がPSE対象となるモバイルバッテリーの定義をまとめると、「内蔵する単電池1個当たりの体積エネルギー密度が、400Wh/L(ワット時毎リットル)以上であり、他者への給電を目的としたもの」となります。
電池の密度についてはまた後述するとして、「他者への給電を目的としたもの」とはなんでしょうか。
まずは非対象となるものを挙げますと、Wi-fiルーター、スマートフォン、タブレット、ノートPC、コードレス掃除機等があります。
これらは確かにリチウムイオン電池が内蔵され蓄電機能がありますが、あくまで本体製品の充電に使うことを目的としたもので、外付けするなどの機械の給電は主目的としていません。そういったものはモバイルバッテリーとは見なされません。
ただし、モバイルバッテリー以外で必要な認証があれば、当然そちらの認証は必要となります。あくまで、「モバイルバッテリーの対象外」ということです。
一方、純粋にモバイルバッテリーとして販売されているもの、電子タバコやワイヤレスイヤホンに用いる充電ケースなどは、他者(本体)を給電することを目的としていますのでモバイルバッテリーの対象となります。
ワイヤレスイヤホンなどは、あんな小さな製品なのにワイヤレスの電波法とモバイルバッテリーのPSE、2つの認証がまたがる贅沢な一品だとも言えますね。
PSE認証の流れ~モバイルバッテリーの場合~
引用:経済産業省ウェブサイト「電気用品安全法_届出・手続の流れ」
またまた経産省のPSE(電気用品安全法)検査手順フローを引用いたします。
基本的内容は「PSE、PSC、電波法技適の検査手順、とりあえずこれくらいを把握しておけば十分です① PSE編_PSE認証の流れ」をご覧になってください。
モバイルバッテリーは、特定電気用品ではなく特定電気用品以外ですので、適合性検査(工場検査)ありません。サンプル検査が終了すれば、製造・輸入を始めることができ、経済産業局への申請なども行えます。
モバイルバッテリーのPSE認証はどのような検査をするのか?
モバイルバッテリーの特異点は検査内容にあるかもしれません。
先ほど、「内蔵する単電池1個当たりの体積エネルギー密度が、400Wh/L(ワット時毎リットル)以上のものが対象」とご紹介しましたが、計算式について専門家でないとよくわからないとかもしれません。
ただ、モバイルバッテリーとして機能させるには相応の体積エネルギー密度が必要になりますので、ほとんどのバッテリーはPSE対象になると考えた方が無難かもしれません。
一応、経産省が示している計算式を示しておきます。
また、試験項目ついて、「連続定電圧充電時の安全」「運搬中の振動時の安全」「高温化での組電池容器の安全」「温度変化時の安全」「外部短絡時の安全」「落下時の安全」「衝撃時の安全」「異常高温時の安全」「圧縮時の安全」「機器落下時の組電池の安全」など、16項目が経産省資料に示されています。
これらを一回でクリアできることを目指しますが、以前に、気温0度時で液漏れが発生してしまったために再検査が発生するお客様もいらっしゃいました。
また、これらの試験を行うために、100個近くの単電池、30個以上の組電池のサンプルが必要となり、工場に揃えてもらうだけでかなりのハードワークになります。
それだけでもモバイルバッテリーはハードルが高い認証であると言えますし、そのくらいの検査をしないと安全を守れないということになります。
認証費用はいったいどのくらいかかるのか?
製品によって費用は違ってきますし、上述の数多くのサンプル費用の負担を事業者が行うか工場で行うかによっても違ってきます。
それでは基準が見えないので、あえて概算を出しますと、スタンダードに純粋な認証だけでは1商品につき30~50万円くらいになると思われます。これに当社の手数料が加算される形になります。
電池認証は生産地(海外)で行ってしまった方が有利です
参照:国土交通省資料
飛行機などを利用する際、このような持ち込み制限リストを見かけたことのある方は多いかもしれません。
リチウムイオンバッテリーは冒頭にご説明したような発火事故の危険性があり、輸送の制限が厳しくあります。
一方で、モバイルバッテリーの生産地は中国であることが大半です。
もちろん、輸送禁止ではありませんので、所定の手続きをすれば輸送は当然可能ですが、通常品よりは時間や費用が掛かる場合があります。
特に海外輸送は相応のノウハウがないと手続きが通らないこともあります。
最終的に販売する際は仕方ありませんが、認証用のサンプルまで海外輸送をしていたら大変ですので、中国生産した電池を中国の検査機関で済ませてしまうことは賢明な判断かと思います。
当社では、そうした段取りもサポートできますので、ご用命ありましたらお気軽にご相談ください。
PSE表示について~実例でご紹介~
最後に、現在流通しているモバイルバッテリーを実例としながら、PSE表示についてお伝えしたいと思います。
写真の2つがAmazonで同じ日に購入してみたモバイルバッテリーです。1社は有名な中国のガジェットメーカー・Anker(アンカー)社のものです。この会社は日本法人も存在します。
もう1社もしっかりとした会社のようです。
両社ともに、販売画面にはPSE取得済みと書かれておりましたし、製品にもPSEマークがしっかりと表示されています。
一方で、この表示にはいろいろ条件があり、中にはPSEロゴをコピペして表示しただけの違法品も残念ながら存在します。
それについてはウェブサイト上であまり突っ込んだところまで解説するのも憚れるので、気になる方は直接ご連絡ください。
いずれにしても、モバイルバッテリーのPSE法制化は最近の話でありますので、ちゃんと対応すれば今後大きなビジネスチャンスがあるようにも感じています。
モバイルバッテリーについては認証合格までのすべてのノウハウを有しておりますので、認証を検討されている方、ちょっとやってみたいという方はご連絡いただければと思います。
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